不採用通知と温かい光
リリー・アンダーソン(26歳)
顔立ちや話し方は高校生ぐらいに見えるほど幼いが、いざという時は賢くて行動力がある。
ロンドンのインテリアメーカーに勤めている。
ラベンダー・スミス(21歳)
大学生で、リリーのルームメイト。
快活な性格でしっかり者。
ロンドンに住むリリー・アンダーソンはサラサラの赤毛に明るい緑の瞳を持ち、未成年にしか見えないぐらい幼い顔立ちをしている。
引っ越し等の様々な事情で新卒で入った会社を自主退職し、転職活動を始めたリリーは話し方も少し幼く、社会人としては少々心もとない印象を与えていた。
最初に面接に行ったのは、歴史ある照明器具の製造会社である。
面接官の穏やかな人柄と、案内された工場見学で温かい光を生み出す職人達の真剣な眼差しを見たリリーは「ここで働きたい!」と強く思った。
面接後に深々と頭を下げたリリーだったが……それから数日後、自宅の郵便受けに届いたのは冷たい1通の不採用通知だった。
「なんで……」
幼い顔を伝って涙がポタポタと床に落ちる。
あの温かい光を自分も作りたかったのに。
期待が大きかった分、リリーの悲しみは深かった。
その夜から彼女は毎日のように泣いた。
シャワーを浴びる時も、ベッドで寝る時も声を殺して。
リリーが住むアパートの一室には、ルームメイトのラベンダー・スミスがいる。
21歳の大学生であるラベンダーは、金髪の癖っ毛に涼しげな灰色の瞳を持つ快活な女性だ。
「リリー、いつまで泣いてるの? もう、あの会社の事なんて忘れなさいよ。」
ラベンダーはそう言って、リリーのベッドに座り込んだ。
「だって、照明の会社、本当にいい雰囲気だったんだもん。私、ああいう所じゃなきゃ働けない気がするわ……」
「そんな事ないって! リリーは明るくて頭いいんだから、どこだってやっていけるよ。ほら、明後日はインテリアメーカーの面接受けるんでしょ? 気持ちを切り替えなきゃ!」
「うん……」
ラベンダーにそう励まされ、リリーは顔を上げた。
2日後、リリーはインテリアメーカーへ向かった。
照明器具とは異なるが、人々の生活を彩るという点では共通している。
面接は照明の会社と比べてどこかフランクで和やかなムードで進み、リリーの少し幼い話し方もここでは『親しみやすさ』として受け止められたようだ。
それから1週間後、面接を受けたインテリアメーカーからの着信がスマートフォンの画面に表示されてリリーはドキリとした。
「もしもし……」
「リリー・アンダーソンさん、採用が決定致しました。」
その瞬間、リリーの頭の中では面接官の顔も会社のロゴも何もかもが吹き飛び、ただただ全身に鳥肌が立ち安堵と喜びの感情が爆発した。
「あ、ありがとうございます……! 頑張りますっ!!」
電話を切ったリリーは、部屋でレポートを書いていたラベンダーに駆け寄り、勢いよく抱きついた。
「ラベンダー! ラベンダー! やったよ、私、受かった!!」
「えっ、やったじゃん! おめでとう、リリー!! よく頑張ったね!!」
ラベンダーはリリーの細い背中を叩き、2人で飛び跳ねて喜び合った。
「これは、盛大にお祝いしなきゃね!」
ラベンダーはそう宣言し、その日の夜にリリーを高級なステーキハウスへと連れ出した。
「わぁ、すごい! これ、ラベンダーが奢ってくれるの?」
分厚く焼かれたステーキが目の前に運ばれ、リリーは目を輝かせた。
「もちろん! 不採用で泣いてたリリーを見てたんだから、これは私からの入社祝いよ。リリー、本当に本当におめでとう!」
「ラベンダー……ありがとう! いただきまぁす!!」
2人は赤ワインが注がれたグラスをカチンと合わせ、新しい門出を祝った。
そして、リリーの新しい社会人生活が始まった。
入社した会社は想像以上に働きやすい場所だった。
上司も同僚達もみんな穏やかで良い人揃いで、仕事で困っているとすぐに誰かが声をかけてくれる。
強烈にハンサムな顔立ちをした指導係の先輩は特に優しく、リリーの小さなミスも笑って許しフォローしてくれるのだ。
リリーは彼に教わる時間が密かに楽しみになっていた。
仕事内容は、主にインテリア用の布の裁断作業や簡単な事務作業。
体力を使う作業はほとんどなく、リリーの小さな体でも無理なく働く事ができた。
「リリーちゃん、これお願いね。」
先輩に頼まれた伝票整理の仕事をしながら、リリーは心の中で微笑んだ。
あんなに泣いた不採用通知も、今となっては遠い過去の出来事だ。
朝、ラベンダーに起こされて、少し眠たい目をこすりながら出勤する日々がかけがえのないものになっている。
彼女の新しい人生は、温かい光に満ちていた。




