表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リリー&ラベンダーのルームシェア日記  作者: 綾小路隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

休暇明けの報告会

ロンドンの冬は、クリスマスの熱狂が去った後の静けさに包まれていた。

冷え切ったアパートのドアを数日ぶりに開けると少しだけ埃っぽく、それでいて懐かしい匂いがする。

リリーは赤毛を揺らしながら、お気に入りのクッションに顔を埋めた。


「ただいま、ロンドン! ああ、やっぱり自分の家のソファーが一番落ち着くわ。」

「もう、リリー。荷物を広げっぱなしにしないの。まずは紅茶を淹れましょう。」


後から入ってきたルームメイトのラベンダーが、金髪の癖っ毛を指先で整えながらテキパキと動く。

2人は並んでキッチンに立ち、温かいマグカップを手に取るとようやく一息ついた。


「リリー、毎年恒例のおばあちゃんの家での集まりはどうだった?」


ラベンダーの問いにリリーは緑の瞳を少しだけ曇らせて、ふにゃりと眉を下げた。


「……今年も出たの、シェパーズパイが。おばあちゃんったら、私が今でも大好きだと思い込んでて山盛りにしてくるの。でも、あんなに嬉しそうに『リリー、お食べ。』って言われると断れなくて……」

「あらら、お疲れ様。優しいリリーらしいわね。」

「でもね、嬉しいニュースもあったのよ。去年結婚した従兄のビルに男の子が産まれたの! チャーリーという名前で、抱っこさせてもらったら指をぎゅって握ってくれて……それから、パンジー姉さんに遂に彼氏ができたの! すっごく優しそうな人で、パパもママも大喜びしてたわ。」

「えっ、あの真面目なパンジーさんに? それはビッグニュースね!」


リリーは身を乗り出して、長年事務職をしてて堅物だった姉の照れくさそうな様子を身振り手振りでラベンダーに伝えた。


「あ、そうだ! オリバーからも写真が届いてたんだ。」


リリーはスマートフォンを取り出し、画面をラベンダーに向けた。

そこにはリリーの恋人でスポーツマンのオリバー・ワイルドが賑やかな家族に囲まれて笑っている姿が映っている。

オリバーの両隣にはゆるいウェーブがかかった金髪の双子の少女がいて、色違いのクリスマスドレスを着ていてまるで天使のようだ。


「見て、この子達がオリバーの姪っ子のペチュニアとデイジー。8歳の双子ちゃんで、オリバーにすっかり懐いてるの。」

「ふふ、本当に賑やかそう。オリバーも良いパパになりそうね。」

「もう、気が早いよ。」


灰色の瞳を細めて写真を見つめるラベンダーに、リリーは少しだけ頬を赤らめながら子供のように笑った。


「ラベンダーの方はどうだった? 実家の皆は元気?」


今度はリリーが尋ねる番だ。

ラベンダーは故郷での出来事を彼女らしい理路整然とした口調で話し始めた。

リリーの家のようなドタバタ劇は少ないものの、そこには大学生らしい充実した時間が溢れていた。


「結局、ずっと従妹の勉強を見てあげてた気がするわ。でも、ボクシング・デーには高校時代の友人達とパブで集まって楽しめて、良いリフレッシュになったわね。バイオレットがロンドンの大学で演劇を専攻してるんだけど、今度ウエストエンドの小さな舞台に立てる事になって皆で夜通しお祝いしたの。」

「いいなぁ、大人のクリスマスって感じ! 私なんて、未だにアーサー叔父さんに子供扱いされてお小遣いもらっちゃったんだから。」


リリーが唇を尖らせるとラベンダーは可笑しそうに笑い、「それはリリーが可愛すぎるからよ。」と姉のように彼女の頭を撫でた。


「それと、リリー宛てにお母さんから渡されたお土産があるわ。リーズの名物のジンジャーケーキよ。」


ラベンダーがスーツケースの底から丁寧に取り出した包みを差し出すと、リリーの瞳がぱっと明るくなった。


「わあ! ありがとう、ラベンダー! 明日、2人でアフタヌーンティーにしましょう! 素敵なティーセットを準備しておくわ♪」


窓の外では、ロンドンの街灯が静かに灯り始めている。

2人の報告会は、ポットの紅茶が空になってもまだまだ終わりそうにないだろう。

ボクシング・デーはクリスマス翌日の祝日(イギリス発祥)で、家族や友人と会ったりボランティア活動に参加したり、ショッピングやスポーツ観戦をして過ごす日です。

名前はスポーツのボクシングではなく、ボックス(箱)が由来。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