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1話 スイッチオーン!

ドルワーローハ(ハローワールド)! ユサしたわ(私サユ)! うあにがろいき(黄色が似合う)いせうこうこう(花も恥じらう)らじはもなは(高校生)


 商店街を走る制服を着た女子サユ。彼女は店のガラスに自分の姿が映るのを確認すると叫んだ。


「朝っぱらから何やってんだよ?」

 サユと同じく制服を着た一人の女子が彼女へ声を掛けた。


んちゃコツミ(この子は)のいせうきゅうど(同級生の)はこのこ(ミツコちゃん)うあにがろいかあ(赤色が似合う)いせうこうこ(ちょっと強気な)なきよつとちょっ(高校生)


「日本語で説明しろ! なんなんだよそれは!」

「これは鏡の国の人と会話するための練習なのです!」

「鏡の国なんてあるわけ無いだろ。バカなのか? いやバカだったな」


「二人とも、おはようございます」

 さらにもう一人の女子が加わる。

「ああ、おはよう」


んちゃホマ(同じく)のいせうきゅうど(同級生の)|くじなお《マ

ホちゃん》。うあにがろいいあ(藍色が似合う)いせうこうこ(大人しい)いしなとお(高校生)


「ん? ちゃ……? なんですかそれ?」

「気にするなマホ。バカが移るぞ」

「そうだよ。ミツコちゃんと話してたら私みたいになっちゃうよ?」


「……それはどういう意味だ?」


「だってミツコちゃんが一番成績悪いし」

「グハッ!」サユの言葉がミツコに突き刺さる。

「……なぜだ。なぜおまえの成績の方がいいんだ?」

「私の成績がいいんじゃないんですー! ミツコちゃんのが悪すぎるんですー!」


「…………」ボガッ! ミツコはサユの頭にげんこつをくらわす。


「あいったー! もう、いきなり殴るなんて。……ちゃんと牛乳飲んでカルシウム取った方がいいよ? この、胸のためにも」

「……まだ殴られたいか?」


「ミツコちゃん落ち着いてください。バカに見えますよ」

「ドゥフッ!」マホの言葉がミツコの体を貫通する。


「バーカ、バ~カ^^」

「てんめぇー!」ミツコはサユの胸ぐらを掴む。

「ミツコちゃん! 落ち着いて!」


「あ! そうだ二人とも。今日うちに来ない?」

「ソレガキサマノサイゴノコトバカ?」

「ミツコちゃん、優しく、して……?」

 ボガッ!「アウッ!」バキッ!「ギャフ!」



『210X年、世界の人口はその許容量を越えるほど莫大に増加、人類は衰退していった』という事もなく皆90年前と同じように普通に暮らしていた。



 放課後、サユ、ミツコ、マホの三人はサユの家、サユの部屋へと来ていた。

「……で? 家に呼び出して何の用だよ?」

「よくぞ聞いてくれました!」


「帰り道や昼休みでは教えてくれませんでしたね?」

「お楽しみはギリギリまで取って置くもんだぜベイビー」


「いいからもう話せよ」

「えー、もうちょっとだけこのまま……」


「てか、あれだよな」ミツコはサユの部屋の隅にある1.5メートルはある大きな箱を指差す。

「な、なぜ分かった?」サユに電流が走る。

「人並みにでかい箱があれば嫌でも分かるわ!」

「だ、だが中身はわかるまい!」


「箱に商品名が書いてありますよ? 『キルムーンRPG』ってゲームですね」

「ええぇ……、二人とも空気読んでよ」

「おまえがとっとと教えないからだろ!」

「もういいよ……、一人でじゃんけんでしてるから二人で楽しみなよ」


「……なんかめんどくさい感じになったな」

「ミツコちゃん、これゲームの割には大きくないですか?」

「確かに、ゲームって普通片手に収まるよな?」

「知りたい? 知りたいでしょ?」


「一人じゃんけんはもういいのかよ?」

「右手が華麗な勝利を収めたので終了です。いやーあの手に汗握る戦いは二人に見せたかったなー」


「これ何処から開けるんだ?」

「あ! ここ、横から開けれますよ」

「二人とも聞いて!?」サユは目から涙を流し訴える。

「横にスライドさせて……なんだこれ?」箱の中にはアーケードゲームの筐体があった。

「ゲームセンターによくおいてあるやつですね」

「ウワーン!」サユは泣きながら部屋を出て行った。

「ほんとに面倒だな……」



「やっぱり私がいないと寂しいんですね? 二人とも仕方がないねー」

「また仲間はずれにすんぞ」

「あ、ごめんなさい。真面目にやります」


「それで、このゲームどうしたんですか?」

「それねー。『ゲームを探すならインターネットだよね! ……伝説のゲーム! 九十九年前に作られた! 一台限り! 今なら500円!』ってな感じで買いました」

「衝動買いすぎんだろ」


