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2話 死んだけどピンピンしてるもん!

 サユ、ミツコ、マホそしてプルエの四人は広い草原の中にいた。

「ここがスタート地点、始まりの草原ですー」

「おお! 草しかない!」


「プロローグも無しにいきなり野原かよ……」

「とりあえず北の方に街があります。王様もいますよー?」


「ちなみに他の方角には何があるんですか?」

「何もありません。進行不可能な海と山だけです」

「北しか行くところないじゃないか!」


「そんな事言われても私の力ではどうにもできませんしー」

「まあ、いいじゃん! 勇者サユの愉快な仲間達、進むは北だ。私に続けー!」


「サユ! ちょっと待て!」ミツコの制止の声を聞かず、サユは北へ走っていく。サユの姿は地平線の彼方へと消え去っていった。


「あいつ、足早!」

「ゲームの中ですからフィールドでは早く移動出来ますよー」

「ゲームってそういうものなのか……」


「そうそう一つ言い忘れてましたが……」

「なんだよ」

「アクマには注意してくださいね、序盤では勝てませんからー」突然、プルエの体が宙に浮き、空高く飛び上がる。

「悪魔? 序盤からやばい敵だすのか」


「ところで何で空を飛んでいるのですか?」

「魔物との戦いに入ったので、私戦えませんから」

「戦い? 魔物なんていないぞ?」


「……ミツコちゃん、サユちゃんが戻ってきますよ?」

「……なんか黒くて大きな物が見えるんだが」


「ただいまー!」サユは二人の元へと戻ってくる。

「見てみてこれ、スゴいでしょ?」サユは後ろにいる大きな物を見せるように手を広げる。


「「……あ、あ、あ」」ミツコとマホはわなわなとサユの後ろへ人差し指を向ける。その先には二本足で立ち上がり、黒い毛をした大きな動物。

「「クマだー!」」


 アクマデクマが現れた。


「グオォ……」

「おまえ、バッカじゃねーの! なにクマ連れて来てんだよ!」


「だってこんな近くでクマが見れるんだよ? すっごい貴重な経験だと思わない!」

「思わねーよ! 檻の外から見るだけで十分だわ! とりあえず逃げるぞ!」

 ミツコは逃げ出した。


「グオッ!」しかし、回り込まれてしまった。

「くそ!」

 ミツコは逃げ出した。


「グオッ!」しかし、回り込まれてしまった。

「は、はえぇ……」

「大ピンチですな!」


「このゲームって全滅したらどうなるんでしょう?」

「ゲームオーバー?」

「それって死……」


「考えるな! 考えちゃダメだ!」

「そうだよ、あきらめたらそこでゲーム終了だよ!」


「……とにかくこの状況を切り抜けるぞ!」

「私に任せて!」サユは背中の剣を引き抜く。


「サユ! 待て!」

「大丈夫! だって私、勇者だから」サユは背中越しに親指を立てる。そしてクマへと走り寄る。


「食らえ! サユスラーッシュ!」

「ガオッ!」

 ベシッ!「あふん!」

 クマの右カウンター。サユは棺桶になった。


「サユー!」

「サ、サユちゃんが死、死んだ? ミ、ミミツコちゃん。ど、どどどううしし……」

「落ち着け、マホ!」


「そうだよ、私死んだけどピンピンしてるもん!」棺桶から声が出てくる。

「きゃああー! お化けー!」


「マホ! 現実に戻って来い!」

「ここゲームだよ! 何言ってんの!?」

「そういう意味じゃねーよ!」


「グオォォ」

「あ! やべぇ! ともかく攻撃するしかねぇ!」


 ミツコは三個の玉でお手玉をし始めた。

「何遊んでんの!?」

「ちげぇよ! 体が勝手に動いたんだよ!」


 クマはミツコのお手玉をじっと見ている。

「ハッ! 今だマホ! 今のうちに……」

「は! はい! ……えいっ!」

 マホは持っていた杖でクマを殴る。


「何故殴ったー!」

「ガオッ!」

 ペチッ!「きゃあ!」

 クマは右手でマホをはたいた。マホは棺桶になった。


「そこは逃げろよ! せめて魔法使えよ! 魔法使いだろうが!」

「ちがうよ! 呪文使いだよ!」

「どっちでもいいわ!」


「ご、ごめんなさい。気が動転してて」

「グオォ……」

「くそ、もう私一人しかいない……」


「ミツコちゃん、がんばって!」

「サユ!?」

「ミツコちゃんならできるよ! クマだって倒せる。だから、がんばってミツコちゃん!」


「そうです! ミツコちゃんならできます! 絶対に!」

「マホ……。そうだな、あきらめたらゲーム終了だもんな。行くぜ! これが私の力だー!」


 ミツコは落とし穴を作った。

「だから何やってんの!?」

「うるせぇ! だから体が勝手に動くんだよ!」


「目の前で落とし穴作って引っかかる訳ないじゃん! そんなのバカだけだよ!」

 クマは落とし穴に落ちた。

「このクマバカだったー!」


 落とし穴は深く、クマが這い上がろうとしても上って来れない。

「ど、どうやら一難は去ったようだな」

「よ、良かった……」

「いや、こんなのおかしいよ! バカすぎるよ!」


「お疲れさまですー」空にいたプルエが降りてくる。

「貴様! 安全になるまで空にいやがったな!」

「だって戦闘要員ではないですし、仕方がないじゃないですかー」


