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アベンダ・テレスタの痕跡②



   ***



 不意にかすかな痛みを感じて指先を見ると、手にしていた書類に赤い染みが出来ていた。どうやら指を紙で切ったらしい。


 会議室の隣に座っていた魔法ギルドのギルドマスター、ララカット・ラフィーニャがそれを見つけて、すぐに応急処置を施してくれた。ルルキエルの指先を見つめて微かに息を吹きかけるだけで傷口が塞がり痛みが引いて行く。ほんのわずかな魔力の流れすら感じさせない早業は流石の一言に尽きた。


 軽く目線で――ということは仮面のせいで出来ない為、指先で『ありがとう』と綴って礼を言うと、彼女はクスリと笑って視線を書類に戻した。


 誰が見咎めることもなく、月に一度のギルドマスター定例会議は滞りなく進んで行く。血の滲んだ会議用書類を痛みの引いた指先でなぞるルルキエルの思考は、しかし会議とは別のところにあった。


 言わずもがな、魔剣ディットクレイによる擬態の件である。


(何故、犯人はルキアを擬態させた?)


 ルキアを殺した犯人は、ルキアをアベンダ・テレスタに擬態させた。その遺体はルルキエルが回収してしまったが、本来ならばそのまま放置されて翌日の朝に露見しただろう。殺人事件だ。警察が動く。捜査は二つの路線で行われる。


 ひとつは行きずりの犯行。突発的な殺人にあった可能性だ。こちらは目撃者を探すだけでも時間がかかる。


 だがもう一つの知人による犯行の可能性は、対象が絞れる分だけ調査しやすい。警察は殺されたアベンダの周辺人物に焦点を向ける。元ギルド職員だ。同僚は多い。


 どちらにしても、犯人がルキアを擬態させたメリットを考えるなら、この時点で『自分に疑いの目が向かないようにすること』ではないか。つまり――


(アベンダの周囲に犯人はいない)


 男に振られた末の狂気であることを知るのはルルキエルとルキアだけだ。しかし、もしアベンダが犯人なら、最近男と別れたという情報を突き止めるのはそう難しくない。付き合っていた元彼氏が捜査線上に浮かぶのは目に見えている。


 死体発見現場が公園で、遺棄されたと推測される時間帯に外出していた『ルキア・ミルトス』へも疑いは向けられるだろう。『ルキア』は元彼氏が新たに熱を上げている人物だ。三者に繋がりが見えれば、元彼氏と『ルキア』への疑いはより深くなる。


 遺体をわざわざ擬態させておきながら、そんな結果になっては意味がない。つまりルキアを擬態させるメリットは、犯人がアベンダからは絶対に辿れない人間である、という前提条件があってこそ成り立つものだと言える。それは別れた男に関してもだ。


(結論、アベンダ・テレスタは犯人ではない)


 ここまでの推論はルキアとも話して認識があっている。彼女も納得したことだ。


 だが話していないこともある。


 あの夜、ルキアが殺され擬態される様子をルルキエルが見ていたというのは事実ではあるが、全てではない。実際に目撃した時には、もうとどめを刺される寸前だった。止めようとも助けようともは思わなかったのだから言い訳にもならないが。


 ここで重要なのは、犯人の顔である。ルキアを殺した犯人がルキアを『アベンダ』に擬態させ、自分は『ルキア』に擬態して姿を消した後、残されたルキアの遺体の側で、ルルキエルは犯人のことを調べたのだ。


 ある一定範囲内、一定時間内、その場に残る残留思念を映像化する魔剣。ルキアが殺される様子を、もう一度映像で再生させる。深夜で人がいないからこそ出来た芸当だった。


 だからルルキエルは犯人の顔を知っている。その顔に見覚えがもあったから、名前も検討がついている。


 その事実をルキアに告げなかった理由はただ一つ。


 ルキアを殺した犯人の行動に納得がいなかったからだ。喉の奥に小骨が刺さったような違和感が抜けない。何かが思考をせき止めている。すっきりしない。

 そして何より、まだ大きな疑問が二つ残っているからでもあった。


 つまり。


(何故、犯人はアベンダ・テレスタを殺した?)


