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包帯令嬢の恩返し〜顔面難病の少女を助けたら数年後美少女になって俺に会いに来た件〜【180万PV達成】  作者: 藤白ぺるか
第5章 高校生編

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267話 水泳授業

 学校のプールが水泳部以外にも解放され、ついに水泳の授業が開始されることとなった。


 男子生徒は女子のスクール水着姿に期待し、次の体育の時間を今か今かと待っていた。それは俺も同じで少しドキドキしていた。


 ただ、男子と女子は一緒に授業を受けるわけではない。それでも水着姿を見れることには変わりなかった。


 ホームルーム前には、既に中に水着を着てきているなんて話し声も聞こえてきていた。それだけ男子も女子も水泳が楽しみなようだった。


 そうしてチャイムが鳴ると、着替えのため、それぞれがプール専用の更衣室へと向かうこととなった。



 ◇ ◇ ◇



「わー、真空ちゃんスク水からでもわかる大きな胸〜」


 既に何度も更衣室での着替えで胸は見られているが、スク水の上から見られるのは始めてだった。

 そう感想を漏らしたのは、学園祭実行委員の黒州未来(くろすみらい)だ。


 体育祭を通して団結力が高まった一年C組。

 特に走ることが得意な真空は個人競技でも活躍は凄まじかったため、応援を通して今まで話さなかった女子とも会話するようになっていた。


「クラスの中じゃ一番大きい、のかな? ルーシーやしずはちゃんも結構なものだけどね」


 真空は目線を動かし、絶賛着替え中の二人に視線を送った。


「確かに……まだ一年生なのにその大きさ……大変じゃない?」

「うん、すっごく大変。体育祭でも皆に見られてる感じしたし」

「という私も多少はあるから、その気持ちはわかるけど」


 真空は既にスク水に着替えていた未来の胸に視線を落とす。

 自分よりも二回りほど小さい胸だが、それなりに大きい。真空はなんとなくツンと人差し指で未来の胸を小突いた。


「きゃっ。何!?」

「いい反応……」

「ちょっと真空ちゃん!? そういうのダメだよ?」

「ふふ。私、いつもルーシーたちに絡んでるのは見てるでしょ?」

「でも、それはそれ、これはこれっ」


 未来は思い出す。

 いつも更衣室で事あるごとにルーシーやしずはの胸を揉んだりしてしる真空の姿を。

 こういった女子同士でもスキンシップが激しいのが真空だった。


「女の子同士だからと言って、やりすぎはよくないよ」 

「はーい。今日は男子も楽しみだな〜」

「え、真空ちゃんってこのクラスの男子に興味あったの?」

「今のところ興味はないけど、面白いものが見られるかもよ」

「面白いものって……」


 真空は含む言い方をしながら、ニヤリを笑う。

 未来は眉を寄せるも想像がつかなかった。


「ほら、着替えたんなら、行こっ」


 長い髪をなんとかスイムキャップにまとめた真空は外のプールへと向かった。



 ◇ ◇ ◇



 プールはいつぶりだろうか。

 去年皆で行ったプールぶりだろうか。


 スク水は通常の水着とは全然違って色気はないが、その女性に魅力があれば、それだけスク水も魅力的に見えるというものだ……多分。


 外に出ると見えたのは、綺麗な透き通った色の塩素臭のする水の入ったプール。

 プールサイドに冬矢たちと一緒に腰を降ろし、授業が始まるのを待った。


 と、そんな時だ。

 女子たちが続々とプールに集まってきたのは。


「うひょー! 来たぞ!」


 と、落ち着きなく反応したのは野球部の坊主・家永潤太だ。

 彼の体は部活で鍛えられてはいるが、個人的にはちょっと細い。


「潤太。あからさまに反応するのはやめなよ。女子から変な目で見られるよ」

「だ、だってよ……あんなん見たらよぉ……」


 家永の発言に苦言を呈したのは、彼の中学時代からの友達である元野球部の堀川暖。


 聞く話によれば、小学生時代から女性教師の水着姿に興奮していたらしい家永。

 美人には目がない彼の性格は昔から変わらないらしい。

 本物の水着を見たら、どうなってしまうのだろうか。


「あっ……」


 そんな時、俺の視界に入ったのは、金色の髪をキャップに入れ、白い肌を露出させスク水を着こなしていたルーシーだ。

 一緒に歩いて来たのはしずはと深月だった。続いて真空の姿も見えた。


「うおおおおおお!?」


 再び家永が雄叫びを上げた。

 同時にクラスの男子もざわざわし始めた。


 ルーシーはこちらに気づくとふりふりと手を振ってくれた。

 俺は座りながらルーシーに手を振って返すと、同時にしずはも手を振ってくれた。


 良い。

 スク水が良すぎる……!


