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10話 おいしいよカレー

 大きなイカのモンスターを退治したサユ達四人は新しい港街にたどり着く。

 街の入り口にいた兵士が彼女らに一言、声を掛けてきた。

「トイノーモクへようこそ」

「無事に新しい街に来たな」

「じゃあ、シーダイさん達にイカを倒した事を伝えないとね」

「私としてはあいつらに会う前に装備を整えたいな、呪文書とか」

「え? どうして?」

「だってまた金貨もらえるかもしれないだろ? その前に使っておいた方が良くないか?」

「ミツコちゃん、がめついね……」

「がめつくて悪かったな……」

「……ではシーダイさん達に会う前に他の事を済ませておきますか?」

「ああ、そうしようぜ」



 新しい町で手に入れた新しい呪文書、マホはそれを開く。呪文書の文字がマホの前に浮かび上がる。


 土の呪文、ドンガンタチデドクツルイ

 羽の呪文、トマバデナマサンハ


「……はい、これで覚えました」

「羽の呪文って何だ?」

「使ってみましょうか? トマバデナマサンハ」

 呪文を唱えたマホの背中から白い羽が生えてくる。そして羽ばたくとマホの体は空高く舞った。

「空が飛べるんだ……」

「まるで私みたいですねー」

「ただ、マホだけみたいだな」

 ミツコは自在に空を飛び回るマホを見上げながら言った。

「ミツコちゃんも飛びたいの?」

「色々と便利だろ?」

「……まぁ、無理ですね。君のような一般ピープルでは」

 サユはやれやれといった表情で肩をすくめる。

「てめぇもだろ、一般ピープル?」

「私は飛べるもん」

「ほう? どうやって?」

「ミツコちゃんのアッパーで……」

「飛ばねーよ!」

「そうだ! ミツコちゃん、殴らせて!」

「はあ!?」

「殴れば飛べるよ!」

「んなわけねーだろ!」

 ボガッ! ミツコがサユにアッパーを決める。

「ああー! 体が軽いぃ……」

 サユは宙を舞った。




「カレーハウス、ガンダダへようこそ」

 サユ達は料理屋のカウンターに座っていた。

「匂いにつられて入っちまったけど、何でカレーハウスがあるんだよ」

「いいじゃない、おいしいよカレー」

「それよりー、注文しましょうよー」

 プルエは持っていたメニューの板をミツコへつきだす。


「……そうだな、私はビーフカレーだ」

「えっと、私はシーフードカレーでお願いします」

「私はどうしようかなぁ……。プルエさんは何ですか?」

「私はアオサカレーですー」

「アオサ?」

「はい、アオサです」

「あいかわらず凄そうなの頼んでるな……」

「それはー! 全国のー! アオサカレーファンへの冒涜ですかー!」

「いや、アオサカレーなんて初めて聞いたし」

「失礼ですねー」

 プルエは顔を膨らませてそっぽを向いた。


「私、カレー天津飯にしよう! 卵食べたいし!」

「それって普通の天津飯でも良くないか?」

「何言ってんの? ここカレーハウスだよ?」

「……私が間違ってるのか」

 ミツコは頭を抱える。

「そんな事は無いと思いますけど。……ここのメニュー、カレーシェイクとかカレーパフェとかありますよ?」

「腕によりをかけたウチのオススメだぜ!」

 カレーハウスのマスターは右手を握りしめて親指を立てる。

「いらねえよ?」



 カレーを食べ終え、サユ達は通りを歩いていた。

「サユ、おまえさぁ。味覚は正常なんだから普通のを食べろよ」

「いやぁ、こんな機会じゃないと食べないと思うし。おいしかったら家でも試したいじゃん?」

「頼むからその時は一人で食べろよ?」

「えー、毒味してくれないの?」

「するわけねえ!」


「ヒュー! そこの遊び人!」

「……ひょっとして私か?」

 薄汚いマントを羽織った男がミツコに声を掛けた。

「そうだ! 君、このアコーディオンはいらないか! フウ!」

 そう言って男は置いていたアコーディオンを両手で持つ。

「で? これはどんな魔法が強くなるんだ?」

「フゥワ!? 君には音を楽しむ心はないのか!」

「ミツコちゃんは見ての通り心ない人間なんです」

 ドガッ! っとミツコは無言でサユの頭を殴る。

「戦いで使えないのを買うほど余裕はねえよ」

「すー、ふぅー、仕方がない教えよう。このアコーディオンは風を強くできるのだ! ゴーっとね」

「そうなのか……。で、いくらだ?」

「音を楽しまない君には特別価格! 有り金全部置いていきなぁ!」

「はぁ!?」

「フー! もう一度言おうか、君たちが持ってる2115枚、全部置いてそのフトコロに風を通すんだよぉ!」

「あーあ、ミツコちゃんの腹が黒いから雪のように冷たくされちゃうんだよ……」

「んなわけねーだろ!」

「ちなみに安くはならないんですか?」

「ヒュー! 俺も鬼じゃーない。ズーっと安くしよう。2114枚だ」

「1枚だけじゃねえか!」

「一応言っておく、これ以上は安くならないぞ。フー!」

