貴族達の洛陽
「誰が“見て見ぬふり”をしたのか?
誰が、地下の悲鳴に“耳をふさいだ”のか?」
闇賭博が壊滅した件で
王国は震撼した。
特に貴族屋敷の門前に闇賭博の連中の亡骸が
投げ捨てられたことで。
いろいろな憶測が流れてようだ。
通常の動きと違うと
やはり気になるのは
みんな一緒だ。
特に
なぜ闇賭博は、これほどまで放置されていたのか?
誰がそれを“黙認”していたのか?
この亡骸が投げ捨てられたことと
なにか関連性があるのではと…
多くの民衆が感じていたようだ。
まず
アホタレ家の関与は間違いがない。
しかし
アホタレ家が単独で行えるような
話なのか?
実はアホタレ家以外にも
まだ関与しているものがいるのでは?
という疑惑だ。
そんな世間の関心はよそに
俺は次のターゲット
”エゲツナ家について”
調べ出した。
しかし
最初に違和感を覚えたのは、情報屋の言葉だった。
「今回は、いつもの5倍で頼む」
リスクが大きすぎるってさ――
地下の情報屋がビビるなんて、今までなかった。
……どうやら、敵の空気が変わってきたらしい。
幸いまだ資金はあるし
150Gは先日の闇賭博から回収済みなので
5倍の料金でお願いすることにした。
すると
・取り調べの名目で拷問・暴行
・口利き代が横行→断った者は訴えを却下
・前科者への過剰監視・暴行
などの疑惑が出てきた。
この中で一番
問題が大きくなりそうなのが
口利き代だと踏んだ。
「訴えを通したければ“協力金”を」
「裁判を有利に進めたければ“感謝の気持ち”を」
という形で口利き代を要求されるらしい。
なぜ口利き代かだって…
そりゃ被害者の人数が一番多い可能性が高いからだ。
とまぁ偉そうに言っているけど
これは実はカタルパの提案
カタルパが曰く
「やっぱり金を払っていると、その家計簿だの、メモなどで、いつ誰に払ったみたいな証拠が残ります。逆に暴行とかだと…。病院にでも行っていない限り、証拠の部分が微妙ですし…
あと口利き代は被害者人数が多いのがいいですね」
だそうだ。
これには、俺もパーシモンも口をそろえて
「あーそうだな。おれもそう思う」
と言ってしまった。
そこで前回の作戦と似た作戦で
まず口利き代について調べる事にした。
この段階では主な金額+口利きを取った役人などをリスト化するのが主な目的だ。
ただ…
口利き代に関する証言をもらった数日後、情報屋が何者かに始末される。
情報屋の遺体は、地下街近くの路地裏で見つかった。
その痕跡を見ると――「これ以上、喋るな」という無言の圧力だった。
俺たちの動きが漏れているのでは……? そんな思いが脳裏をかすめる。
しかし怖がっている場合ではない。
次に
口利き代などないと、嘘だとビラを貼ることにした。
<流言注意>
最近、
「訴えを通したければ“協力金”を」
「裁判を有利に進めたければ“感謝の気持ち”を」
という形で口利き代を要求されるなどという噂がありますが、もちろん嘘です。
まさかそんな非道なことが、この国で許されるわけがありません。
――王国庶民啓発委員会
と…
前回同様のビラを貼ることにした。
このビラだと剥がすと、民衆がどういう反応を示すかわからないため
剥がす判断は難しい。
とのこと。
これを王国中に張りまくった。
しかし俺たちの貼った「流言ビラ」が、朝にはすべて剥がされていた。
代わりに「流言に惑わされるな。虚偽の情報には罰がある」と書かれたビラが、王国印つきで張り出されている。
……まるで俺たちの行動を“すべて見られていた”かのようだった。
まるで、手が届かないどこかで“目”が光っている気がした。
仕方がないので、土曜日の夜に張ることにした。
この国の役人は日曜日が休みなので、土曜日の夜なら剥がされないだろうと踏んだのだ。
するとこれが大成功で…
各町で問題となり各地の役所に質問があいついだ。
もちろんそんな口利き料は嘘だとなる…
つまり…今まで役人が嘘をついて口利き料を徴収していたことが明るみになったのだ。
怒った民衆は…
各地で暴動を起こした。
今回は地下の連中を使って焚きつけた。
俺たちは更に口利きを取った役人の名前とエゲツナ家について調べあげた。
やはり不正を起こしている役人のほとんどが
エゲツナ家の縁故だと判明。
もちろん俺たちは空気を読まずに、
このリストをまた土曜日の夜に、あちらこちらに貼ることにする。
これで更に炎上。
そして留めに…
エゲツナの悪事の疑惑リストを
王国中の共同井戸に貼ることにした。
・法の解釈を都合よく歪める(恣意的法運用)
・密室での“司法取引”制度の濫用
・不起訴特権/有罪判決の“選別”
・記録改ざん・封印命令
下の役人が口利き料の不祥事を起こし、疑惑までご丁寧に出てきては
もはや無視は不可避だった。
王や他の貴族たちも、「エゲツナ家を切り捨てねば、我らも火の粉を浴びる」と判断し、孤立化が決定的になった。
そして
マジカヨ家
アホタレ家
エゲツナ家
と
ゼニゲバ家の屋台骨3本のうち全てが折られたことになった。
ゼニゲバ家の屋敷では、連日深夜まで灯が消えなかったという。
貴族たちの会議は混乱を極め、“制御不能な民意”にどう立ち向かうか、答えは出なかった。