第5話 サバイバル開始! 魔の森で遭遇した『巨大な敵』と初めての晩餐
地面には大きな樹木の根が埋まっている。
あちこちデコボコしていて歩きにくい。
湿った落ち葉が地面を覆い隠している。
落ち葉にクッション性があるのは助かるな。
なるべく音を立てないように足音に気を付けて歩く。
近くに危険な生物がいるかも知れないからな。
背の低い木の枝や葉が体に当たる。
上からは蔦のようなものがそこかしこに垂れ下がっている。
前方にマンホール型のアイテムボックスを出す。
常に収納発動だ。
体にあたりそうな障害物をアイテムボックスで排除しながら歩く。
定期的に目印つけるのも忘れないようにしないとな。
お、あの木の枝は良さそうだ。
近づいて拾ってみる。
長さ1メートル強ってとこか、木刀代わりに良いな。
アイテムボックスに収納する。
すぐに出せるように何回か練習してみる。
集中すれば手を入れた瞬間に掴めるな。
これなら咄嗟のことでもすぐに出せそうだ。
辺りの物音にも注意を払いながら歩く。
左右だけじゃなく、上の方も気にしている。
ないとは思うが、木の上から突然攻撃されるかも知れない。
たまに後ろを振り返って後方も警戒する。
どうしても歩みが遅くなってしまう。
時速4~5キロってとこか。
真っすぐに進めているだろうか。
樹海で迷ったらグルグル同じところを回ってしまうと聞く。
しばらく歩いているが、やはり動物が見当たらない。
この森には生息物が少ないのだろうか。
俺が見つけられないだけなのかも。
むしろ見つかるのは俺の方か。
大型の獣からすれば人間なんて格好の餌だろう。
もう2時間ほどは歩いたろうか。
結構歩いた割には、そんなに疲れていないな。
そろそろ我慢がきつくなってきた。
小便しよう。
今の状況では小便は貴重な水分だ。
アイテムボックスに入れて大切に保管しておこう。
想像するとオエッと胃に来るので、限界までは飲みたくはないが。
適当な樹木の傍に立つ。
アイテムボックスを程よい感じの位置に配置して、ズボンのチャックから一物を取り出す。
ふ~。
ずっと我慢していたから結構出るな。
「ガサッ」
ビクッ! なんだ!?
力を込めて無理やり小便を途中で止める。
静かにチャックを締めながら辺りを見回す。イテッ。
……あっちから音がした気がするぞ。
何かが動いた音だ。
音がした方向をそっと伺うが、何も見えない。
前方にアイテムボックスをシールド展開する。
もちろん収納は常時発動だ。
ゆっくり進む。
「シャー!」
うお! デカイ! 蛇か!?
突然、巨大な蛇が前方5メートル先の場所に現れた。
頭を上げ、垂直に立ち上がって威嚇している。
立ち上がった高さは俺よりも上だ。
巨大蛇を少し見上げる形になっている。
蛇の開けた口から巨大な牙が2本見えている。
デカイ牙だ。
あんなの見たことがない。
咬まれたら終わりだ、死んでしまう。
素早そうだ。
動きをみてからの防御では間に合わない。
アイテムボックスを薄く伸ばして広げる。
体を覆い隠すように膝上から胸の辺りまでをカバーする。
なかなか広がらない。
もどかしいが、命がかかっているから必死だ。
そうしている間にも巨大蛇が独特な動きで距離を詰めてくる。
俺は目を見開いて睨みつける。
動きを見切るんだ。
極限まで全神経を集中する。
――うお!
あと2メートルのところで巨大蛇が一直線に突進してくる。
俺は条件反射的に後ろに飛びずさった。
一瞬遅れて、ドンという音とともに蛇の胴体が地面に落ちる。
巨大蛇の頭部がアイテムボックスに入ったのだ。
自爆だ。
ピクリとも動かない。
死んでいるようだ。
一瞬の出来事だった。
呆然と立ち尽くして蛇を見つめる。
ドックン、ドックン……俺の鼓動が早鐘を打つ。
ふう、危なかった。
自爆してくれて助かった。
ドキドキしながら蛇を見つめる。
こんな大きい蛇は見たこともない。
太い所で直径20センチ以上ありそうだ。
体長は5メートル以上あったのだろうか。
だが、思った通りアイテムボックスは強力な武器になる。
俺はやれる。やれるぞ。
この世界で生き残るんだ。
ここは地球じゃない。日本じゃない。
ぶっ殺す。
躊躇すれば俺が死ぬだけだ。
俺に危害を加える奴は容赦しない。
蛇だろうが何だろうが、殺される前に殺してやる。
切断面から流れ出る血を眺めながら、俺はそんなことを考えていた。
――気が付くと辺りが暗くなってきた。
太陽は見えないが、もう夜になりそうだ。
地上で寝るのは危険だ。
木の上で寝よう。
豹のような肉食動物がいたら木の上でも危険だが、それでも地上よりはずっと安全だろう。
血抜きの終わった蛇は、アイテムボックスで適当な大きさに切断して収納した。
蛇なんて食べたくは無いが、よく焼けば食べられるだろう。
自衛隊の人も訓練で食べているんだ。
そう思うのだが、まだ食べる気にはならなかった。
やっぱり気持ち悪いし、なるべくなら食べたくない。
近くの大木にアイテムボックスで梯子を作り登っていく。
ちょうど良さそうな太い幹の上で、予め作っておいた蔦のロープを取り出す。
ロープを体に巻き付けて木に固定する。
寝ている間に落ちないよう幾重にも巻き付けていく。
寝ている間に襲われるとしたら、地上から登ってくる敵だろう。
自分の1メートル下方にアイテムボックスシールドを展開しておく。
こうしておけば地上から見上げた時の目隠しにもなるだろうしな。
あぁ、喉が渇いた。
唇がパサつく。腹も減った。
水が飲みたい。
水って魔法で出せないのか?
水道だ。
キッチンの水道をイメージしてみる。
浄水器のスイッチをオンにする。
レバーハンドルを上げる。
(クイッ)
蛇口から水が出るように、目の前で空中から水が流れ出た。
おお! やった!
両手に水を貯めて口に近づける。
いや、これ飲んで大丈夫なのか?
止まれと念じると水が止まるが、手に掬った水は消えていない。
出現した水が消えることは無いようだ。
飲まないと死ぬんだ。
どちらにしても飲むしかない。
水を出してゴクゴクと腹一杯に飲む。
あぁ、美味い。水が美味い。
助かった。これ浄水なのかな。
とにかく、これで飲み水の心配は無くなった。
このあと腹を壊さなければ良いが。
大量の蛇肉も手に入ったが、あれ食って腹壊さないだろうか。
文明的な食生活を送ってきた貧弱な胃に、異世界の巨大蛇なんて耐えられるのか……。
あぁ、眠い。
今日はハードな一日だった。
もう寝よう。瞼を閉じる。
こうして俺は異世界で初めての夜を越すことが出来たのだった。
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※【重要】本作の「R18版(完全版)」について
本作は「ノクターンノベルズ(なろうの大人版)」にて、過激な描写を解禁した
【R18完全版】
を連載中です。
ここではカットされた「リューイチとエルフたちの濃厚な夜」や「より容赦のない展開」は、そちらでお楽しみください。
★探し方★
ノクターンノベルズのサイト内で、
『おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~』
と検索すると出てきます。
(※作者名:「眠れる森のおっさん」でも検索可能です)
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