 やはり普段見慣れない姿というのは、どこかギャップというかグッと来るらしい。

 正直スク水というのは、学校指定だし、スイムキャップもあるしで、色気が出ないように思える。

 しかし、着る人が着れば、色気というのは出るものらしい。


 うちのクラスは全体的に可愛い子が多く、正直ルーシーたちが美人過ぎるだけで、他の子も結構可愛い。


 男子に人気があるのは、チア部の秋山亜希音(あきやまあきね)さん、学園祭実行委員の黒州未来(くろすみらい)さん、風紀委員の汐田玻璃(しおたはる)さん、中国人の周美鈴(シュウメイリン)さん、剣道部の千葉桃世(ちばももせ)さん、そしてこのクラスで唯一のギャルである瀬尾梓咲(せおあずさ)さんなど。


 これらのクラスメイトは、俺たちとは別のグループでよく男子とも会話していたりするため、もしかするとどこかで恋愛に発展するとかもあるかもしれない。


 一方でオタクっぽい印象を受けており、変わっていると男子の中では言われているのが、千影や麻悠や千歳さんにラウちゃん。


 ラウちゃんのだらけ具合は男子にも十分に認知されており、見た目の綺麗さは申し分ないのだが、ダウナー過ぎて恋愛対象にはならないらしい。


 そんな男子から見る女子でやはり注目されるのは、ルーシー、真空、しずは、深月、そして焔村さん。

 千彩都は開渡の彼女だともう知れ渡っているため、他の男子は変な目で千彩都のことを見れなくなっていた。


「確かに凄いな〜、スク水なのにあんなに可愛く見えるもん」


 そう呟いたのは、体育祭のリレーで一緒だったサッカー部の今原修。

 彼は体育祭を通して、以前よりも話すようになった一人だ。


「ルーシーちゃんのあんな姿、他の男子にも見られちゃってるけど、どうよ光流?」

「別にそういうこと少しも考えてなかったけど。ただ、可愛いなって思っただけ」

「ったくお前は……つまんねーの」

「逆に言えば深月はどうなのさ。皆に見られてるよ」

「うーん。あいつは大丈夫だろ」

「なんで!?」


 冬矢の茶化しを綺麗に躱したあと、逆に聞き返すと自信を持ってそう返された。


「俺以外にあいつの良さを理解できる男子がいると思えねえ」

「うわぁ……」


 どこから来る自信なのかわからないが、深月だってそれなりに人気はある。

 今はこのクラスでしか交流はないが、生徒数が多いこの学校は他クラスの生徒から声をかけられることだってあるかもしれない。


 と、言っても冬矢のアプローチに勝てる男子がいるとも思えないので、そこは安心しても良いとは思っている。


 そうしてチャイムが鳴ると、男女別れての水泳の授業が始まった。

 男性の体育教師と女性の体育教師がそれぞれに担当し、準備運動の後、まずはシャワーを浴びることとなった。


 シャワーを浴びたあとは、泳げる人と泳げない人に分かれることになり、泳げない人はビート板を使った泳ぎから。泳げる人は二十五メートルをクロールで泳いだりすることになった。