 言い換えるなら、ルキアの前の殺人対象にアベンダ・テレスタを選んだのは何故か。


 自分を警察の目からそらすため? それは事実だろう。だがそれだけならアベンダでなくてもよかったはずだ。不謹慎だが、自分に関係ない人間であれば誰でもいいということになる。


 しかし『その誰でも』には、実は幾つか条件がある。


 第一条件は、一人暮らしをしていること。家族と暮らしている人間に対して行動を起こすには危険度が高すぎる。贅沢を言えば、家族のいない天涯孤独であればなおいい。


 第二に、他人とあまり関わろうとしない内向的な人物であること。友人は出来るだけ少ない方がいい。少しくらい長い間姿を見せなくても、誰にも不思議に思われない人物が妥当だ。


 第三に、対象は、出来れば非力な子供か女が望ましい。


 これらは絶対条件ではない。だが犯人が犯行の成功率を少しでも上げるためには避けて通れない条件でもある。


 犯人が素人だということは、ルキアの殺し方から見ても間違いなかった。その素人が何の工夫もなく人を殺すということは考えにくい。突発的で衝動的なものであればともかく、犯行には計画性を感じるからだ。


 そして先にあげた条件に、アベンダ・テレスタは見事に合致する。それ自体は別に構わない。だが、だからこそアベンダが選ばれた理由が納得できなかった。


 条件に合う人間なんてスラムにでも行けばいくらでもいるはずだ。それこそ乞食でもいい。浮浪者など珍しくないし、身寄りのない子供だって大勢いる。今にも死にそうな人間なんて、探すまでもなく見つかるだろう。


 言い方は悪いが、幸いなことにアベンダより殺しやすい人間なんて掃いて捨てるほどいるということだ。


 なのにアベンダが選ばれた。元・ギルド職員。友人は少ないらしいが、それなりに知人はいただろう女だ。加えて言えば、多少なりとも情報収集しなければ、アベンダが天涯孤独なんてわかるはずもない。友人・知人関係についても同様だ。


(アベンダでなければならなかった?)


 ルキアを擬態させる対象がアベンダでなければならない理由があるとすれば。


(アベンダと犯人の間には繋がりがあるということだ)


 それはルルキエルがまだ見えていない、普通に考えただけでは辿ることは出来ないほどに薄い繋がりなのだろう。


 そして疑問の二つ目。


(殺されたアベンダの死体はどこへ行ったのか)


 都市の中で遺体を放棄することは簡単ではない。等級の低い第五区画は確かに治安も悪くなるが、それでも住民の目は多いからだ。王都デュランダルは犯罪が最も起こりにくい都市としても有名だ。犯罪検挙率では世界トップレベルといわれる。


 犯人の心境になって考えれば迂闊なことは出来ない。死体を別人に擬態させて自分を捜査の目からそらしたいなら、他者に知られる可能性は出来るだけ減らしたいと考えるのは自然な流れだ。


 だからと言って死体を放置出来るはずもなかった。腐敗などの物理的な問題ではなく、アベンダを殺した目的のためだ。


 そも、ルキアを殺してアベンダに擬態させるためにアベンダを殺したのだとすれば、オリジナルの死体を放置など出来るはずもない。同じ人間の死体が二つも見つかれば、当然どちらかが偽物だという疑惑が生じる。その疑惑が魔法具――引いては魔剣に繋がる可能性も出てくる。


 もっとも、遺体を修復出来る魔剣のことを犯人が知っているとは思えない。だが魔剣という摩訶不思議な武器で殺人を犯した第三者は、きっとこう思ったはずだ。


 もしかしたら自分のことを探し当てる魔剣があるかもしれない――と。


 それだけ魔剣の持つ効果が凄まじいという証左でもあるが、それが足枷になるということもある。アベンダを殺し、ルキアを殺してその魔剣の能力を知ったからこそ、犯人はその力に怯えたに違いない。


