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空気を読まずに、貴族に文句を言ったら投獄された件

冒険者ギルドで飯を食っていると、ギルドの外で金属の擦れる音がした。

「シュル…」

振り返れば、陽光の中で、細身の剣が抜き放たれる刹那。

子供の肩がビクリと震える。

貴族の口元には、まるで虫けらでも見るような歪んだ笑みが浮かんでいた。


理由は子供がぶつかって、貴族の服が汚れたということだった。


この国は富めるもの。貧しきものの差が激しい。

貧困層の子供が貴族にぶつかったら、命を落としても…

文句は言えない。

そういう空気が作られていた。



子供は怯え泣きじゃくっているが、周りの大人たちは、目を伏せ、拳をにぎったまま動かない。

しかも当の子供の親までもが、子供をかばおうとしない…


あーこれがこの国の現状なのか…


胸の奥が、勝手に熱くなる。

頭では「関わるな」と警告するのに、口が勝手に開く。


「ったく…バカじゃねーのか?お貴族様とあろうお方が、こんな子供相手に剣を抜きやがって…。そんな暇があるんだったら…仕事しやがれってんだ…」


と思わず啖呵を切ってしまった。


「ああもう、言っちまったよ……」


空気がさーっと冷たくなるのがわかった。


ギルド全体が、一瞬だけ静止した。

空気が、凍ったように。

遠くの皿が一枚、カタリと揺れる音だけが響いた。


みんな下を向き、俺に目を合わそうとしない。


小さく

「空気読めよ」

という声が聞こえる。


俺は思わず

「空気なんて、そんなもの読めるわけねーだろ。透明なんだから」

と言った。


それを聞いた貴族は大笑いしながら

「ハハハハハ お前はバカか??? 空気を読むって言うのは比喩に決まっているだろう」


すかさず俺は

「じゃあ。その空気を読めって言うのは、何の例えなんだ」

という


「それは…」

と口ごもる貴族


畳みかけるように…

「いいか。答えてやろう。オレの言う事を聞け。それだけだろう」


「いや…それは…」

焦る貴族


「醜い醜い醜い。

どこまでも醜悪だ。


なにも与えず。自らは汗をかかず。なにも責任を持たず。

ただ口先だけで相手を支配しようとする。


お前の心はどこまでいっても醜い」


そう言い放ち…

俺はその場を立ち去ろうとした。


「な、なにを言ってるんだ貴様!これは、そう…そうだ!貴族への侮辱だぞ!」

焦る貴族は、言葉の棍棒で殴りかかろうとしたが、それすら空を切った。


「捕らえよ」


ドカ…


スーッと意識がひいた。


俺は貴族の従者に殴られて

気を失ったようだ…


◆ ◆ ◆


ふと…気が付くと

手が真っ赤だった。


手が震えていた。

あたたかい――いや、ぬるい。

その感触は、ただ生ぬるくて、怖いほど現実だった。


あれ…これは俺の手じゃない。小さな手…

あーそうか。


これはガーデニアの子供の頃の夢か…。


ガーデニアの目の前で、両親は命を奪われた。


いったい誰が両親の命を奪ったのか…

犯人の剣には何かの紋章がついている。

どこかで見たような…


思い出せない。



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