第十二話 レンゲルドの疾走
たいっへん遅くなりましてすみません。
少しずつでも更新しなければと思い、申し訳ないほど遅くなりましたがレンゲルド編更新いたしました。
とりあえず、レンゲルド編の下書きは終わっているので、手直ししつつ、更新していきたいと思います。
やらなければならないことはそれこそ星の数ほどあった。
まず、人脈をつくるために他の国への短期留学をすることを父にお願いした。
自国での人脈も当然つくらなくてはならないが、俺にはロンフィルと弟のヴィンがいる。
彼らは自分にとって唯一無二の存在であるし、彼らつながりで人脈をつくることができるため、ひとまず自国のことは彼らにまかせるとして、俺は他国にいき、様々な技術、学力、武力、帝王学などを学べるだけ学ぶことに専念した。
月日は光のようにはやく流れる。
俺は文字通り死にものぐるいでさまざなことを学び、吸収していった。
そしてそれと比例するかのように、俺は冷静沈着で冷えきった男という印象を人々に植え付けていった。
赤の他人とくだらない会話をする暇があるなら、ひとつでも多く国の成り立つ方法を学んだし、体を鍛えることに集中した。
自分を追い込めば追い込む程に、表情は固まったかのように無表情になっていった。
影で仮面をかぶったようだと恐れられても一向に構わなかった。
幸い、弟は自分に似ず、誰からも好かれるような性格だったし、表情もコロコロとかわり大変愛くるしいと様々な人間から好意をもたれている。
将来、この国の外交は弟に任せられると思えるほどに、弟は人との接し方をよく心得ていたし、頭の切れもいいことから周囲からの信頼も絶大であった。
普通ならば、ここまで自分より秀でた弟に対して嫉妬心などをもつのであろうが、俺に足りないものをもっている弟がいることを、俺は心の底から喜んだ。
自分に足りないものは、どうあがいたところで簡単に満たされるものではないし、あがくだけの時間など俺には惜しい時間であった。
その足りない部分を補ってくれる存在が身近にいるという奇跡。
これは、ヴィングリー国を将来安寧に治めるためには、必要不可欠な奇跡であった。
そのように割り切った考えができたのも、ひとえにヴィングリー国のメリットをひとつでも多く増やそうという考えで思考が埋まっていたからであるのだと考えると、自分の思考回路の単純さに少々苦笑いしてしまう。
そして、ある日、ついにその時はきた。
父が重い病気にかかり、倒れてしまったのだ。
ベットから起き上がることも困難になり、それを秘密裏に知った隣国の動きが比例するかのように怪しくなっていく。
状況はまさしく戦争の一歩手前まできていた。
そして、俺は病に伏した父からの命を受け
この国の王となった。
いまから、約2年前のことである。
そして戴冠と同時に両隣りの国からの襲撃を受け、祝福の宴などもないままに俺は戦争を収めるためにひた走ることになった。
俺には確信があった。
この戦争をヴィングリー国に有利な状態で終戦させることができれば、他の国から、俺は王として一目おかれることになる。また長年引き分けで終わった隣国との関係を変えさせることが出来たならば、ヴィングリー国の評価も上がる。
なにより、戦争に勝つことでヴィングリー国の貿易は盛んになり、ますます大国としての地位が築かれていくだろう。
この戦争は俺にとって、予想外にも願いを叶えるための踏み台になった。
できるだけ早く、できるだけ被害を出さずに戦争を終わらせるために俺はひたすら戦いの最前線にいき、直接指揮をとり、勝利をもぎ取っていった。
勝ち星が増えるごとに、俺に対する評価が高まっていくのを実感していった。
自国の民や、戦争に赴いた兵士達からの期待と信頼、他国からの感嘆と驚異がヴィングリー国をますます強く、大きくしていく。
そして、二年の攻防のうちにヴィングリー国は完全なる勝利をおさめたのであった。
これまで数百年と続いた隣国との対等な関係が、たった二年のうちにくずれさった。
これはまさに歴史的戦いとして、ヴィングリー国の歴史のなかに大大的に刻まれることになり、総指揮をした若き王の戦いぶりも、長年にわたって熱く語り継がれることになるのだが、俺にはそのことを気にする余裕はなかった。
ヴィングリー国がこの戦争で勝利をおさめたからといって、他の国との位置関係がどうなるのか不明なために、手放しで喜んでなどいられるはずもない。
これから、地道に他の国との関わりをつなげていくはずだったのだが、ここで、俺の計算は少し狂うこととなる。