101話 ありす、聞いてくれる?
「ごちそうさまでした」
買ってきた餃子やプリンを食べ終えて、わたしとてれすは両手を合わせる。
ビタミン系のゼリーは、てれすの好きなタイミングで飲んで(食べる?)もらうとして、なんとか全てを食べきった。たぶん、夕飯も食べられると思う。
てれすにも餃子を食べてもらうのを結局手伝ってもらったので、お礼を言わないと。そう思っててれすのほうを見ると、なんだかてれすが挙動不審だった。
「てれす、どうしたの?」
「い、いえ、別に」
「もしかして、調子悪い?」
「大丈夫よ。ただ……」
ただ、なんだろう。
てれすの言葉の続きを待つ。
「その、よくよく考えてみると誰かがうちに来るのって、初めてだから……」
「そうなんだ。それがわたしでよかったのかなぁ?」
「もちろんよ。でも、ありすがうちにいるのがなんだか不思議で」
「あはは。それはわたしもそうかも。まさかこんな形でてれすのうちに来るとはね」
「……そうね。私自身、風邪をひくなんて思っていなかったから」
「明日は学校来れそう?」
「ええ」
てれすが即答でうなずいてくれて、ほっとする。
よかった。心の底からそう思う。
「あ、そういえばね。高井さんとか赤川さんもてれすのこと、心配してたよ」
「高井さんたちが?」
「うん。部活があるからお見舞いは行けないけど、よろしくって」
「そう。心配をかけてしまっているのね」
高井さんたちの名前を聞いたてれすは、一瞬驚いた表情になった。心配してくれていると思っていなかったのだろう。でも、体育祭以降はいい感じだ。高井さんだって、てれすのことを友達って言ってくれたし。
そして、高井さんたちがいなかったら、たぶんわたしはいまお見舞いに来てはいなかっただろう。
「このお見舞いもね、高井さんたちが行ったほうがいいって言ってくれたから来たの」
「…………」
「て、てれす?」
「ありすは、本当は来たくなかったの?」
「え? ど、どうしてそうなるの?」
「言われたから、来たんでしょ?」
なんだか、少しとげを感じる言い方だった。初めててれすと階段で話した時に似ている。でも、それ以降、仲良くなれたと思ってからはこんなことなかった。だからわたしは、慌てて弁解する。
「違うよ。たしかに高井さんたちに言われたのは本当だけど、それは言葉の綾っていうか、すごく心配したから。だから、昨日連絡もしなかったし、お見舞いも言ったら迷惑かなって……」
自分で言っていて、すごく言い訳じみて聞こえる。どう考えても、わたしが悪いのだ。わたしがてれすと同じ立場でも、今のてれすと同じような反応をしたと思う。
そんな気持ちになって、わたしの言葉は段々と語尾に向かうにつれて小さくなっていく。
ふとてれすと目が合った。てれすははっとして、即座に顔を逸らした。
「……ごめんなさい、ありす」
てれすは自嘲気味に言葉を続ける。
「わたし、何を言っているのかしらね。せっかく来てもらっているのに……」
「ううん、そんなことない。わたしも、ちゃんと自分から連絡すればよかった。ごめん」
けんか……とまではいかないにしろ、それらしくなったのは初めてで、ちゃんとお互い謝ったとはいえ、なんだか気まずい。
わたしはどうすればいいのか思考を巡らせる。すると、てれすがわたしの名前を呼んだ。
「ねぇ、ありす」
「なぁに?」
「少し、おかしなことを聞くかもしれないのだけど」
「うん」
「それでも、聞いてくれる?」




