表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
語部探偵事務所  作者: 天村真
手折られた菊花
12/15

プロローグ

 友人は、茶でも勧めたいところだが、生憎用意が無い、などと皮肉な笑みを浮かべながら言う。

 そんな事は百も承知である。

 昨年の五月頃からのつきあいであるから、かれこれ一年半と言ったところか。 それだけあれば、この場に茶が出ない事など言われるまでもない。

 しかし、彼は私がここを訪ねる度に同じ事を言うのだ。

 初めてあった時もそうであったように、寸分と違わぬ形の笑みを浮かべながら、聞く。

 そして私も毎回同じ様に手で制しながら、外で飲んで来たと言ってひりつく様な喉の渇きを誤魔化すのだ。

 いつもであれば、そこでお開きになり、私は一寸チョット出たところにある自販機で、微糖入りの缶コーヒーなんかをチビチビと啜りながら帰るのだが。 今日は違った。

 もし、と。

 彼は切り出す。

「もし、この続きが気になるのであれば、今日はもう少し話していかないか」

 彼からのその誘いに、私は喉の渇きと好奇心との天秤に頭を悩ませる事になったが、体は反射的に、聞きたい、と口を動かしていた。

 彼はそれ自体が何かの嫌がらせであるかの様に、また、それが成功したと言う風にしたり顔でニヤニヤと笑みを浮かべる。

 私はこれ見よがしに嘆息するが、きっと今の私は滑稽なまでに彼の読み通りに動いているのだろう。

 私が彼の事をよく知っている様に、彼もまた、私の事をよく知っているのだ。

 ひょっとすると、私以上に。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