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誕生日

 人類は宇宙に進出した。だけど、宇宙人なんていなかったし、今では誰もそんな話をしない。大昔の妖怪とかと同じで、古典のフィクションの一つ。これを教えてくれたお父さんは太陽系外惑星開発組織の一員で、私はその娘。でも、そんなこと言われてもなんだかよくわかんないっていうのが正直なところ。

 4年ぶりにお父さんから通信が届いた。通信は特別な回線を使うせいで、一方向で、隅々までチェックされて、手続きも面倒で、だから送るときはレポートなんかの比じゃないくらいの量を書く。そのとき、キーボードと私が一体化する。安っぽい打鍵音の中キーボードを媒介にして私はパソコンへ移る。エリートサラリーマンみたいに手がスルスルになる。

 お父さんは、必ず最初に「誕生日おめでとう」って4回書く。4年間の遅れを埋めるみたいに。こんな不確かな時代でも、誕生日だけは確実に訪れるからってことなんだろう。私が進級してなくても、学校を辞めてても、歳は確実に取る。それが唯一の確定事項だから。

 私は「ありがとう」と最初に打つ。でも、次の通信の頃、私はまたここで「ありがとう」と書くだろうか?4年後の私は、もうこの通信を待たなくなっているかもしれない。それでも、お父さんはまた言うだろう。「誕生日おめでとう」って。

 わからない。未来も、過去も。でも、今の私はまだ、この言葉を返そうと思ってる。だから、今日は考えないで明日と明後日以降の私に任せることにする。ピクセルでできた五文字をしばらく見つめて、保存して、パソコンを閉じて、ベッドに横たわる。天井の模様を焦点が合わないまま見てるということを自覚せずに見つめる。

 お父さん、今何してんだろう。いや、そんなの別にどうでもいっか。おやすみ、お父さん。

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