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新しい勇者

結局、魔王が討たれたという知らせも、勇者たちが全滅したという悲報も、王城に届くことはなかった。彼らはただ、深い霧の向こう側へと吸い込まれるように、音もなく歴史の表舞台から消え去ったのである。


 数年の月日が流れ、人々の記憶から「かつての四人」の名が薄れかけた頃。

 王城のバルコニーには、あの日と寸分違わぬ光景が広がっていた。


 エドワード王は、新しく選ばれた「神託の若者」の肩を抱き、民衆の熱狂的な喝采を全身に浴びていた。王の頬を伝う涙は相変わらず清らかで、その震える声は、若者の献身を讃える慈愛に満ちている。


「君たちこそが、この国の最後の希望だ。どうか、生きて戻ってきてくれ」

 その言葉を聞きながら、傍らに控える老メイドは、銀の盆に載せた石鹸水を静かに見つめていた。彼女は知っている。


この後、王が部屋に戻るなり、どんな嫌悪感を露わにしてその手を洗うのかを。

 塔の窓から見下ろすお姫様は、父の演技を秒単位で予測し、冷めた溜息をつく。


 街の僧侶は、また繰り返される「人身御供」のために、心のこもらない祝詞を唇だけでなぞる。

 勇者たちが勝つか負けるかなど、この洗練された「統治のシステム」の前では、もはや些細な問題でしかなかった。


 大事なのは、定期的に「敵」を定義し、若者の「情熱」を消費し、王の「涙」という免罪符を民衆に配ること。それだけで、この国という巨大な歯車は、淀みなく、美しく回り続けるのだから。


 新しい勇者一行が城門を抜けていく。

 その背中を見送る王の瞳の奥には、祈りなど欠片も宿っていない。ただ、戦勝(あるいは敗北)をどう政治的に利用するかという、乾いた計算だけが、黒い澱のように沈んでいた。


 祭りのあとの砂埃が舞う街道。


 そこには、かつての勇者が落としたであろう古びたお守りが、誰に顧みられることもなく、泥にまみれて転がっているだけだった。

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