眠り姫。
「先生、見るからにして高価な馬車だよね」
森の大賢者、基先生に尋ねる。
「そうじゃの、恐らく貴族じゃと思われる。」
「き、貴族!?」
僕の頭は思考が停止する。
「あのさ、向こうの世界で一般人だったから貴族とかよくわからないんだけど…。ぶっちゃけ貴族って何?」
「ふむ、主にわかりやすく言うとな…。」
先生は淡々と続ける。
「この国には位があるんじゃよ。庶民の上の位。男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵この5つが俗に言われる貴族じゃ。」
「さらなる上が王族じゃ。」
「じゃあブラットムーン家ってのは?」
「公爵家じゃよ。」
「はぁ?それってめっちゃ偉い人だよね?」
「まぁ偉いか偉くではないかで言うと、すごく偉い立場じゃな。」
「ぼ、僕何かやった?この国で回復魔法とか禁止なの!?」
「いやそれはないじゃろ。ただ、ワシにもわからん。」
リベリオンの街から離れて2日かけてブラッドムーン領に要約到達した。
「お館様をお呼びしますので、しばしお待ちを。」
彼はそう残してこの大きなただ住まいの一等地を前に、僕達を残す。
「先生、無理無理無理、それにリアも俺には無理だって。貴族とどう接していいか解らないって。」
「なるようにしかならんよ。」
先生は僕の悩みを笑い飛ばかの用に言う。
「お初にお目にかかります。ジェリム=ブラッドムーンと申します。」
その紳士的姿に僕は目が参りそうになった。
僕は貴族とのやり取りがわからないが、この人の膝をつかせていけないのだけはわかった。
「頭を上げてください。ブラットムーン公爵。此度は何用で平民の私を?」
真実を打ち明ける。嘘偽りない真実だ。
「偽りなく貴方達にお願いを申し上げます。こちらへ。」
彼に通されたのはとある一室だった。
「この子を。いえ、この方を助けていただきたい。」
公爵は自分の呼気を押し殺しながら、震える声で僕達に縋り願う。
「フローラ様を助けてくれませんか?」
フローラと呼ばれた少女は目の前で安らぎを得たように眠る。
見目麗しい少女は…。ただ。ただ死んでる様に眠り続けている。