戦争のニオイ
最近…地下街が慌ただしい。
情報屋をつかまえて聞いてみると
国境近くでもめ事があり…
どうも戦争が起こりそうな気配
俺はパーシモンとカタルパに相談してみた。
「おかしいな…今の時期に戦争なんて…
誰かが仕掛けているのではないか?」とパーシモン
さすが…
騎士団にいただけの事はある。
カタルパは目を輝かせて
「もしですよー
これが誰かが裏で手を引いているのであれば
その戦争でいかに儲けるかがポイントなので…
どこが兵糧や武器などを調達しているかがわかれば
それがビンゴです」
と一気にまくしたてた。
こいつ。
こういう謎解き好きだな。
◆ ◆ ◆
俺は二人と別れ情報屋に頼み。
お金の動きを探ってもらった。
行きついたのは
商人のガメツイ家
そしてここの裏にいるのが
ゼニゲバだった。
そしてガメツイが購入した
武器や兵糧などは
全てガメツイ家の倉庫ではなく
廃村近くの倉庫に搬入されていることが
わかった。
しかも…郊外の倉庫は別名義で契約されていた。
おそらく…
ガメツイ家の倉庫にいれると
謀反の疑いありとか
そういうのがあるので
値が高くなるまで待ってから
少しずつ市場に出す算段だろう。
俺はこのことをパーシモンとカタルパに伝え、こう聞いた。
「もし武器を盗みだしたら…戦争は起こるか?」
「実際売れないわけだから、戦争は起きないだろう」とパーシモン。
「私もそう思います」とカタルパ
「もしだよ。盗み出して保管するとしたら、どこが安全だ」と俺は聞いた。
2~3分沈黙になり
「騎士団の倉庫だろうな」とパーシモン。
「いや。それは安全だが…どうやっていれる?」と俺
「武器や兵糧などなら…
騎士団の倉庫に入れるのは自然だ。
書類を偽造するか…
聞いていないのか?と相手を攻めて、これ今日中に保管しないと、違約金がかかってしまう。払ってくれるんだろうなとか言われると…俺らは弱い。
安月給だからな」とパーシモン。
さすがリアルだ。
カタルパも
「それはありえます」
と言っていた。
そこで馬車を30台調達し
倉庫からどうどうと
武器や食料を盗みだし。
騎士団の倉庫にいれたやった。
書類を偽造するのは面倒だったので、
「聞いていないのか? これは今日中に保管しないと違約金がかかるぞ。払ってくれるんだろうな?」
と、強引に押し切る作戦に出た。
だが…神経質そうな門番が一瞬だけ怪訝な顔をして、
「今日の搬入は聞いてないな…」
とつぶやく。
パーシモンが即座に、
「そうだよな? “上が勝手に決めて現場に伝えてない”…いつものパターンじゃないか?」
そういうと…
「あーそうだろうな」
と…
納得した。
さすが…
パーシモン。
実際パーシモンがいうようにウマくいった。
なんせ
30台の馬車が行列を作っており
しかも中身は武器や食料なんだから
これは騎士団宛なのは
どう考えても
間違いではない。
そう思ったのだろう。
案外あっさりと通った。
ついでに
今日は迷惑かけたな。
と門番たちに1本ずつ
ワインをやった。
あっこれも。
倉庫にあったものだ。
それからしばらくして
あの荷物は誰のもんだと騒ぎになった。
そこで俺は騎士団宛に、「あれは匿名の寄付です」と一筆送っておいた。
いまは戦争の噂でどこもピリピリしている。
多少の怪しさがあっても、「ありがたく使っておこう」で済まされる空気だった。
◆ ◆ ◆
そして結局…
戦争の噂はなくなった。
その後ガメツイはどうなったかというと…
今回の戦争の賭けに全財産を投入していたようで
あっけなく破産
家屋敷もすべて失ったようだ。
ゼニゲバもガメツイに結構な額を融資していたようで
これも返済されず…
ゼニゲバの資金にもかなりの大ダメージを与えることができた。
自分が仕掛けたとはいえ…
ちょっと可哀そうかなとも思ったが
戦争を煽って稼ごうとするなんて
やっちゃいけないことでしょ。
と思うわけで
まっいっかとなったわけです。
「…まぁ、戦争を金に変えようとした奴が、平和のせいで潰れるってのも。悪くないオチだよな」