癒やしはすぐ横に
「リア大丈夫?」
肩を抱き寄せながら僕は静かに彼女を近づける。
「大丈夫だよ。それより無茶だけはしないでね。」
リアは僕に向かって優しく笑う。
彼女は「リアテイン」、僕がそう名付けた名前だ。
僕たちにはまずやらねばならいことがあった。
この世界に来て僕たちにまず初めに課せられたのは人としての責務、食事である。
当然タダで食事にありつけるわけもなく、目下の課題は食料品の調達だ。
だから僕たちはこの風化した街、「迫害都市、リベリオン」にて回復屋をしている。
この世界の通貨は地球にとても似ている。
銅貨は10円、銀貨は100円、金貨は千円、白金貨は一万円。
僕が出来るのは聖魔法と呼ばれる回復魔法、それを金貨1枚つまり地球で言う千円でこの街の住人に施すことで食事時にありつけている。
この世界には医療という概念はない。
あるなら錬金術と呼ばれるポーション薬と聖魔法と呼ばれる回復魔法が主体だ。
僕は魔法が使えない。冒険者と呼ばれる魔物を狩る者達になれれば命を代償に代金を得られたかもしれない。
だが僕は剣術は疎か体術も棒術も槍術も更にも魔法も扱えない。
つまり無能である。
だけど、悲しいことととるべきか、嬉しいことととるべきかここの世界では珍しい、回復魔法だけは使えた。
「そんな悲観的な顔しないの!アオイは魔法が扱えないんだから仕方ないじゃない」
リアが優しく僕の手を取り微笑む。
「それにほら?皆喜んでるわよ?」
リアが首をやった先には皆嬉しそうな顔をして感謝の言葉を述べる。
「そうだね。それもそうだ。」
僕はただ、ただ目の前の足の不自由だった女性が歩けてる姿安堵する。
「リア、いつもごめんね。ありがとう」
「こちらこそ」
彼女は律儀に頭を下げる。
僕は多くは望まない。この時間、この世界をただ、守りたいそう願うばかりだ。