彼女【前編】
この学校には、僕にしか聞こえない『音』がある。
毎日8時27分に登校して、16時6分最後に教室を出る。 「今日はどこにいるんだろう?」そう考えながら早足で歩いた。階段を登り始めた時、渡り廊下の方からやっと音が聞こえた。2階から3階まで階段を駆け上がり、渡り廊下の扉を勢いよく開けた。そこには、楽器を手に持った少女がいた。そう、彼女こそ僕が探していた人物だ。「今日は何を演奏してるの?」僕は息を切らしながら、彼女に話しかけた。「…」彼女が話さないのは最初からわかっていた。僕が彼女に会うのはこれが初めてじゃないから。
彼女に初めて出会ったのは3週間前。その日僕は、部員が1人になってしまったため廃部になった吹奏楽部の部室である、音楽室の掃除をしていた。15時から掃除を始めて1時間ほどだった頃だろうか。廊下の端にある準備室から楽器の音が聞こえた。僕は不思議に思い準備室へ向かった。全校生徒26人、教職員7名のこの学校で楽器を演奏できるのは僕しかいない。そして、今日準備室の鍵は一度も開けていないため、人が出入りできるはずがない。そんなことを考えているうちに準備室の前に着いた。中にいるのが不審な人物でないことを祈りつつ、僕は扉を開けた。そこにいたのは、赤い着物を着た黒髪の少女だった。あまりの美しさに見惚れてしまっていた。この学校の生徒ではないということをすっかり忘れて。少し時間が経ち我に返ると、彼女が手に持っている楽器にめが行った。彼女はなぜかユーフォニアム を手にしていた。僕が黙って彼女の観察をしていると、彼女が一言言った。
「あなたはなぜ諦めたの。」
初めて書いたものなので拙い部分もたくさんあったとは思います。読んでいただきありがとうございます!!続きが気になるような内容になっていましたか?