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19.20話 終わり

「はっ!」

 ミツコとマホはサユの部屋で目を覚ます。

「……戻った、のか?」

「サユちゃんは?」

「そうだサユは!」

 ミツコはサユの体へと向かい、体を揺さぶる。

「おい! サユ、しっかりしろ!」

 ミツコに声をかけられたサユはゆっくりと目を開ける。

「ああ、ミツコちゃん、おはよう」

「おい! 大丈夫なのかよ!」

「うん、大丈夫だよ」

「サユちゃん、何ともないんですか?」

「全然平気!」

 そう言って、元気良く立ち上がる。

「ならいいですけど……」

 マホは制服のポッケから携帯を取り出す。

「午後の8時……四時間くらいゲームの中にいたみたいですね」

「とりあえずマホは帰った方がいいんじゃないか? 午後の8時ってまずいだろ?」

「そうですね、でもその前にサユちゃんに聞きたいんですが……」

「何?」

「サユちゃんはこれからどうします?」

「別に? いつもどおりだよ?」

「そう、ならいいです。……それじゃ私は帰りますね」

「ああ、気をつけてな」

「それじゃあねマホちゃん」

 マホはサユの部屋を出て行った。



「……それじゃあ、少し遅いけどメシでも作るか」

「あ、じゃあお願いね」

「はあ? いつも二人で作ってるだろ?」

「あー、そうだったね。ゴメンゴメン」

「……何か前にもこんなやり取り、……っておまえニセサユだろ!」

「いや!? そんな事ないよ!?」

「ほう? じゃあ一人で料理作ってみろよ?」

「……くっ、まさか貴様に見破られるとは」

「てめえ! 本物のサユはどうした!」

「ふっふっふ、奴はゲームの中で棺桶だろう。まあクマ辺りが蘇生させてるかもしれんが」

「ふざけんな! サユを返せ!」

「わざわざ体を乗っ取ったのだ。はいそうですかと返すわけがなかろう」

「……お前、体を乗っ取ってどうしようって言うんだよ?」


「この世界で暮らす!」

「……はあ?」

「考えてもみろ! 九十九年間、あの狭いゲームの中でずっと勇者の偽物役だぞ! 私はもううんざりなんだよ! ここで自由きままに暮らすのだ!」

「ふざけんな! この世界で自由きままに暮らせるわけねーだろ!」

「だが、ゲームの世界よりマシだ! だからお前たちも帰りたかったんだろ!」

「んなわけあるか! だったらゲームなんかやらねえよ!」

「ふん! そんな言葉に騙されるものか!」

「……だったら暮らしてみろよ。無理だって分かったらサユの体を返せよ! いいな!」

「はっはっはっ! いいだろう!」


 一時間後、サユの家の食卓でミツコは携帯でマホと話をしていた。

『そうでしたか、という事はサユちゃんはまだゲームの中なんですね?』

「ああ、まあとりあえず私があいつの監視しておくわ。サユの家に泊まるのも親は了承してるしな」

『分かりました』

「そう言えば、マホの方は大丈夫だったのか? 親、心配したりしてただろ?」

『いえ、こっちの方は大丈夫です』

「そうか、ならいいけどな」

『ではまた明日、放課後に会いましょう』

「ああ、それじゃまたな」

 ミツコは携帯の通話を切った。


「ねえー、ミツコちゃん?」

 ニセサユは声を高くしてミツコに呼びかける。

「何だよ?」

「私、お腹空いたなー、って」

「そんなん私が知るか」

 ミツコは食べ終えた食器を台所へ持って行く。

「き、貴様! この体がどうなってもいいのか! 餓死してしまうぞ!」

「一食抜いたくらいで死ぬわけねーだろ」

「くっ! ならばどうすれば作ってくれるのだ!」

「自分でやれよ、自由に生きるんなら他人に頼ってんじゃねーよ」

「自分でやれ? 料理なんてできるわけないだろ! バカを言うな!」

「できないんだったら、できるようになるまで頑張れよ! それがこの世界のルールだ!」

「うっ! ぐっ! くそおおおおお! ……だったらいいさ! 私はもう寝る!」

 ニセサユは食卓のあるリビングを出て、腹の虫を鳴らしながらサユのベッドに伏した。




「おい、おまえ起きろ」

 朝、ミツコはニセサユの体を揺する。

「起こすな、私は眠いんだ」

「うるせえ、サユの代わりに学校へ来い」

