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第9話 魔の森からの脱出! そして辿り着いた城塞都市『グリム』


 ――翌朝。


 また夜が明ける前に目が覚めた。

 木の上で寝るなんて慣れていないからな。

 こんな不安定な場所で長時間の熟睡ができるはずもない。

 早く平らな所で寝たいもんだ。


 もう3日も風呂に入っていない。

 魔法の水で頭だけは水洗いしているが、それだけだ。

 歯も磨いていないし、口の中が気持ち悪い。


 奴らが持っていた食料を食えば、しばらく餓死することはないだろう。

 いざとなったら蛇肉もあるしな。


 だが、ここは魔の森という場所らしい。

 いつまでもこんな森で生活していたくない。

 早く森から脱出してグリムとやらに辿り着きたい。


 人間の集落に行けば、金が必要になるだろう。

 アイテムボックスから、奪った財布を取り出す。


 財布に入っているのは全部コインだ。

 札はない。

 コインには何かの模様が型取られている。

 色からして、金貨、銀貨、銅貨っぽいな。

 この鉄っぽいコインは鉄貨だろうか。


 まぁそうだと仮定して。

 金貨1枚、銀貨13枚、銅貨10枚か、鉄貨は32枚ある。

 結構あるな。

 この金があれば食い物にありつくことはできそうだ。


 明るくなってきたのを見計らって木から降りる。

 昨日寝る前に木の枝に引っ掛けておいたものは全部乾いていた。


 現地人の服に着替えていく。

 ベルトに巾着袋と皮財布、それに片手剣を吊り下げる。

 歩くと脚にぶつかって気になるが仕方ない。


 川の方向に向かって歩き出す。

 川に出る少し手前で曲がり、森の中を下流方向を進んでいく。

 魔物やら人攫いやらには遭遇しない。

 今日は順調だ。


 しばらく歩いていると、森の切れ目が見えてきた。


 やった! やったぞ!


 とうとう森を抜けた。

 森で目覚めた時には、どうなることかと思った。


 森を抜けると辺りは見渡す限り一面の草原だった。

 膝下まで草が生い茂っている。


 空は快晴だ、雲一つない。

 草原は森の中より少しだけ暖かいように感じる。

 風が心地いい。


 森を通っていた川が、今度は草原の中を流れている。

 森の中よりも川幅が広がっているようだ。


 その川から100メートルほど離れたところに街道がある。

 この街道を使ってグリムと魔の森を行き来しているのだろうか。


 その街道を歩いて行くことにする。

 街道といっても草を刈って土で固められただけの道だ。

 歩くとブーツが泥で汚れる。


 ――おや?


 大気中の魔力が薄くなった気がするぞ。

 確か魔の森にいた時の方が、もっと魔力が濃かったように思う。


 試しに川の方へアイスバレットを打ち込んでみる。

 ふむ、魔法には特に影響ないな。

 あまり気にする必要はなさそうだ。


 1時間も歩いた頃、遠くに何か構造物が見えてきた。

 段々近づいていくと城壁であることが分かった。


 城壁は右手を流れる川の端から、左に向かってずっと続いている。

 左の方は城壁の端が見えない。

 長さ300~400メートル以上はありそうだ。


 あれがグリムってとこか。

 思ったよりもずっと大きい街のようだ。


 城壁に向かって歩いて行くと左手に畑が見えてきた。

 街道沿いに程近い所で農作業をしている人がいる。

 若い男だ。

 農作業をやるにしてもボロボロの服を着ているな。


「やあ、ちょっと良いかな?」

「へえ」

「連れとはぐれてしまってな。

 街へ入るには何か手続きとかいるんだったろうか?」

「へえ。外のお人なら銀貨1枚かかりやす」

「ほう、なるほどな。助かった」

「いえ」


 あの街に入るには銀貨1枚を取られるようだ。

 ベルトに下げた財布には銀貨らしきコインが入っている。

 通行料は大丈夫だろう。


 農作業の男は黒人のようだった。

 俺のような日本人顔で怪しまれないだろうか。

 だが、行くしかない。

 例え怪しまれたとしても、問答無用で攻撃されることはないはずだ。


 周りを観察しながらゆっくりと歩いていく。

 城壁が近くに見えてきた。

 2階建ての一軒家よりも高い城壁がずっと先まで続いている。

 凄い迫力だ。


 道の先は門に繋がっている。

 門の少し横、城壁の内側に高い塔がある。

 塔の上に見張りがいるな。

 あそこから弓を射るのか。


 門の脇には門番らしき奴が2人立っている。

 2人とも槍を持っている。


 門の前まで来ると、門番から声を掛けられた。


「登録票は持っているか?」

「いえ、持っていません」

「そうか。なら通行料は銀貨1枚だ」


 財布から銀貨らしきコインを1枚手にとって門番に見せる。


「これで良いですか?」

「ああ、通っていいぞ」


 やはり、これが銀貨か。

 門番に銀貨1枚を渡すと、何事もなく通してくれるようだ。

 俺の日本人顔を珍しがられるようなこともなかった。

 この門を通る度に毎回通行料を取られるのか気になるが、折角怪しまれずに通れるんだ。

 そこは藪蛇をつつくところではない。


「ところで、この街はまだ慣れていないもので。

 お勧めの宿屋ってあります?」


 財布から銀貨をもう1枚出して、門番に渡しながら尋ねる。

 門番はニヤッと口角を上げて銀貨を受け取りながら言った。


「おう、宿屋か。門を入って大通りを真っすぐ行った広場に面したとこなら、どの宿屋でも間違いない。金は張るがな」

「ほう、そうですか。

 それなら広場に行ってみることにします」

「うむ。また何かあったら聞けよ」

「ありがとうございます」


 この世界は野蛮だ。

 こういうことは門番のような固い仕事の人間に聞いた方が良い。

 門番と仲良くなっておいて損はないだろうしな。


 門をくぐると、そこには異世界の街並みが広がっていた。

 いつか写真で見た中世ヨーロッパのような街並みだ。

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