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ありすとてれす  作者: 春乃
103/259

103話 一緒に登校できないかしら?

 次の日の朝。

 わたしはいつも通りに起きて、朝食を食べていた。

 昨日の夜はぐっすり眠れて調子もよく、すごくご飯が美味しく感じられる。でも、てれすが学校に来られるか、少し不安だった。


 昨日お見舞いに行ったときは、もう大丈夫だから学校に行けると言っていたけど、わたしがお見舞いに行ったせいで悪化とかしていないだろうか。最後のほう、すごく赤くなっていたから心配してしまう。

 ご飯食べ終え、お手洗いや歯磨きも済ませて今日の時間割を再確認する。と、携帯の着信音が鳴った。


「誰だろ」


 まだ学校にも着いていないような朝早くからの連絡ということは、ノートを見せてとかそういったことだろうか。

 そういった予測をしながら携帯の電源をつけて、連絡アプリMINEを起動する。

 誰からだろうと相手の名前を見ると、そこには「てれす」の文字があった。急いでトーク画面を開く。


『ありす、今日一緒に登校できないかしら?』


『いいよ!』


 てれすからのおさそいが嬉しすぎて、反射的に返信してしまったけど、回答してから冷静に思考を巡らせる。

 なぜならば、わたしとてれすはこれまで一緒に登校したことがないからだ。もちろん、わたしとしては毎日でも一緒に登校も下校もしたいけど、てれすは電車通でわたしは徒歩通なので、微妙に通学路が違う。

 それに、わたしとてれすでは登校時間も違うのだ。わたしは早めだけど、てれすはいつも遅刻ギリギリか遅刻してくる。


 もしかして、わたしと一緒に登校するために今日は早起きしてくれたのかなぁ。なんてことを考えていると画面に既読の文字が表示されて、てれすから返事がきた。


『ありがとう。よければ、駅に来てもらえる?』


『おっけー』


 いつものてれすの時間に合わせていたら、確実に遅刻してしまうだろう。しかしわたしの登校する時間は早いので、一度駅に行ってからでも余裕で学校には行けるはずだ。



 それから数分後。

 てれすにどの時間の電車に乗るかを教えてもらって、わたしは駅に向かって出発した。

 この時間に駅に行くのは初めてだ。駅に近づくにつれて制服やスーツ姿の人が増えていく。駅に着くと、通勤通学ラッシュということもあって、ものすごい数の人でごった返していた。


 果たして、このなかで無事にてれすと会えるだろうか。そんな不安を胸に抱いてしまう。でも、そんな心配は必要なかった。

 てれすに教えてもらった電車が駅に着いた時間になり、大勢の人が一斉にやって来た。うちの高校の制服もちらほらと見受けられる。

 そのなかで、わたしはてれすの姿をすぐに発見した。どうしてすぐに見つけられたのかはわからないけど、一日ぶりに見るてれすの制服姿だ。すごく素敵なものに映った。


「てれす!」


 わたしが声をかけると、てれすは気づいてくれてすぐに駆け寄って来てくれた。人の波を華麗に躱してわたしの真ん前まで来る。


「てれす、おはよう」


「ええ、ありす。わざわざごめんなさい」


「ううん。いいよいいよ」


 こうしててれすに会えたし、これから一緒に登校できるし、わたしに不満はまったくない。けど、疑問に思っていることはあったので、てれすに尋ねる。


「ねぇ、てれす」


「なにかしら」


「どうして一緒に登校しようって、さそってくれたの?」


「え、それは……」


「あ、嫌ってことはないの。すごく嬉しい。でも、今日学校に来るならすぐに会えるから、どうしててれすの登校時間を早めてまで一緒に登校しようとしてくれたのかなって」


 純粋な疑問だった。

 わたしの早い時間にわざわざ合わせなくとも、学校に来ればわたしとは会えるのだ。

 てれすは駅の雑踏のなか、ギリギリわたしに聞こえるくらいの小さな声で答える。

 

「――から」


「え?」


「ありすに、早く会いたかったから……」


 言っててれすは、恥ずかしくなったのか顔を真っ赤に染めて俯いた。そのまま黙ってしまう。


「えっと、てれす……さん?」


「あの、ごめんなさい」


「どうして謝るの」


「いえ、やっぱりわたし、おかしいのかしら……」


「ううん。そんなことないよ。わたしだって、早く会いたかったもん」


「本当?」


「うん。あ、そろそろ行こうか。」


「……そうね」


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