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Othello  作者: sand
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闇の世界1

 外から聞こえてくる音は怒鳴り声や悲鳴。時には銃弾の音や轟音も。この世界に安全な場所などどこにもない。ここは闇に覆われている世界アポピス。この世界の治安はとても悪く力のないものはおびえ、隠れているか逃げることしか出来ない。

 路地裏に座り込んでいるこの少女も力なきものの一人。体は痩せ細っていてとてもやつれているように見える。隠れるように身を縮ませてパンを隠すように持っている。少女のいる場所の近くまで息を切らしながら走ってくる男がいた。

「あのガキ、どこへ逃げやがった?見つけたらただじゃおかねぇ。」

 そういって男はまた走っていった。どうやら少女はあの男の家からパンを盗んできたらしい。少女は男が立ち去ったのを確認してパンを袋にしまった。

「今日は上手くいった・・・早く持って帰らなきゃ。」

 そして少女はその場から立ち上がり急いで自分の家へと向かった。



「ただいま、セラ。」

 少女は家に無事に着き部屋の奥に横たわっている少女にむかって言った。

「おかえりお姉ちゃん。」

 閑散としたこの家はとても狭く寝るためだけのためにあるようなものだ。周りを見る限りこの家にはこの二人の姉妹しか住んではいないようだ。

「セラ、今日はパンを持ってきたよ。ちゃんと食べてね?」

 そう言って少女は妹にパンを渡した。

「お姉ちゃんはもう食べたの?」

 妹はうつむきながらパンを受けとらずに少女に尋ねた。少女はそれに答えず黙っていた。

「本当はお姉ちゃんいつも私にだけくれて何も食べていないんでしょう?」

「そんなこと・・・・・」

 やっと少女は声を出すことができたがちゃんと言葉にはできないようだ。

「それにいつも、そのパンだってどこからか盗んできているんでしょう?いつも怪我して帰ってくるじゃない。」

「そんなことない!」

 やっと少女はきちんと言葉にできた。だが、

「私に嘘はつかないで!」

 まさか妹がこんなに怒っているとは少女は思っていなかった。いつもは穏やかな妹がこんなに怒鳴ることは今までになかった。それに驚き少女はしばらく何も考えられなかった。

「たった二人だけの家族なんだから、私に隠し事はしないで。お願い。」

 妹は涙を流していた。妹はただ姉に隠し事をされていたのが嫌だったようだ。それに少女は気づき、

「ごめんね。私いつまでもセラには元気でいて欲しかったから。」

「私だってお姉ちゃんには元気でいて欲しいよ。だから今度からは私にだけって言うのは無しだからね。」

 少女はうなずいた。

「絶対に嘘はつかないでね。それと、危ないことはしちゃだめだよ。」

「わかった。」

 そうして二人は一つのパンを半分に分けて食べ始めた。いつまでも二人で仲良く貧しくとも暮らしていけると思っていた。だがそれが終わりになる日も刻々と近づいてきているのであった。

 

 


 

 

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