 俺は正直泳ぐことは得意ではないし、一年ぶりのプールなので、初心者として授業を受けることにした。



 ◇ ◇ ◇



「……真空ちゃん。もしかして面白いもの見れるって、あのこと……?」

「わかっちゃった?」


 更衣室で未来に話していたこと。

 それはすぐに理解することとなった。


 授業が始まり、男子女子で分かれて授業をすることにはなったが、女子も男子の様子が気になっていた。

 もちろん一番の注目はイケメンである佐久間有悟なのだが、それ以上に注目を浴びた存在がいた。


 女子が男子の方を見るなり、ざわざわし出したのがその証拠だ。


「九藤くん……てか真空ちゃんがなんで知ってるのかっていうのも気になるけど」

「それはなーいしょ。色々あるの」


 中学の時代にも似たようなことがあった。

 それは中学生にしてはあまりにも完成された光流の筋肉。その肉体美に目を奪われた女子たちがいたのだ。


 そして今回も似たようなことが起きていた。

 女子たちが一斉にざわざわした原因が光流の肉体だった。


「た、確かにあの体は……おかしいくらいに鍛え上げられてるけど……」

「私も最近までのことしか知らないけど、小学生の時から筋トレしてたみたいだよ」

「小学生!? 九藤くんは何になる気なの?」


 目を丸くして驚いた未来。

 普通に考えれば小学生から筋トレをする人などほとんどいない。本気で小さい頃からプロを目指してスポーツをやっている人くらいだろうか。


「九藤くんムキムキだぁっ」

「軽音部であの筋肉ってあり得るの? 確かに足は速かったけど……!」

「首から上と下が合ってないくない!?」


 色々な意見が飛び交うも、女子たちの話題の中心は光流の体だった。

 そしてそれを見ていたの中には、もちろんルーシーたちもいて——、


「あぁ……やっぱり光流の体って凄いんだっ」


 女子たちの話し声が聞こえてきていたルーシーが目をキラキラさせていた。

 私の光流が、と嬉しくなっていた。


「やっぱりって……あんた、いつ光流の体見たのよ」


 そう疑問を投げたのは隣にいたしずはだった。

 今のルーシーの言い方からして、明らかに以前にも上半身を見たと言ってもいいものだった。


「え、え〜いつだったかなぁ……?」

「喋りなさい! ……まさか変なことしたんじゃないでしょうねっ!」

「何言ってるの!? 変なことって……というかしたのは私じゃなくて光流なんだからっ!」

「光流が変なことをしたの!? やっぱりちゃんと話しなさい! この駄肉に聞けば良いのか!」

「ちょっとしずは胸掴むのはやめてよっ! 痛いよぉっ!」


 ルーシーが思い浮かべたのは、社交界の後、光流が家に泊まることになった日のことだ。

 なぜか光流が風呂場にいて、そしてあられもない姿を見られてしまった。

 見られたのはルーシーだけではない。その場には母親や二名の使用人に加え真空だっていた。


「大丈夫! あの時光流を殴ったから多分覚えてない!」

「どういうこと? 殴ったって……まさか、あんたも見られた!?」

「ち、違うのっ! あれは私だけじゃなくて、いっぱい人がいて……真空だって……!」

「嘘……あいつもいたの!? もう、どうなってるのよ……!」


 ルーシーは必死に弁明したが、徐々にボロが出てきて、結局はしずはにお風呂事件のことを暴露することとなった。

 しずはは光流に水着姿は見られたことはあっても、裸は見られたことはなかった。

 一歩先にルーシー……そして真空の裸すら見てしまっていたことに、謎の敗北感を味わっていた。



 ◇ ◇ ◇

 


