怒り、泣き叫ぶ。己の後悔があるが故。
「先生、普通に今まで通り作ればいいんだよね?」
「あぁ、そうじゃ。世界樹の葉を媒体にして解呪をかけるんじゃ。
大きな水を張った鍋に世界樹の葉を一枚浮かばせ、全力で解呪の魔法を使う。
「ふむ。これで確かに解呪のポーションは出来たのぅ。」
「なら先生。あの子は助かるんだね?」
「主よ落ち着け。あの娘は現在進行系で呪われとおるといったじゃろ。つまりこの薬が体内に循環するには5分はかかる。お主の力じゃ5分という時間解呪の魔法を使い続けたらどうなるか…。リアにどう説明するんじゃ?」
「魔力枯渇…。」
「そうじゃ。確実にそうなるじゃろ。冷たい言い方になるが主は、この世界との繋がりは薄い。あの娘がいくら王族とは言え見捨てても誰も文句は言うまい。ならリアを優先すべきとワシは思うぞ。」
「それでもごめん。先生。眼の前の女の子を見捨てられるほど僕は非道に産まれてないよ。」
僕は先程案内された道を出来る限りの速度で逆に進んでいく。
(全くもって、いいや本当にお人好しの主よの。あって間もない縁もゆかりもない王族を助ける。ワシからしたらくだらない。ただ…。その考え嫌いじゃないぞ。ただリアは泣き続けるのもわかってほしいもんだがのぉ。」
「ジェリム卿!!!薬ができました。」
「こ、これがフローラ様を救える薬ですか?」
「はい!」
「なら今すぐ飲ませましょう!」
「全員立ち止まれぃ!」
先生の声がこの屋敷獣に広がる。
「先生、どうしたの?」
「主よ、少し冷静になって欲しい。この娘には解呪のポーションを飲ましたとしても体に巡回するのに5分かかる。その間解呪の魔法を加え続けなくてはいけない。まして見たことも話したこともない人間に胸に手を当てられて同様しない人間がいるか?」
「た、たしかに…。」
僕は先走っていた自分を恥ずかしく思った共に、この現状を打破するために深く考える。
「それなら私の娘のアリスが居ます。アリスならフローラ様と旨く意思疎通が行えるかと。今すぐアリスを呼んでくれ。」
この部屋にいる侍女達は慌ただしく急ぎ走り、取り急ぎ、フードを深くかぶった顔がよく見えない少女を部屋に連れ込んだ。
「お父様、お呼びでしょうか?」
フードを深く被る少女は問う。
「アリスお前に願いたいことある。このフローラ様の命を守ってほしい。」
色々僕は聞きたいことがあったが、今はまず優先すべきことはそれではない。
「アリス様と言うのですね。お願いがあります。今からフローラ様を僕の解呪の魔法で復活させます。アリス様にはフローラ様が混乱するこの現状に置いて、1秒でも早くこの薬を飲む説得をしてください。」
僕は勢いよく彼女に薬を手渡す。
その勢いの反動のせいか彼女のフードはめくり上がり、銀髪の髪の色の綺麗なストレートヘアーがあらわになった。
「ご、御免んさい。本当に申し訳ありません。お見苦しいものを見せてごめんなさい。」
慌てて彼女はフードを前よりも深くかぶり何度も僕に謝ってくる。
「お、お願いします。」
僕には彼女が何を言っているかわからなかったが、今はそれどころじゃない。
「改めて説明しますアリス様。今から侍女さんにお願いしてフローラ様を抱き起こしてもらいます。その感に僕がフローラ様の心臓、つまり胸を手を当てて解呪の魔法を施します。当然フローラ様は混乱します。だからアリス様には先程手渡した薬をフローラ様に飲む異様に説得してください。」
「この薬をフローラ様に?」
「はい。恐らく時間もタイミングもこれで最後になります。だからアリス様僕を信じてフローラ様の説得お願いします。」
「準備はいいですか?では、いきます…。解呪!」
再びこの部屋全体を包み込む淡い光は、部屋全体を撫でるように広がる。
「こ…こ…は一体…ってあなた私を誰だと思って…私はフローラ=シュバルツ、王家の人間です。それが見ずも知れぬ人間が…。いえ王家関係なく女性の体…胸を触るなど極刑です…。今すぐあなたを…」
「フローラ様!!!今はすべてを飲み込むのは大変だと思います。ですが、どうかお願いです。この、この薬をお飲みください」
「あ、アリス?ってどういう事?ってかこの無礼な男は誰?まずはこの男を牢に差し出すべきじゃないの。」
「どうかお願いです。フローラ様。今は私を信じてこのお薬をお飲みください。」
「な、なんかわかんないけどアリスがそこまで言うなら…。ってこの薬くっそ不味いわね。言われた通りアリス飲んだわよ。それによく見ればジェリム卿じゃない。久しぶりね。んでこの変態は私の胸で何してるわけ??」
僕の全体の力が抜け落ちるのが分かった。
更に意識が白濁になっていくのを感じた。
「主。やはり魔力枯渇起こしたか。リアまずは落ち着…。」
「いやああああああああああ…。」
リアの悲痛の叫びはこの室内全体で木霊し、反響はやまびこの様に繰り返して打ち消される。
意識を完全に失う前にリアの顔が思い浮かぶ。(リア僕は大丈夫だよ?僕はいつも君の傍に居るから…。この言葉届くかな、届くといいな…。」)
「リア、落ち着けただの魔力枯渇じゃ…。主の命に別状はない…。」
珍しく慌てた大賢者は怒鳴り声をあげる。
「嫌だ。嫌だ。嫌だ。二度とあんな思いさせちゃいけない。アオイ約束したじゃない。一生魔力枯渇しないって。私のせいだ。全部私がいるせいだ。私と言う存在がアオイを傷つける、パスが切れてる。だから!!!」
「落ち着けリア!!!一先ず主は大丈夫だ。おい!!!今すぐリアを落ち着ける場所に移動しろ人間。嫌とは言わんぞ人の子よ。」
「取り合えず眠らせる魔法を掛ける。だがわかってるな?手出しは絶対するなよ?それこそ王族以上に低調に扱え。ワシこの国を程ぼされたくなかったらな。」
「わ、わかりました…。。。」
慌ててジェルム家当主は支度を始める。
「こ、これは一体どういう事なの?アリス。」
当然の様に第三王女は訪ねる。
だがアリスは告げる。
「私にもわかりません。ただフローラ様を救ったこの方達にに何かあったそれが事実です…。」