無実
元恋人を呼びに来たんですか?返事がないのなら、直接呼びに行かないとダメですもんね。
________ドサッ!!!
なにか鈍い音が、私が手にかけた扉の向こう側で響き渡った。
脳内再生したくはないが、あれは何か生々しいものを砕く音。
「キャァッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
私と共に訪ねた友人が、扉の隙間から見た何かで、顔を曳きつめて発狂する。
私は握りしめていたドアノブを恐る恐る、右手で強く握しめ直して戸を開く。
「はぶっっ!!」
私は想像もできない目の前の光景に、叫びよりも心情がはち切れそうだった。
そして吐きそうになった。
友人は夕日よりも真っ赤に染めあがる部屋を後にするように、這いつくばってこの部屋から逃げた。その間に、一人「探偵」と名乗る若い男性がある部屋から駆けつけてきた。
男性は、わたしに「何も触るな。」と言わんばかりの目つきで睨んできて、悲惨な部屋へと突き進んだ。
まるで凡てを呑み込んで覚悟したような顔で堂々と血まみれな部屋真ん中で叫びだした。
「殺人事件です!みなさん、現場には一切手に触れず広場に集まって待機していてください!!」そう声を尖らせて、遺体に目を向けた。
いや、遺体…
いや元恋人が殺された。
でも、わたしには未来が見えてたのかも。
何も感じないでいる。
もちろん、命がいつか尽きることは知っていて、殺人や事故に巻き込まれて死ぬのも理解してる。だけど、あまりにも予想通りで口元が歪みそうだ。
しかし、なぜ探偵はわたしの方をチラチラ見るのだろうか。
あぁ、鬱陶しい!!
私はしばらくショックを受け続ける友人に寄り添って、夜を明けることにした。それより、私がいるのは友人のシェアハウスの中。友人のお呼ばれで来たのだ。しかし元恋人が、ただただ彼女自慢をしたいが為に友人を使って私を呼ぶとは、何様なんだ。しかし、天罰とはこのことか。まさかこんな事件が彼に起きるとは何とも言えない心情だ。
朝を向けるころ、皆はなんとか動揺を落ち着かせ寝つけたようだ。
私は眠らずに、そっと自称探偵という男性の目をすり抜けて殺人現場へと向かった。
生々しいにおいが、自分の身を凍らせる。間に合わせのブルーシートで遺体をあるものの、昨晩に見た現物が頭から離れなくて想像がついてしまう。緻密に計算されたのか、身体の真ん中に大きな凶器が突き刺さっている。これが、あれがあんなふうでこんなふうでこうだとしたら…と考えたら、殺人犯の残虐さが極まれなく奮い立った。
そのあとトイレから帰って来たと見せかけて、寝たふりをした30分後、探偵が私を疑う声が聴こえた。しかし、こんな自称探偵に罪を着せられて溜まるか!!私のこぶしは震えていた。
今は、夏。なぜか台風の影響で、田舎でのシェアハウス…笑えるのだが孤立してしまい、家から出れない。外の現状が解らない。
だから、警察が来ない。
だけど、私は殺してない。
私は警察が来るまで、黙り込むことにした。絶対にしていないのだから。
そういって、私は元恋人の最後を見届けた服を着替えないで、ポケットに手を突っ込んだ。
悪いことをしていないのだが、何かが指を怪我させた。
・・・あなた、もしかして、、、。