「ずいぶんと昔のゲームなんですね? 遊べるのでしょうか?」

「大丈夫! この最近できた『どんなゲームでも仮想世界で遊べるぜ』ハードがあるから!」サユは一台の箱型のゲームプレイヤーを出す。


「ああ、それ流行ってるよな」

「昔の名作たちがもう一度楽しめるってテレビでやってました」

「そうなんです! これを使えばこのゲームも遊べます!」


「じゃあ早速始めないか?」

「では早速取り付ける作業に入ります!」サユは手際良く筐体とプレイヤーの配線取り付け始めた。


「そういえばコントローラーは一人分に見えるのですけど、三人でできるのでしょうか?」

「大丈夫! このゲームプレイヤーならコントローラーは必要ないから!」


「『キルムーンRPG』だっけ? ゲームセンターの奴でRPGって発想、新しいよな?」

「え? 九十九年前のゲームに何言ってんの?」

「そういう意味じゃねーよ!」



「取り付け作業、終わりました!」

「じゃあ早速始めようぜ?」

「どんなゲームか楽しみですね」

「ではスイッチオーン!」サユはプレイヤーの電源を押した。

 筐体の液晶が光り出し、三人は筐体の中へと吸い込まれていった。



「目覚めなさい、三人の旅人」

 白い大地に横たわっていた彼女たち三人は女性の声を聞いて起きあがる。

「私の名前はプルエ、この世界への案内人」

 彼女たちの前にいる女性は金色の髪をし、西洋の女神が着ているような服装だった。


「まるで現実みたいだな」

「これはテレビで噂にもなりますね」

「さすが私でしょ?」

「すごいのはハードだろ」

「そんなハードな!」


「三人の旅人? 私の話を聞いていただけないでしょうか?」

「あ、すみません。うちのミツコが」

「私だけじゃないだろ!」

「話しかけてきてくれるんですね、すごいリアル!」


「確かに本当の人みたいだな」

「実は本物だったりして」

「もうサユちゃん、そんな訳ないじゃないですか」

「だよね」

「あのー、聞いてます?」

「「「ハハハハハ!」」」

 ガン!「プ!」ガン!「ル!」ガン!「エ!」

 彼女たち三人の頭にたんこぶができる。


「まったくもー、あなた達、人の話を聞きなさいよー」プルエはプンプンと怒る。

「「「キャラ変わった!?」」」

「あなた達の為に神々しい雰囲気を出してあげてたんですよ。なのに無視するんですから、疲れるんですよー? 神々しいのは」


「おいサユ、これ本当にゲームの中なのか?」

「いや、私に聞かれましても……」

「大丈夫ですよー。ここは間違いなくキルムーンRPGの中です」

「だってさ」


「いやいや! ゲームの中の人がここがゲームって……!」

「私、このゲームの案内人ですしー、いわゆるメタキャラ?」

「そういうもの何ですか?」


「そういうもの何ですー。あ、そろそろ説明させて頂きますよ?」

「あ、はい。すみません、うちのミツコが」

「同じ事二度もやってんじゃねー!」


「あ、お二人の事はお気になさらず続けてください」

「……オホン、世界を魔物で支配しようとしている魔王を倒してきてください」


「……それだけ?」

「お好みの設定ではないと?」

「なんか良くある感じだよな」


「クレームは、制作者にお願いします」

「制作者さん、ですか? 生きているんですかね?」

「きっと、草葉の陰で皆さんが楽しむのを見てますよー」

「……死んでるじゃねえか! 嫌な話をするな!」


「……では楽しい話、皆さんには職業を決めてもらいます。まず勇者をやりたい方は手を挙げてください」

「はーい! はいはいはーい! 私やります!」サユが手を挙げた


「えー、おまえが勇者かよ」ミツコも手を挙げる。

「私に勇者はちょっと……」

「じゃあ、お二人には勇者らしくじゃんけんしてもらいましょー」


「じゃんけんが勇者らしいのかよ!」

「運も、実力のうちです」

「ふっふっふ、一人じゃんけんで鍛えたこの力! とくと見るがいい! カモンカモン!」

「ふん、後で吠え面をかくなよ?」


「はい、サユさんが勇者で決まりですねー」

「ハッハッハー! 見よ! これが勇者に選ばれる者の力だ!」サユはVサインをミツコへ突き出す。

「クッソー! グーにしておけば……」

「あっれー? ミツコちゃん、今にも泣きそうな顔してまちゅよー? どうしたんでちゅかねー? あ、じゃんけんに負けてくやちいんでちゅかー?」


「今からグーでも問題ないよな!」

「後出しはダメー!」

 ボガッ!「パー!!」


「では、勇者のサユさんには勇者の服装をしてもらいます」

 プルエは空高く人差し指を上げる。

「えいっ!」一気に振り下ろすとサユの体は煙に包まれ、煙が晴れたときには服が変わっていた。

