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ありすとてれす  作者: 春乃
101/259

101話 ありす、聞いてくれる?

「ごちそうさまでした」


 買ってきた餃子やプリンを食べ終えて、わたしとてれすは両手を合わせる。

 ビタミン系のゼリーは、てれすの好きなタイミングで飲んで(食べる?)もらうとして、なんとか全てを食べきった。たぶん、夕飯も食べられると思う。


 てれすにも餃子を食べてもらうのを結局手伝ってもらったので、お礼を言わないと。そう思っててれすのほうを見ると、なんだかてれすが挙動不審だった。


「てれす、どうしたの?」


「い、いえ、別に」


「もしかして、調子悪い?」


「大丈夫よ。ただ……」


 ただ、なんだろう。

 てれすの言葉の続きを待つ。


「その、よくよく考えてみると誰かがうちに来るのって、初めてだから……」


「そうなんだ。それがわたしでよかったのかなぁ?」


「もちろんよ。でも、ありすがうちにいるのがなんだか不思議で」


「あはは。それはわたしもそうかも。まさかこんな形でてれすのうちに来るとはね」


「……そうね。私自身、風邪をひくなんて思っていなかったから」


「明日は学校来れそう?」


「ええ」


 てれすが即答でうなずいてくれて、ほっとする。

 よかった。心の底からそう思う。


「あ、そういえばね。高井さんとか赤川さんもてれすのこと、心配してたよ」


「高井さんたちが?」


「うん。部活があるからお見舞いは行けないけど、よろしくって」


「そう。心配をかけてしまっているのね」


 高井さんたちの名前を聞いたてれすは、一瞬驚いた表情になった。心配してくれていると思っていなかったのだろう。でも、体育祭以降はいい感じだ。高井さんだって、てれすのことを友達って言ってくれたし。

 そして、高井さんたちがいなかったら、たぶんわたしはいまお見舞いに来てはいなかっただろう。


「このお見舞いもね、高井さんたちが行ったほうがいいって言ってくれたから来たの」


「…………」


「て、てれす?」


「ありすは、本当は来たくなかったの?」


「え? ど、どうしてそうなるの?」


「言われたから、来たんでしょ?」


 なんだか、少しとげを感じる言い方だった。初めててれすと階段で話した時に似ている。でも、それ以降、仲良くなれたと思ってからはこんなことなかった。だからわたしは、慌てて弁解する。


「違うよ。たしかに高井さんたちに言われたのは本当だけど、それは言葉の綾っていうか、すごく心配したから。だから、昨日連絡もしなかったし、お見舞いも言ったら迷惑かなって……」


 自分で言っていて、すごく言い訳じみて聞こえる。どう考えても、わたしが悪いのだ。わたしがてれすと同じ立場でも、今のてれすと同じような反応をしたと思う。

 そんな気持ちになって、わたしの言葉は段々と語尾に向かうにつれて小さくなっていく。

ふとてれすと目が合った。てれすははっとして、即座に顔を逸らした。


「……ごめんなさい、ありす」


 てれすは自嘲気味に言葉を続ける。


「わたし、何を言っているのかしらね。せっかく来てもらっているのに……」


「ううん、そんなことない。わたしも、ちゃんと自分から連絡すればよかった。ごめん」


 けんか……とまではいかないにしろ、それらしくなったのは初めてで、ちゃんとお互い謝ったとはいえ、なんだか気まずい。

 わたしはどうすればいいのか思考を巡らせる。すると、てれすがわたしの名前を呼んだ。


「ねぇ、ありす」


「なぁに?」


「少し、おかしなことを聞くかもしれないのだけど」


「うん」


「それでも、聞いてくれる?」


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