 だから出来るだけ自分の痕跡はなくしたはずだ。


 その為にはどうするか。


(俺が犯人なら、わざとアベンダを殺した場所を特定させる)


 アベンダを殺した痕跡をあえて残す。


 もちろん、それは公園ではない別の何処か。『ルキア』には一切の容疑のかからない場所だ。その痕跡がアベンダの殺害に関するものだと警察に判断させればいい。そこが本当の犯行現場に特定され、深夜の公園にいた『ルキア』も犯人リストから消える。せいぜい目撃証言のために事情聴衆される程度。一石二鳥だ。


(そこまで行けば完全犯罪の成立だが……)


 一見すると穴がないように思う。犯人が魔剣を使用して『ルキア』に擬態していることを知るルルキエルだからこそ次を考察出来るだけで、警察の操作はその時点で行き詰まるだろう。


 だが何かが腑に落ちない。


 ルキアの殺害と、アベンダの殺害に繋がりがあるのかないのか。今の時点で見ていてないからだ。何一つ証拠がない現状で、推論ばかりが先に立って何も結論を出せないでいるからか。胸中に感じるもやもやは、しかしそういう類の苛立ちとは別のベクトルを含んでいるように思えた。


 と――


「ルルキエル、君の意見が聞きたい」


 不意に思考が会議の方に引き戻される。意見を聞かれたなら答えなければならないというのは、この会議に出席している者としての義務だ。だが今のタイミングで会話のボールをこちらに投げかけたのは、明らかに意図したものだろう。


 大方書類に目を落としたたまま微動だにしなかったルルキエルに、意地悪も兼ねて会話を振ったに違いない。お前は話を聞いていたのかと。


 法務ギルド――法律関係を専門に扱うギルドの長、スタンリー・ニュールンベルグ。齢九十を超えてなお一線で活躍する老爺である。


 たっぷりの白髭が自慢の、一見するとどこにでもいそうな孫好きの好々爺のようだが、若手の教育に熱心で鬼教官としても有名な人物だ。新参者のルルキエルによく小言を言い、粗を見つけては叱りつけてくる半分ありがた迷惑のような先輩でもある。


 ギルドマスターとして未熟なルルキエルは、彼にとっては格好の的だ。


 色々教えてもらえるのはありがたいし、彼の小言は常々正しいことが多いため、ルルキエル個人としては嫌いなタイプでは決してない。が、だからと言って好んで注意されたいはずもなく、たとえ思考を別のところに置いていようと脳はきちんと会議の内容を聞き取って把握している。


 思考の切り替えは一拍の間も必要なかった。元々、今日の議案に対するルルキエルの結論は決まっていたからだ。


「予定通り、旧ギルドカードを完全に停止しても問題ないと思います」


 ギルドカードとは、ギルドに登録した際に発行されるメンバー証のことである。偽証防止などの魔法効果を帯びたその金属板には国際身分証としての側面もあるため、ギルドを利用しなくても登録だけはするといった者も多い。


 ギルドからの恩恵を優先して受けることのできる――もちろん、相応にギルドへの貢献も必要になるが――極めて有用なカードなのだが、しかし一方で、ギルドカードには弊害も存在した。


 ギルドごとに異なるカード管理体制が、ギルドの活動が多岐に及ぶ連れて利用者に混乱を招いていた。独立した管理、独立した保守・サービス体制などから差異が生まれ、それはやがて明確な優劣となって身分証の効力にまで影響を及ぼした。


 そういった事態に危機感を覚えた国家主席議会からの要請で、カードを全ギルドで統一し、管理システムも一元化するための刷新計画が立案、実行に移されることになる。それが二十年前のことだ。


 個人認証機能、偽証及び不正利用防止機能、リアルタイム情報更新機能、チーム間通信通話機能、資格免許情報保有機能――今まであった機能も、なかった機能もシステムの根幹から見直しがかけられた。


