クエスト出発
ゲームにログインしてから何処の拠点からスタートするか自分が辿り着いた拠点の中から選べる事が出来るのだが、さゆりは新規に始めた時に訪れる事になる初期拠点に設定したままにしてあるのだった。理由は特にないのだが一番滞在した時間が長いからなのかそれとも受付やガンショップの店主やら銃器のレクチャーをしてくれる教官、それらNPCが殆ど女性で、さゆりが話しかけやすいのが強いて言うならそれが理由になるだろうか。
「さぁてと、今日は何処に狩りに行こうかなっと……」
大きく伸びをして身体を解してから討伐系ミッションを受注しようと街の中心部から少し離れたクエストカウンターに向かって歩き出す。
このゲームは基本的にはナイトメアと呼ばれる化け物を討伐して経験値、金を手に入れ銃器、防具を買い揃え更なる強大な敵を他プレイヤーと共闘して戦おうという大まかな流れがあるのだが、それとは別にこのゲームが注目されている理由がある。
それは他プレイヤーを殺しても経験値や金が手に入るシステムが採用されているという点だ。 ナイトメアと戦っているプレイヤーを後ろから奇襲して殺し、体力を削られたモンスターも殺し経験値を総取りなんて事が可能なのである。しかも経験値の設定はナイトメアよりも多く設定されているため率先してプレイヤーキラー略してPKに励んでくださいと言わんばかりなのである。もちろんパーティーメンバーは対象外だし殺されたプレイヤーから所持金や経験値、装備品といった物が失われたりはしない。
殺された時点でのプレイヤーのレベルや装備から計算された量の経験値や金が殺したプレイヤーに加算される仕組みなので殺された側はそこまでデメリットはないし復活地点で待ち構えて殺すというリスポーンキルが発生しないように一度殺されてから二十四時間は対象外の設定になっている。
ただし、美味い話には裏があるもので、プレイヤーを殺した分だけ指名手配レベルというものが上がり、それが一定レベルを超えてくるとナイトメアの他に賞金稼ぎのNPCなどがフィールドに現れたり、NPCショップなどで買い物が出来なくなるなどデメリットが発生するので調子に乗ってPKしすぎるのも考え物なのである。
ちなみに指名手配レベルを下げる方法は一度ナイトメアか賞金稼ぎNPC、他プレイヤーに殺されるなどのやり方などがある。
「今日は……お、丁度いいのあるじゃん」
さゆりがクエストカウンターでクエストを物色し何か目ぼしい物があったようでそれを受注しようとメニュー画面をタップしようとしたところで横からさゆりに話しかけてくる者がいた。
「やっほー! フラウ」
さゆりのアバター名を呼びながら話しかけてきたのはゲームをプレイし始めて二週間ほど経った頃、拠点の掲示板の前でレアモンスター情報が無いか確認していた時に勧誘され所属しているチーム、ゲーム内ではクランというのだがそのメンバーの一人でログインすると大体一緒に遊んでいるフレンドのコルトだった。
「あ、もしかしてクエスト行くとこ? 一緒行っていい?」
「いいよー丁度受けるとこだったし、んじゃ二人で受注して……と」
フラウとコルトは受注したクエストを消化するために対象モンスターが現れるフィールドへと向かっていった。
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