 旅人用の服に身を包み、皮の手袋、皮のブーツを身に着け、背中には剣を携えていた。


「おぉ! 私、勇者だ!」

「まぁ、馬子にも衣装だな」

「いかにも冒険してますって感じですね」


「では次の職業。タララーン、呪文使いになりますー」

「魔法使う奴か、私よりマホの方が似合いそうだな」

「そうですね。運動は少し苦手ですし」


「では決まりですねー。えいっ!」

 マホの服が変わる。マントに杖、黒いとんがり帽子を被っていた。

「私の服、どうですか?」

「魔女って感じだね」

「似合う、似合う。次は私だな」


「はい、では最後の職業です。ダラララララ」

「自分でドラム音だして引っ張るな!」


「きっとスゴい職業なんだよ! 魔獣とか」

「魔獣ってなんだよ!」

「だって人間じゃないし」

「どういう意味だ、コラァ!」

「あぁっ! 獣の如き暴力が私を襲う!」


「ダラララララ」

「あの、プルエさん?」

「ダラララララ……」



「はい、ミツコさんの職業はなんと! 遊び人です! パチパチ」


「……は?」

「アハハハ! 遊び人て! ミツコちゃん遊び人って!」

「おまえは黙れ! 遊び人って何だよ! そこは戦士とか武道家とかだろ!」


「そういうクレームは制作者の方に……」

「だったら、なぜ引っ張った! さも『スゴい職業です』感をなぜ出した!」

「それはショボ……特殊な職業ですしー」

「ショボ、って言ったよな? ショボイのショボだよな!」

「いえ、そんな事は……」

「目を逸らすな!」


「まぁいいじゃない、遊び人。戦わないで遊んでていいんだよ? 私、勇者だけど」

「貴様ぁー!」

「そ、そうですよ! 落ち着いてプラスに考えていきましょうよ。ミツコちゃん」


「遊び人のプラスって何だよ! マホ!」

「え!? ……えっと、……遊んでていい、とか? ……そうですよ! 遊んでても親に怒られません! お勉強しなくていいんです!」

「いや、それはこのゲームの遊び人じゃないと思うぞ」


「あっと、そうでした。服装変えますねー」

「え? ちょっと待……」

「えいっ!」

 ミツコはピエロのような横にシマシマが入ったパジャマと赤く丸い鼻を着けられる。

「ウワッハッハッハ! 赤っ鼻が似合うよー! ミツコちゃん」

「ぬぅあ!」ミツコは赤い鼻をもぎ取ってサユに投げつける。

「トナカイ!」サユの顔面に当たる。


「あー! せっかくの衣装を壊さないでください」

「ふざけるな! 元に戻せ!」


「そんな事言われましても制服では世界観壊れてしまいますし」

「こんな格好より制服の方がマシだ!」

「まさかミツコちゃん! 『魔王の代わりに世界制服してやるぜ』みたいな……」

「ねーよ!」


「でも私もこの格好は女の子に厳しいと思いますし、元の制服でいいのではないでしょうか?」

「えー! それじゃ面白くないよ!」

「サユちゃん、お願いします。じゃないと直視できないので」ミツコの姿を見たマホは口元に手を寄せる。

「お前もか!」


「……まぁマホちゃんがそう言うなら仕方ないけど、ミツコちゃん貸し一つだからね! という訳でプルエさん、お願いします」

「んー、しょうがないですねー。今回は、特別ですよ。えいっ!」

 ミツコは元の制服の姿に戻る。

「よっしゃー! 戻った!」


「遊び人の能力はそのままなので心配しないでくださいねー」

「そういえば職業ごとにどんな違いがあるんですか?」

「私はあなた方をゲームに送り出すのが仕事なのでそういう事は実際に試してください」

「投げやりな送り出し方だな」

「そんな事言われても私もこのゲームの事は知りませんのでー」


「いや、おまえ登場人物だろ!」

「登場人物でも一般人が全てを知っている訳ではありませんしー。私はガイドなので一緒についていってあげますけど」

「あ、そうなんですか?」

「はい、一緒に魔王の野望を打ち砕きましょうねー」

「ではよろしくお願いします」


「んで、何をしてくれるんだ?」

「……はい?」

「一緒についてくるんじゃないのかよ!」

「ええ一緒について行きますよー」

 …………。

「それだけかよ!」

「それだけですー」


「まあ、いいじゃない! 皆で行ったほうが楽しいよ!」

「では目的も職業も決まりましたし、そろそろ行きましょうか?」

「よーし、勇者サユ! 世界を救いに行きます!」

「なんか始まる前から疲れた」

「どんなゲームか楽しみですね」



「では、皆さん。ようこそキルムーンRPGの世界へ」



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