 そうして再開発が行われた結果、ベータ版がリリースされたのが七年前。二年間のテスト利用とアップデートを経て、五年前に正式に運用が開始。


 そして。


「新カード発行から五年。全ギルド登録者の内、九十九パーセントが新カードに移行を済ませています。当初の告知予定通り、四十日後――さ来月一日、未交換状態の旧カード使用禁止と効力無効に向けて動いても問題ないはないかと」


 三代前のシュヴァリアーから引き継いできた開発事業も今年で二十年目となり、最終フェーズを迎えようとしている。残すところは、未だ交換作業の済んでいない旧カードの完全な利用停止だけだ。


 予定していた旧カードの利用停止日――新カードへの移行期間終了間近に伴い、移行状況の再確認と、本当に停止フェーズに移っても問題ないかをすり合わせること。それが今日の会議のメイン議題である。


「ただし、一つ懸念があります」


「何か?」


「交換率は予定の水準を若干下回っている程度なので問題ないとしても、旧カードの不正利用には、もうしばらく目を光らせる必要があります」


 例え利用出来なくなったとしても、過去はそれで身分保証の取れた代物であることは間違いない。旧カードが無効化されたというシステム的な事実ではなく、持ち主の中身を重要視するに当たっては、例えただの板切れに成り下がったとしても有用であるに違いなかった。


 各国の警察や軍からも人を借りて、不正利用を取り締まるための専門部隊を結成して対策を打ってはいるが、残念なことに、彼らが暇になったという話は聞いたことがない。


 未交換の登録者は全体のたった一パーセントにも満たない。だがそれだけでも人数的には百万人を超える。


 ギルド上層部――ルルキエル達ギルドマスターは、その内の約九割九部は五年の間に死亡した結果、交換手続きが取れなかったのだろうと予測しているが、一万人程は故意である可能性が高いとみていた。五年もの猶予を設けたにもかかわらず交換しないのは、後ろ暗いところがあるからだろうとも予測している。


 そういう実情から、取り締まり部隊の解散に関して予定していた五年より延長すべきだ、というのがルルキエルの考えである。


 その部隊には新カード開発の中心となった工業ギルドと魔法士ギルドのメンバーを中心に、各ギルドからも職員が加わっている。工業ギルドだけの問題でもないため、ルルキエル独断で延長は出来ない。


 ギルドから派遣している取り締まり部隊の参画メンバーは、厄介ごとにも対処出来て、かつ技術面、知識面でも優秀な人材だ。部隊選任になっている今の状況はあまり好ましくない。本音を言えば早くギルドの本業に戻って欲しいが、それを許さないくらいには不正利用も後を絶たない状況にあった。


「部隊主力メンバーの半数は魔法ギルド職員ですが、ララァ?」


「魔法ギルドは問題ないわよん」


 ララカット・ラフィーニャ――愛称・ララァが軽く手を振りながら合意する。エルフ族出身である彼女は会議参加者の中で見た目最も幼い容姿だが、五百年近い時を生きる最も高齢で、二百年以上もの間ギルドマスターを務める最古参メンバーでもある。


 容姿が幼いのは十二歳前後の容姿で止まっているらしい、とは本人談だが、それを気にかける者はこの場にはいない。実力至上主義を謳うギルドにおいて、ララカットはその実績を実力で勝ち取っているからだ。


 彼女が言うなら問題ないと全員が納得した表情になったのは、それだけの信頼があるからだろう。ルルキエルには欠けているものだ。


「移行期間終了後も取り締まりは継続して行う必要がありそうだということだな。どれくらいを想定している?」


「今の所は最低でも一年間、長ければ二年」


「長いな……」


「状況を見てそこは適宜調整すればいいんじゃない? もともと完全な根絶は無

理なわけだしねー」


 ララカットの言葉に頷き返す。異論はなかった。それはスタンリーを始めとした他のギルドマスターも同様だ。


「ではルルキエル、次回の会議で不正利用の発生頻度に関して具体的な数値と推移なども合わせて報告して欲しい。可能か?」


「問題ありません。部隊長から報告を受けていますので情報は手元にあります。まだまとまっていないのでここで具体的な数値は言えませんが、そう時間もかからないでしょう。次回の会議までに先んじて必要であれば皆様宛に郵送で送りますが?」


「ではそのように頼む」


 その後も会議は滞りなく進み、解散の運びとなったわけだが。


(ギルドカード?)


