始まりの少女
「くっそこれまでなのか」
綺麗に整えられた金髪の中年の男が勢いよく拳を机に叩きつける。
「なぜだ?なにが?この子を苦しめる?この子を死に追いやる?」
何度も、何度も拳を机に叩きつけながら男は怒鳴り叫ぶ。
「お、お館様ー!!!!」
慌ててその男の部屋に慌てて入ってくるその人物は、着飾る服からして身分の高いことが伺える。
「なんだ?私は今気が立っている。残された時間は少ない、だがそれでも・・・!」
男の語気はひどく強く吐き捨てており、周りの空気を全体的に冷めさせる。
「報告します。最近追外都市、リベリオンに置いてどんな怪我や病気も治すという謎の子供二人が居るそうです。」
「はぁ?子供だと?今この状況において冗談など、貴様の首が飛んでも笑えぬ冗談を申すか?」
男は相当気が立っているのか荒々しい目つきで部屋に入ってきた男を睨みつける。
「冗談ではありません。ある者は片足を失っていたにも関わらず歩ける様になり、ある者は死にゆく病で床に伏せっていたにも関わらず翌日から街中で踊っていたそうです。」
「貴様言うに事欠いてまだそんなふざけた盲言を続けるか!!!!」
再度男は机に思いつく限りの衝撃を与える。
それは後悔や無念、苦渋と言った人が触れるにはとても夥しい感情が渦巻いていた。
だが部屋に入ってきた男はその感情を払い除けるように続ける。
「お館様。この国の有能と呼ばれるすべての錬金術や聖職者にあの方は無駄だと言われました。でもその子供達は看板にこう掲げているそうです。」
「どんな病も怪我も必ず直します。」
男は大きく振りかぶり拳を寸前に机の手前で止め言い放つ。
「その話本当なんだろうな?」
「は、はい。私が聞いた話では。」
「ならばすぐに連れて参れ。急ぎだ。早急に何があっても。もはや時間がない」
その言葉を聞いて部屋に入ってきた男は一目散に部屋から飛び出して行った。
「分かっている。こんな奇跡は…。あり得ない。だが縋りたくもなるだろう。私はあの子救いたい…。それが不可能だとしても…。」
男の拳は悲しみを告げるように小刻みに机と共に震えていた。