「……まあいい、それでこの二人はどうするか」

「街にいけば治る方法が見つかりますよー」


「え? まさかこの二人を街まで運べってのか?」

「ええ、ちゃんと棺桶にロープついていますからお願いしますね?」

「まじかよ……」


「ミツコちゃんお願い! 助けて!」

「お願いします!」


「ああ! 分かったよ! 運べばいいんだろ!」

 ミツコはサユの棺桶を移動させ始める。


「くっ、これ重いぞ!」

「いやー、快適ですなぁ」

「サユ、貴様ぁ! 少しはねぎらえ!」

「やぁご苦労さん。よきに計らいたまえ」


「てめぇ、落とすぞ」ミツコはサユの棺桶をクマのいる落とし穴へ近づける。

「あぁー、ごめんなさい! さすがミツコ様、お疲れさまです!」


「たくっ、これに懲りたらもうちょっとはだな……。あ!」ミツコはサユの棺桶に足をぶつける。


「あ、ああぁぁぁ!!」ガッ、ガタッ、ガタン。

 棺桶は落とし穴の中へ。


「ミツコちゃん、何するのさ。ひどいよ!」

「わ、わりぃ!」


「ガオオォォ!!」ガジガジガジ。

「キャアア! クマが! クマがかじってくる!」

「な、何でだ!?」


「きっと、サユさんがクマの事をバカ呼ばわりしたからですねー」

「え!? あいつ言葉分かるのか?」

「そりゃあ、もう……」


「クマさん、ごめんなさい! 許してください!」

 ガジガジガジガジ。


「お、おい大丈夫なのか、あれ?」

「棺桶状態なら全然ヘッチャラですよー」


「ヘッチャラでも食べられてるみたいで気分が良くない! ミツコちゃん、助けて!」

「くっ、サユ、すまん!」

「ミツコちゃん!?」


「絶対、助けるから! 後で助けるから! 行くぞマホ!」

「は、はい! ミツコさんお願いします!」


「え?! ちょっと?! ミツコちゃーん! マホちゃーん! プルエさーん!」

 ガジガジガジガジガジ。


 ……数時間後。


「クマさん?」

「グオッ?」


「空って青いね」

「グオッ」


「いい天気だよね」

「グオッ」


「この落とし穴、狭いよね」

「グオッ」


「広い草原で日向ぼっこしたいよね」

「グオッ」


「でもクマさん、私たちここから出られないんだよね」

「グォ……」


「クマさん、私たち友達だよね?」

「グオッ!」


「良かった。それじゃここで仲良く暮らしていこうか」

「グオッ!」


「いつまでも一緒だからね?」

「グオッ!」


「サユ、助けに来たぞ!」

「ミツコちゃん!?」


「サユちゃん、今から助けますからね! ドミガズシャオルゴリウトゴ!」

 呪文を唱えたサユの杖から大量の水があふれ出す。

 水は滝となって落とし穴の中へと落ちていく。


「マホちゃん、待って! もうクマさんは敵じゃないんだよ!」

「えー? 何だってー? 水の音で聞こえないんだけどー!」

「だからクマさんは敵じゃないんだって!」


「……ああ! 大丈夫だ! 棺桶ならおぼれないし、浮き上がるから!」

「だからそうじゃなくって!」


「グオッ!」クマはサユに対して親指をあげる。

「クマさん!?」


「グオッ!」クマは頷いた。

「そんな、クマさん……、クマさーん!!」


「ひどいよ! 二人ともひどいよ! クマさんとは友達になったのに! なれたのに!」

「いやそんなことを言われてもだな、相手はクマだぞ? ゲームの敵にすぎないんだぞ!」


「それでも! それでも! 友達だったんだよぉ……」

「ごめんなさい、私の呪文のせいで……」


「……謝らなくていいよ。どうせクマさんは戻ってこないから」

「そんなことありませんよー」

「プルエさん?」


「敵キャラは死ねば自動で復活しますからー。あ、ほら見てください」プルエの指さした先には黒いクマが走ってきていた。


「クマさん! 良かった……」

「……心なしかクマの鼻息が荒いんだが」

「毛を逆立ててますよね?」


「前世の記憶を持ってるんで殺された恨みでも持っているのではないでしょうか?」プルエは既に空高く浮いていた。


「やばい! マホ! 頼む!」

「はい! ボウマタヒエノモル」

 マホの杖から火の玉が飛び出し、クマへと向かう。クマは火の玉を物ともせずに突進する。


「そんな! 呪文が!」

「ガオッ!」クマはマホへと近づき右手を振り下ろす。

「きゃあ!」マホは棺桶になった。


「マホ! くそ! だが、レベルアップしたのはマホだけじゃない」

 ミツコは十個の玉でお手玉をした。

「って、ちっげーよ!」


「ガオォォォ!」

「ヒイィィィ!」


「待ってよ、クマさん!」

「ガオッ?」クマの動きが止まる。


「クマさん、落とし穴の中で誓ったじゃない! 友達だって! 確かにミツコちゃん達に酷い事されたかもしれない。でも、それを許してミツコちゃんと友達になってよ! 私と友達ならミツコちゃん達とも友達になれるよ! いつまでも一緒にいようよ! クマさん!」


「サユちゃん……」

「サユ、おまえ……」


「……あ、クマなんで無理っす自分」

「「「しゃべったあああ!?」」」



 草原に三つの棺桶が並ぶ。

 サユ達は全滅しました。


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