「……そんなもの私には関係ない」

「そうか? 学校へ来るんだったら朝食を作ってやるぞ」

「何だと!」

 ニセサユは勢いよくベッドから起きあがる。

「ついでにお昼の弁当も作ってやるよ」

「よし分かった、学校とやらに行くだけでいいのだろう?」

「ちゃんと放課後まで出席しろよ?」

「約束しよう。さあお前も早く朝食を作るのだ!」




 学校にて、ニセサユとミツコは英語の授業を受けていた。先生が教室の前にある液晶に文字を書くとそれが生徒の机に映し出される。

「Healthy people do not try to change the opponennt,their changes.Unhealthy person operates the opponent,and to change it. ……ではこれを訳して貰いましょう。分かる人は手を上げてください」

 先生の言葉に手を上げるものは誰もいない。

「サユさん? どうしました? いつもなら手を上げるのに」

 先生が不思議そうな顔をしてニセサユの顔をみる。

「すみません、ちょっと分からなくて……」

「そう、ですか? でもいつか海外に行きたいと考えているならちゃんと英語を学ばなくては駄目ですよ? 今は携帯で翻訳できますけど、いつでも使えるとは限りませんからね」

「はい……すみません」



 放課後、ニセサユとミツコは共に家路についていた。

「くそ、あんな集団牢屋みたいな所に行かせて、しかも事あるごとに上から目線の先生共がこちらに問いかけてきてその度に小言を言って……、騙したな!」

「何も騙してねーよ。学校はそういうところだ。それにサユは成績良いし、自分から手を上げるからな」

「はぁ……」

 ニセサユは深くため息をついた。


 二人の元にマホがやってきた。

「ミツコちゃん、お待たせしました」

「お、マホ」

「サユちゃん、ではないんですよね?」

「今更聞くまでもないだろ?」

「サユちゃんの体、返してくれませんか?」

「おい、マホ。そんな頼みで聞くわけないだろ」

「ああ、いいぞ」

「ほらな、って何でだよ!」


「こっちより元の世界の方が遙かにマシだ! 私には無理! だから約束通りこの体を返すことにする」

「……まあ、おとなしく返してくれるならそれでいい。じゃあ早く頼む」

「お願いしますね」

「ああ、サユの家に帰ったら返そう。……一つだけ聞きたいことがあるんだが?」

「何だよ?」

「どうしてお前たちはこんな面倒な世界に帰りたがったんだ?」

「どうしてって……学校があるし、親もいるし、私は花嫁修業があるしな」

「つまるところ、私達の世界だからでしょうね」

「おまえたちは自分達の世界だと帰りたいっていうのか?」

「おまえだってそうだろ?」

「私は……違う。ここよりも元の世界の方がマシなだけだ」

「そうか。まあ、サユを返してくれるならなんでもいい。……それじゃまたな」





「サユ、ふっかーつ!」

 サユの体は戻り、サユ達三人のキルムーンRPGの旅は終わった。そして……。


(ドルワーローハ! ユサしたわ! いせうこうこたっだしゃうゆ)

 朝の通学路で目を力一杯閉じて、両手を上に大きく広げるサユ。

「朝っぱらから何やってんだよ?」

 そのサユにミツコが声を掛けた。

(んちゃコツミのいせうきゅうどはこのこ。いせうこうこうとんたみこっつ)

「おい! 聞いてるのか! 何やってるんだよそれは!」

「これは異次元の人間とテレパシーする為の練習なのです!」

「異次元なんてあるわけ無いだろ。バカなのか? いや、バカだったな」

「二人とも、おはようございます」

 さらにマホが加わる。

「ああ、おはよう」

(んちゃホマのいせうきゅうどくじなお。いせうこうこたっだいかつんもじゅ)

「なにやってるんですか、サユちゃん?」

「気にするなマホ。バカが移るぞ」

「あ、そうだ! 二人とも今日ウチに来ない?」

「……まさかまたゲームか?」

「お、察しがいいね。ミツコちゃん」

「ちなみにどんなゲームなんですか」

「それはね!」



「キルムーンRPG2!」


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