 休憩を挟むこととなり、ちょうど木陰になっていた場所で休むことにした。


 すると、同じ場所で先に休んでいたとある女子が体育座りで佇んでいた。


「千歳さんお疲れ様」

「九藤くん……お疲れ様です」


 同じ図書委員の千歳あせびさんだ。


 スイムキャップを被っていても重たい前髪で目を隠していた千歳さん。

 そんなんで前が見えるのだろうかと心配になるも、今までこれで生活してきたのだから、多分大丈夫なのだろう。


「水泳はどう?」

「ええと、運動全般は苦手なので……大変です」


 図書委員の時に何度か話したが、千歳さんは小説が好きな文学少女だった。

 そのため、基本的にはインドアなようだった。

 だからスポーツや運動は今までもしてこなかったらしい。


「だよね。俺も陸上以外は大体苦手だから、苦労してる。やっとビート板で二十五メートル泳げるようになったよ」

「私なんて、ビート板すら……ですよ」

「そっか。足の力も結構いるもんね」


 と、千歳さんとゆっくり会話している時だった。

 巨大な影が突如現れたのだ。


 その影は徐々にこちらに近づくと、そのまま頭を倒し——、


「九藤、疲れた……」


 と、言いながら、俺に強制的に膝枕をさせてきたのだ。


「ラウちゃん!?」


 先日のことがあり、ラウちゃんはどこか距離感が近くなっていた。

 あの時釘を刺したつもりだったが、あまり響いていなかったようだ。


「う〜、水泳たいへん」


 スイムキャップを脱ぎ、ダークブロンドの髪を俺の太ももに広げたラウちゃんは仰向けになりながら、空を見ていた。


「皆に見られるからっ……」

「私のことは小動物か何かだと思っていい」

「小動物はちょっと無理があるだろ……」

「じゃあ大型犬」

「そういう意味じゃなくて……」


 ラウちゃんはこういった屁理屈が多い。

 ただ、何となく許してしまいそうになるのが、このふわっとした性格だ。


「く、九藤くんって、樋口さんと……」

「ち、違うよ!? これはラウちゃんが勝手に……っ」


 するとこの様子をすぐ隣で見ていた千歳さんが、変な勘ぐりをしてしまった。

 俺はすぐに否定したが、千歳さんは俺とラウちゃんの密着度を見て、少し顔を赤らめていた。


「千歳……お前も膝枕やるか?」

「私もぉ!?」

「千歳さん、ラウちゃんの言葉は真に受けないでいいよ」


 俺はため息を吐きながらラウちゃんの額にデコピンをした。


「いたっ」

「ルーシーに見られるからやめてよ。ほら起き上がって」

「もう少し……もう少しで寝れるから……」

「まだ授業中なんだけど……あ」


 すると、今の今まで別の場所で休憩していたルーシーがこちらを向いてしまった。

 そして俺と視線が交錯する。


 ルーシーは立ち上がり、ズカズカとプールサイドを歩いてきた。

 次いで同じく気がついたのか、しずはもルーシーの後ろをついてきていた。


「ひーかーるー!?」

「ちょっと待って! これ、どう見ても俺がやったわけじゃないってわかるよね!?」

「受け入れたなら光流も悪いに決まってる!」

「そうよこの筋肉バカ!」

「筋肉関係ないじゃん!?」


 ルーシーには俺も悪いことにされ、しずはには関係ないところで罵倒されてしまった。


「ほら、ラウちゃん。早く起きて!」

「すー、すー」

「どう見ても寝てないでしょ!」


 と、そんな時だった。


「えっ、ええええ!?」


 伸ばしていた足に突如重りが加わったのだ。


「ちょっと固いけど……」

「うーん……やっぱ太ももね」


 ルーシーが膝あたりに、しずはが脛あたりに頭を乗せて仰向けに寝はじめたのだ。


「ここ学校ですよ!? ヤバい! 男子も女子も見てる! 絶対ヤバいっ!」

「別に気にしないもん」

「私も〜」


 こいつら何を思ってこんな行動を……!?


「ラウちゃん! 君がこんなことするから……!」

「九藤の太もも気持ちいい」

「もうダメっ!!」

「「わあっ!?」」


 俺は三人の頭をそれぞれ掴んで足の上から地面へとどかせた。

 急に足を外すと地面に頭がゴツンしてしまうので、そうしないように優しくしたつもりだ。


「九藤、頭痛い。撫でて」

「撫でないよ」

「痛い〜」

「はぁ……」


 俺は観念してラウちゃんの頭を軽く撫でた。

 そうすると変な顔をされると思い、次いでルーシーとしずはの頭も撫でてあげた。


 それをするだけで、顔が少し赤くなり、満足そうな顔をした二人だった。



 授業後の更衣室では大変だった。

 男子たちに詰め寄られ、「お前だけなんで」という意味の肩パン大会が始まった。


 しかし俺だけが一方的にやられるのは嫌だったので、やり返していいならと承諾した。結果、大ダメージを受けたのは、クラスメイトだった。


「九藤くん……前言ったこと、覚えてるかな?」

「あ……遊びに行くって話?」


 着替え終わると、こそこそと話しかけてきたのはクラス一のイケメンの佐久間くんだった。


 彼とはリレーメンバーに誘う際に連絡先も交換した関係。

 その中で暴露されたのは、彼が子役だったこと。そして、友達になったことで、家に遊びに来てほしいという内容だった。


「夏休み、どこかで時間空いてるなら」

「うん良いよ」


 こうして、夏休みに佐久間くんの家にお邪魔することが決まった。



 ◇ ◇ ◇



 気温がグッと上がり、日照りも強くなった。

 宿題もあるが、ほとんどの生徒が勉強しなくても良いと喜ぶ夏休みがやってきた。


 そして、夏休みに入ってすぐのことだ。

 しずはが日本を発ち、海外のピアノコンクールへと挑戦しにいったのは。


 その一方で、俺はルーシーと約束していた富良野へと向かうこととなる。

 小さい頃、俺たちがラベンダー畑で会っていた日を再現するかのような二人の旅行。


 それをきっかけに、ルーシーのまだはっきりと思い出せていない記憶を取り戻すために、再びあの場所へ——。





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