光の世界1
「はぁ暇だ‥‥‥。」
一人の少年がため息をつきながら窓から外を眺めていた。その少年がいる部屋はきれいに片付いていてシンプルな感じだが家具や周りを見渡しても高級そうな物ばかりだった。
「なんか面白いことでもあればいいのに。ったく、こんな世界になんか生まれてこなけりゃ良かった。」
全てが丸く収まってしまうこの世界に事件などおきない。事件を起こそうとしているやつがいても事前にそれが見つかってしまう。なぜだか知らないけど。神によって守られているとは昔から聞いてるけどそれが本当なんだかどうだか。
「はぁ‥‥‥」
またため息をして窓から離れるとドアからノックの音が聞こえ扉が開き一人の女性が入ってきた。
「あら、まだこんな所にいたの?早く仕度しないと遅刻するわよ。」
「うん、わかったよ。母さん」
少年の母は穏やかに声をかけ返事を聞いたらまた部屋から出て行った。
(今日も退屈な一日の始まりか。)
「いってきます。」
玄関の扉を開きながら、家族に向かって少年は言った。
「いってらっしゃい。」
そして少年は学校へと向かっていった。‥‥‥と少年の家族は思っていた。
(今日はどこへ行こうかな?)
少年はいつもこうやって学校へ行くふりをしていろんな場所へいっている。それが家族にばれる事はない。学校は基本的に自由参加みたいなものなのでいつ行っても構わないようになっている。だから学校側と家のほうでの連絡等は全くない。昼間街中を歩いていたって知り合いにさえ会わなければ良いことだ。
「おはよう。」
「?!お、おはよう。ってまたお前かよ、ミア。」
少年はいきなり後ろから声をかけられたのでビックリした。その正体は同じ学校へ通う少女だった。
「今日もどこかへ行くつもりだった?」
「お前には関係ないことだろ。」
少女は少年が学校をサボってどこかへ行くことをよく分かっているようだ。
「いいかげん家の人に本当のこと言えば?それか今から私と一緒に学校へ行くか、どっちかよ。」
「どっちも嫌だね。」
そう言って少年は少女から顔を背け去っていこうとした。
「もう、ばれたって知らないんだからね。」
少女は最後にこう言って追いかけることも無く少年を見送っていた。
「‥‥‥うるさい女」
(いつもいつもあんなこと言って。実際あいつ家の人に俺のことばらしたこと無いんだよな)
そんなことを思いながら、どこかへ行くあても無くうろうろと歩いていた。そうして少年はいつもと同じ一日を送ろうとした。これからこの世界のことをもっと恨むようになることが起きようとは少年はまだ知らなかった。