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キャリーと不満

 やってきたのは先ほどコルトと討伐クエストをクリアした砂漠地帯なのは一緒なのだが、今回受注したのは大型ナイトメアの討伐で、私はまだクリアしてないどころか受注もしたことすらないままにしていたものだった。


「確かに、フラウさんのその装備じゃあいつに確実なダメージ与えられないから、長期戦になって集中力とか弾薬とか使い切っちゃうパターンになっちゃいますからねぇ」

「うんうん、だけど今回は俺らがバンバン大ダメージ入れてあっという間に終わらせちゃうので安心してください」

「にしても俺らどんどん上のランクのクエスト受注受けてたから、このランクのクエスト懐かしく感じるなあ」


 私をパーティーに誘い、未消化クエストを手伝うと言ってくれた三人の同じクランメンバーの男たちに適当な愛想笑いを浮かべながら、手に持ったマシンガンのグリップを握り込んでいた。

 そこで地響きが起き、少し先に見える砂丘の頂上が吹き飛び中から目的の大型ナイトメアが現れて唸り声を上げる。


「きたきた! よっしお前らサクッと終わらせるぞ!」

「おうっ!」

「オッケー!」


 私が銃を構えて相手の動きを見極めようと、距離に注意しながら慎重に接近していくのに対して三人は威勢よく声を上げ手持ちの武器を乱射、ナイトメアはその銃撃を全身で受けたまらず仰け反り後ずさりするが、体勢を立て直し三人のいる場所へ駆け出す。

 そのナイトメアは巨大な牛の姿をしており、角はねじれて歪な形のまま伸びつつ先端だけは槍のように真っ直ぐに伸びていて、生身で食らったらひとたまりもないことは容易に想像出来る。

 しかし男たちは牛が突進してきているのに逃げようともせず、メニューを操作して武器を持ち替え瞬時に現れたのはグレネードランチャーだった。


「そら、食らいやがれ」


 男たち三人は、同じそれに持ち替え一斉に全弾を角目掛けて打ち込んでいき、集中攻撃により角が砕けへし折れ痛みのあまり牛、は走った勢いのままバランスを崩し砂の上に倒れのたうち回る。


「フラウさん、攻撃攻撃!」


 三人の戦い慣れた姿を呆然と見ているしか出来なくなっていた所に、声をかけられ慌てて手持ちのマシンガンをのたうつ牛に銃弾をフルオートで叩き込んでいく。

 やがて体力を削り切ったのか牛は、ロクな攻撃パターンも見せることなく蹂躙され粒子となって消えていったのだった。


「このレベル帯でさすがにこれは反則だな」

「確かに、最初こいつと戦った時はひたすら出来る限りのカスタムしたマシンガンで削り切って倒したっけなぁ」

「俺は、怖かったけど懐にショットガン持って飛び込んで一発一発確実にぶち込んで倒した」

「うわあそのやり方スリル満点じゃん! 俺ならやらねえわ絶対」


 私の事など忘れたかのように、過去の自分たちの攻略法を披露しあって談笑しあう男たちをぼんやりと眺め、ため息を一つ吐くと三人に向かって声をかけた。


「手伝ってもらってありがとうございました。 今日はこの辺で落ちますのでまたー」


 声だけかけて三人が振り返って挨拶をしようと声を上げる前に、メニューを操作してログアウトした。

 視界が戻ってムクっと起き上がると、ベッド脇に座らせてある結構大きな熊のぬいぐるみに向かって勢いよく右ストレートを叩き込み、低い声で呟く。


「なんなのよ。あれじゃあのナイトメアがどういう動きをしてどういう攻撃をしてきてどこにいると攻撃が躱し易いかとか全然わかんないじゃん!……自分たちの装備自慢したいなら他所でやんなさいよ!」

 

 吐露される不満、これがクランメンバーとパーティーを組まずにソロプレイでクエストに挑んでいた理由である。その後も何発もボテッとしたぬいぐるみの腹に渾身の拳が叩き込みながら先ほどの三人に対する不満をぶちまける。

 

「私はじっくり装備をあれこれとっかえひっかえして、レベルも出来るだけしっかり上げて、モンスターもじっくり観察してから戦って勝ちたいのよ。 あんな高ランク武器の火力で楽に勝ったってぜんっぜん面白くないのよっ! あんなの手伝いでもなんでもない、私が逆に寄生しているみたいじゃんかぁ……ああもう!ぐぬぬぬぬ」


 殴るのに飽きたので、今度は手に持ってぬいぐるみの首に腕を回しヘッドロックを決める。

 それからしばらくぬいぐるみに対する虐待は続いたのだった。

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