髪が呼応する返事
意識が少しずつ鮮明にはっきりしていく。
手を握ろうとすればちゃんと握れるし、体をずらそうとすればちゃんと体もずらせる。
「先生、僕はどのくらい寝てた?」
「魔力枯渇の症状、まる3日じゃな」
「リアは?」
「ほれ見てみ?さっきやっと眠ってくれたぞい。今は大人しく寝させるのがいいじゃろ。」
「フローラ様は?」
「あの娘も主の薬と魔法でどうにかなったわい。」
「よかった…。」
僕は心から安堵する。
「主よ。流石に今回はやりすぎじゃ。反省せんとな。」
「だね。」
リアの髪を優しく撫でながら自分の失態を自覚する。
「先生。今後どうすればいい?」
「少なからずあのフローラと言う娘は現在進行形で呪われておる。つまり最低でも半年は治療は続けんといかん。それに呪いとは別に筋力もだいぶ落ちておる。体力面でも世話をせんといかん。」
「リハビリもやらなくちゃいけないかぁ。とりあえず運動させればいいのかな?」
「恐らくはな。じゃがなによりもリアの事が先決じゃ。」
先生はため息交じりに続ける。
「今回は目を瞑ったがリアとの絶対の約束破ってしまったからな。」
「だよね…。魔力枯渇だけは絶対にしないってリアと約束してたからね…。」
「仕方ないじゃろ。主が魔法を使えなくなった原因は自分だってそう感じておるのじゃから。」
「優しい子だからね。」
僕はそういいながら何度も何度もリアの髪を撫でおろす。
それに反応したのかゆっくりとリアは目を覚ます。
「目を覚ましたの!?アオイ、アオイごめんね。今回私のせいだ。」
僕に飛びつき今からでも大声で泣き出しそうな顔をしてるリアに僕は告げる。
「リア、君のせいじゃない。何度も言ってるだろ?僕がしたかったんだ。だから頼む泣かないでくれ。リアに泣かれたら僕はどうすることも出来なくなっちゃうよ。」
「ごめんね…。」
無言で大粒の涙を流すリアを受け止めて僕は静かにベットに横たわる。
ただ、ただリアが泣き止むまで僕は彼女の髪を掬う。
「とりあえず先生、フローラ様をまずは救わなくちゃね。」
「そうじゃの。」水
先生は明後日の方向を見据えながら静かに目を瞑る。
だから僕はリアの綺麗な黒髪を僕の手で手櫛として撫でると、羽の様に感じられ馴染む。ただそれだけを感じた。