集会
クエストを終えて初期拠点へ帰還したフラウ達の元にメールが届いているのに気づき開いてみると所属するクラン『栄光の翼』のリーダーであるレオンから新規メンバーの顔合わせをしたいとの内容だった。
「また増えたんだメンバー……これで三日連続だよ?」
「勧誘熱心なのを悪いとは言わないけど、一気にこうも増やされると名前と顔とか全然覚えらんないよ」
「まあ、私を勧誘した時に沢山のメンバーとパーティーを組んで沢山クエストをやったりクラン内のイベントとかもしていくから! みたいな事言ってたからねえ」
「うーん、まあそれを楽しそうだなって思って入ったんだけど、ここまで毎日毎日増えてくると、なんだかなーって正直思うわけですよ」
コルトは頭の後ろで腕を組み空を見上げながらぼやく。フラウもまさかここまでのハイペースでメンバーを勧誘していくとは思っておらず短い間にクランメンバーは相当な人数に膨れ上がっている事に不安を覚えていた。
「とりあえず、行ってみようか」
「はいよー」
二人はメニューを開いてクランメンバーだけが利用できる専用の拠点に移動を選択しそれぞれ光に包まれ瞬時に向かう。
光に包まれやってきた二人を出迎えるのは収容人数が一体何人か分からないが軽く百人は入りそうな巨大な天幕を張ったテントのクランルームだった。ちなみにクランルームは専用の素材などを集めたりしてカスタマイズが可能で家のような建造物から自然の洞窟にテーブルや椅子を置いただけのような物まで様々プレイヤーが好きなように変えることが出来る。
「このテント畳む時凄い大変そうだなって来た時に思ったの私だけ?」
「言われてみれば……」
コルトが巨大な天幕を見上げながら言うのに釣られてフラウも見上げながら答える。
そんな二人がやってきたのに気づいて声をかける者が居た。
「やあ、二人とも。 よく来てくれたね」
声をかけてきたのはフラウ達のクランリーダー、レオンだった。アバターは金髪碧眼の絵に描いたような理想のイケメンで服装は野戦向きの動きやすさ重視の迷彩柄の長袖長ズボン、腰に下げたアサルトライフルをメイン武器にしており、ここのところクエストよりもクランを肥大化させることに熱心で殆ど毎日数人が加入していてフラウとコルトは正直分からない人だらけになりつつある自分たちのクランルームには足が向かなくなっていた。
「ここにメンバー全員集まるなんて初めてですよね?」
「うん、結構な人数が入隊してくれたから一旦顔合わせしておこうかと思ってね。 一度も顔を合わせてない人も結構いるだろ?」
フラウの質問にレオンが集まっている数十人のクランメンバーを見渡しながら答える。 それに釣られて目をやると、フラウが加入した頃の人数の3倍近くに膨れ上がっており呆然とするフラウ。
「ありゃー、こんなに増えてんだ」
コルトもフラウの隣でそれぞれ椅子に座っていたり立ったままで談笑している様を見ながらタジタジといった様子で呟く。
「二人とも、入って空いてる席についてくれ。 第一回ミーティングを始めるよ」
そう言ってレオンは二人の背中をそっと押しながら空いてる席に座らせ自分は天幕の端に一個だけ置かれているドラム缶を皆の前に移動させその上に上り手を叩いて視線を集める。
「はぁ。 この人数全員覚えられる自信ある?」
「全くないよ」
コルトに耳元で囁くように聞かれ、フラウも周りに聞かれないように小さな声でコルトの耳元で答えた。そんなげんなりした二人の心情など知りもせずクラン『栄光の翼』のミーティングは始まったのだった。