近衛騎士団の副団長が3股をかけていたので、空気を読まずに副団長の婚約者に伝えてしまった件
商人からペンと紙を買い…
俺たちはゼニゲバ家のとりまきの連中を整理した
エゲツナ家⇒司法
マジカヨ家⇒近衛騎士団
アホタレ家⇒税務
の3家にゼニゲバ家は支えられている形だ。
ちなみにゼニゲバ家は宰相で、実質この国を陰で支配しているとさえ言われる。
まずは
エゲツナ家
マジカヨ家
アホタレ家
の噂に関して調べることにした。
情報料は質にもよるが…0.5G~1G程度。
割と高めで取引されている。
ただ質の悪いものも多く、ほとんどは使えない情報だった。
ほどなくして。マジカヨ家の長男で近衛騎士団の副団長が、婚約者がおりながら3股をかけている噂が入ってきた。
いつもは冷静な騎士パーシモンはブチギレ
「女を泣かすのが騎士じゃない。女を守るのが騎士なんだ」
と憤慨していた。
どうも副団長のことは大嫌いみたいだ。
俺らはさらにお金を積み、
どこの誰なのか…
いつ会っているか…
すべて調べさせた。
一度変装して、地上に上がったが、3人とも手配書が張られており、何度かヤバイ目にあった。
地上に出て変装していたとはいえ、すれ違った兵士の一人が、ふと振り返った気がした。
背中にじっとりと汗がにじむ。…あれは、俺を見たのか?
夜間ならいいが…
日中はヤバすぎる。
◆ ◆ ◆
俺たちは地下街の人間を使い、婚約者に匿名で手紙を届けた。
ご機嫌麗しゅう、令嬢殿。
誠に僭越ながら、お伝えすべきことがございます。
貴女の婚約者、マジカヨ家の若君は、あなた以外に複数の女性と密会を重ねております。
その中の一人は○○、もう一人は××、いずれも住処・時刻ともに把握済みでございます。
愚かなのは、浮気ではなく、それを隠し通せると思っていたことにございます。
どうぞ、あなた様の正義におかれまして、裁きを。
――匿名の友人より
と…
あの手紙を受け取ったとき、婚約者の令嬢はどんな顔をしたのだろう。
眉をひそめたか、唇をかみしめたか、それとも、静かに頷いたか――
想像するだけで背筋が寒くなったが、それと同時に、何かが少しだけ進んだ気もした。
手紙を受け取った令嬢は、静かに目を伏せたあと、侍女に一言だけ告げたという。
「この婚約、父にお戻ししますわ」――と。
当然こうなると、実際調査はされるもので…
ほどなくして…
3股はバレ
家族間で問題になったようだ。
そこで俺は
副団長3股でフラれる――――騎士団中で話題
「あいつは下半身に脳みそあるからな」
と団員の声~
というビラを地下街の連中に頼んで
貼りまくった。
「副団長、下半身に脳みそ説」
と書かれたビラを手に、地下街の若者たちはクスクスと笑いながら貼っていく。
「へぇ、あの副団長がねぇ…そりゃあ面白ぇや」
――数日もせぬうちに、騎士団の連中の間で、この噂はちょっとした酒場の定番になっていた。
「誤解だ!あれは政略上の付き合いで――」
そんな苦しい言い訳が騎士団の廊下に響いたが、誰も耳を貸さなかった。
◆ ◆ ◆
貴族の結婚というのは、多くは
家の強化を目的に行われるものなわけで…
今回のように、
痴態騒動で家名に泥を塗られたとなると…
逆に敵対勢力が増えるもの。
ましてや今回の結婚は騎士団の中での
マジカヨ家の力を強くしようという
意図があっただけに…
その崩壊っぷりは強烈だったようです。
「あの人に命預けてたかと思うと、寒気がするよ」
「副団長の命令で動いた俺たちが、いちばん割を食ったな」
騎士団の控え室では、静かな罵声が飛び交っていたそうだ。
それは、忠誠という絆が音を立てて崩れていく音だった。
結果的に騎士団内のマジカヨ家の勢力は
完全消滅といえるほど、深刻なダメージを受けた。
副団長は辞任に追い込まれたらしい。いや、追放か。
マジカヨ家の屋敷の前には連日使者が訪れ、剣呑な空気が漂っていた。
地盤沈下の始まり――。だが、俺たちはまだ、外堀を埋めただけにすぎない。
とはいえ、これでまだ1本目だ。
貴族ってのは、思ってるよりもしぶといもんだからな。