 ルルキエルの思考は再び事件の方へと傾いていた。会議終了後に皆が席を立ち会議室を後にする中で、会釈して別れを告げてから再度椅子に腰を下ろす。思考を潜らせようとしたところを、しかしポスっと軽く頭を小突かれて、彼はその元凶の方を見やった。


「どうかしたか?」


「それはこっちのセリフでしょ?」


 書類を丸めた先をルルキエルの頭に乗せていたのは、魔法ギルドのトップであるララカットである。他のマスター達と一緒に部屋を出たと思ったら、またすぐに戻ってきたらしい。


 もっとも、ここは魔法ギルド本部『エデンズ・ガーデン』だ。彼女にとってはホームである。この施設の中を最も自由に動くことのできる彼女がここにいることに疑問はない。


「会議中もずっと違うこと考えてたでしょ? 何? またシュヴァリアー製の魔剣が見つかったの?」


「よくわかったな」


「その割りには浮かない顔ね」


 仮面で表情など分からないはずだが、その辺りの察しの良さは流石の年の功だった。思っても口にはしないが。


「少し面倒事があってね。まぁ、大したことではないんだが」


「ふぅん?」


「最低でも人が二人殺された」


「殺人事件じゃない! 十分に大したことでしょう!」


 驚くララカットに対して、しかしルルキエルの反応は鈍かった。


「そうは言っても証拠はない。うち1人は蘇生させたし。もう一人は死体がどこにあるのかもわからん。しかし死んでいることだけは確かだ」


「……なんだか色々とツッコミどころが多いわね。その様子だと魔剣の在り処もわかってないの?」


「いや。魔剣がどこにあるかはわかっている。犯人の居場所もわかっている」


「うぅん? なら何を考えてたの?」


「犯人が誰なのかがわからん」


「……ゴメン。わたし、ルルが何言っているのかさっぱりわからないんだけど?」


「まぁそうだろうな」


 理解出来るように話していないのだから、事情を知らないララカットが混乱するのは無理もない。


「俺もまだ考えを整理出来ているわけではないんだ。ところで、ララァ。戻ってきたのは俺に何か用でもあったのか?」


「ああ、そうそう。なんでもデュランダルの居住区でアンデッドモンスターが発生したって情報が入ってきたの。スケルトンだそうだけど」


「物騒だな」


 話題としては十二分に驚きの情報だったが、今この場で話題にあげる程のことでもないような気がした。だが。


「襲われている男の子がSOSの魔法信号弾を打ち上げて、それをキャッチしてわかったのよ。で、その信号弾なんだけど、わたしが気まぐれに開発したオリジナルの発光パターンだったから、以前わたしが教えてあげた魔法だと思うのね?」


「誰に?」


「アルトちゃんに」


「…………」


「襲われてるの、多分アルトちゃんだから助けに行こうと思うのだけど。一緒に来る?」


「そういうことは早く言え!」


 流石にのほほんとしている余裕もなく叫ぶと、しかしララカットは笑みを絶やさずにルルキエルの腕をとった。


「じゃ、転移するわよ。『シュパパパパーン♪』」


「いや、もうちょっと危機感というか緊張感を持ってくれ! というかその掛け声は一体なんだ?」


「ん? 転移魔法の呪文だけど?」


 あっけらかんと宣うララカットの言葉通り、次の瞬間には、二人は会議室から姿を消したのだった。




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