「……どうすんだよ?」

 ミツコは他の三人に聞いた。

「買わないほうがー、いいと思いますよー?」

「でも私、シルフスライサー持ってるし、いいと思うよ」

「そのうち必要な時が来るかもしれません。この前と同じくらいの値段ですし」

「でも残りの金貨が一枚になってしまいますよー?」

「また稼げばいいじゃないですか」

「よし! じゃあ買うぞ!」

 ミツコは男に金貨を渡す。

「毎度ありがとうございます。お客様」

 男はアコーディオンを差し出しながら丁寧にお辞儀した。

「この野郎……」

「では風来坊の私はこれで失礼する! ヒュオー!」

 そう言って男は走ってどこかへ言った。

「楽器のやつら、マジで変人しかいねぇ……」

「遊び人っぽくて良いじゃないですかー」

 プルエが微笑みながら言う。

「くそっ! こうゆうのは私じゃなくてサユの方だろ」

「いやぁ、ミツコちゃんで合ってると思うよ」

「んなわけあるか! マホ! マホはどう思う?」

「サユちゃんとミツコちゃんで、ですか? ……面白いのはミツコちゃんですね」

「ぬああー!」

 マホの言葉がミツコに突き刺さった。




「あ、シーダイさんとモカネだ。おーい!」

 港の方で二人の姿を見つけたサユが手を振りながら声をかける。

「おまえたち、無事だったのか?」

「ええ、何事もなくイカを退治してきました」

 シーダイに声をかけられ、マホが答える。

「ねえ、ミツコは?」

 きょろきょろと辺りを見渡すモカネが聞く。

「ミツコちゃんならあそこだよ?」

 サユが後ろの遠くの方を指さす。

 そこには道路の端でうずくまっているミツコの姿があった。

「……どうせ、バカだよ、遊び人だよ、遊び人がふさわしいよ…………」

 彼女はイジイジと地面にのの字を描きながらぶつぶつとつぶやいていた。

「えっと、大丈夫なの?」

「大丈夫! 強い子だから!」

「ふ、ふーん……?」

 モカネは難しい顔をしながらミツコの方を見ていた。


「実はな、あのイカのせいで港が閉鎖される所だった。おまえ達のおかげで私の商売が続けられる。ありがとう」

 シーダイが頭を下げる。

「お礼ならミツコちゃんにしてください。初めにそう決めたのは彼女ですから」

 サユは返した。

「何? あいつが?」

 シーダイはうずくまっているミツコを見る。

「ならばおまえ達が後で伝えておいてくれ。まだ船酔いから醒めてないようだからな」

「はい、分かりました」


「ところで、おまえ達はこれからどうするのだ?」

 シーダイが彼女たちに聞く。

「私たちは東にある魔王城に向かいます」

「魔王城? いったい何をしに?」

「魔王を倒しに行くつもりです」

「魔王と戦うというのか! 危険だぞ!」

「それでも行きます」


「……私は、おまえ達がイカを退治すると言った時、止めなかった男だ。私にできるのはこれくらいしかない。ほんの少しだが持って行くといい」

 シーダイから金貨5000枚を渡された。

「シーダイさん、ありがとうございます」

「ねえ? どうしても行くの?」

 モカネがおずおずと不安そうに尋ねる。

「もちろん!」

 サユは笑顔で答えた。

「……そう。それじゃあ一つだけいい?」

「なに?」

「気をつけて。帰ってきてね?」

「大丈夫、任せておいて!」



「……はぁ」

 町を離れた四人、草原の上でミツコがため息をつく。

「ミツコちゃん、シーダイさんがありがとうって言ってたよ?」

「あぁそう。それは良かったな」

「ミツコちゃん、そろそろ機嫌を直してもいいのでは?」

「そうだよ、遊び人っぽくないよ?」

「うるせえ! 遊び人、遊び人って私はお笑い担当じゃねー! 普通の女子高生なんだよ!」

「私も普通の女子高生だよ。勇者だけど」

「私は金持ちの女子高生です。呪文使いの」

「私はゲームキャラですー、案内人ですー」

「何の話だよおまえ等!」

「皆、バカって話」

「そうですね。お笑いの仲間ですね」

「今度皆でマーボーカレーでも食べましょうー」

 三人の言葉を聞いたミツコは笑みを浮かべる。

「……ったく、マーボーカレーとか変なもの勧めるなよな?」

「それはー! 全国のー!」

「はいはい、ファンだろ?」

「いえ、信者ですー」

「信者!?」

「マーボーカレーは至高のカレーですー。毎日食べなければいけないものなんです。他のカレーなんていらないんですー」

「お、おう。そうか……でもおまえさっきマーボーカレー注文してないよな?」

「え? いや、私は信者とファンの掛け持ちですからー」

「意味わかんねーよ!」


「調子、戻ってきたね」

「いつまでも落ち込んでられないからな。それにバカなやつらを相手にできるのは私だけって事だろ」

「お願いします、ミツコちゃん」

「よし! それじゃあ勢いよく東へ向かおうか!」

「ああ! 魔王を倒して遊び人なんか辞めてやる!」


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