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自分の全力が相手に取っては3割程度だった時って萎えるよね。

 この間のチーム戦以降も、私はJKと遊んで色んなモードで遊んだり、装備をあれこれ変えてみたりとゲームを楽しんでいた。


 だが、心の奥ではあの時の自分の不甲斐なさと無知から来る愚行が頭から離れる事はなく、完全に気持ちが晴れる事はないままだった。


 「ねえ、フラウ。ちょっと……聞いてる?」

 「えっ!?あ、ごめん。ぼーっとしてた」

 「もー!しっかりしてよー!」


 JKが頬を膨らませ咎めるのに平謝りしつつ、私は場を紛らわすためにコーヒーを少し口に含む。


 「なあ、あんたPKJKか?」

 「……だったら?」

 「以前に俺のダチが狩られて世話になったみてえだからよ、ちょっくらお礼がしたくてよ」


 威圧的な態度を隠そうともせず話しかけてきた、黒ずくめの穴だらけの擦り切れたジャケットを羽織った禿頭の男がJKの顔を睨みつける。


 「ふーん、要するに敵討ちってことね。で、どうするの?フィールドに出て始めるのよね?」

 「あんたを狩って経験値も入るしそれが一番良いんだが、何かそっちは条件はあるか?」

 「そーねぇ……私はこの子とタッグでやれれば別にどうでもいいわ」


 そう言って向かいの席で縮こまっていた私を、手の平をこちらに向けたJK。


 「え!?私もっ!?」

 「うん、せっかくだし一杯フラウと遊びたいし」

 「……こっちは別に構わないが、そっちの人数は2って事で良いのか?フィールドだからルール無用でこっちは7人で行くぞ?」

 「ちょ……え、な、ななぁ!?」

 「良いわよ?今からやる?」


 ウキウキの様子のJKに虚を突かれた男は、咳払いをした。


 「待機してるメンバーに声をかけるから15分後に、すぐ近く砂漠地帯の……こことか、どうだ?」

 「あーここね、おっけー。んじゃあとでね」


 男にマップを可視化してもらい、集合場所を確認すると席を立つJK。


 「いこっか、フラウ」

 「う、うん……」


 私は慌ててJKの隣に並びついていく。


 「な、なんで……同じ人数でって言わなかったの?」

 「だって同じ人数で戦って勝っても、残りのやつらが痺れを切らしてけしかけてくる可能性あるじゃん?だったら最初から纏めて相手した方が、すぐ終わってあっちの気も晴れるでしょ?」

 「勝つの前提なんだ……」

 「私とフラウでやるんだよ?当たり前じゃん」

 「そう……だね」

 

 JKの笑顔をまともに見る事が出来なかった。

 時間通り、言われたポイントに来た私たちを禿頭の男をリーダーに7人が迎えた。


 「時間通りだな、改めて確認するぞ?そっちは2人でこっちは7人のチームバトル、時間無制限、フィールド範囲はお任せ設定にするが、たぶんここいら遺跡地帯がすっぽり収まるくらいだろう。決着はどっちかが全滅するまで一戦で終了。良いな?」

 「おーけーよ」

 「早くやろうぜ、リーダーあの時やられた分お返ししたくてウズウズしてるんだ」

 「ふむ、それじゃ俺たちは反対側に移動次第、一発空砲で合図したらバトル開始にしよう」

 

 私は、この間のチーム戦の失敗を思い出し念入りに弾倉をチェックし、構えを何度も繰り返す。


 「フラウ、緊張し過ぎだって。もっと気楽に行こうよ」

 「だ、だって私対人戦の経験、殆ど無いし……JKの足引っ張りたくないし」

 「引っ張ったって良いじゃん別に、楽しもうよ」


 JKが私の肩を優しく叩いたり揺すったりしてきて、リラックスするように促してくるが、頭の中ではずっとあのチーム戦で言われた言葉たちが、木霊していた。


 「始まった」


 パンっ!と短い音が向こうから響き、バトル開始を知らせる。


 「フラウは背が小さいから、瓦礫を利用しつつ先行して私がすぐ後ろをついていくから」

 「わ、分かった」


 私は瓦礫と風化しつつも形が辛うじて残っている石壁に、身を隠しながら少しずつ歩みを進める。


 「聞こえる?」

 『聞こえるよー』


 この間のチーム戦後にJKから教えられたインカム機能を使い、30メートル程離れた所にいるJKに状況報告をする。


 「今の所、接敵無し」

 『了解、そろそろ一人二人は間近に来てるはずだから、注意して』


 JKの忠告通り、グリップを握り直し警戒しつつ壁から顔を覗かせた瞬間、一人視界に捉えた。


 「とりあえず一人、仕掛けた方が良い?」

 『私が、もうちょい距離を詰めてからで』

 「了解」

 

 発見した一人の動きを警戒しつつ周囲の建造物をを確認する。


 「よし、追いついた」

 「やる?」

 「やろ」


 JKはニヤリと笑い、私が先に接近し銃ではなく腰に差してあるコンバットナイフを、取り出し飛び掛かり喉を引き裂き、クリティカル判定で即死し男は声も無く粒子になって消えリスポーン地点に転送された。


 「まず一人、相手にキルログ出てるはずからここから一気に激しくなるよー」

 「が、頑張る」


 身構えた途端、複数の足音が聞こえてきた。


 「とりあえず、あの崩れかけの家に行こっか」

 「わかった!」


 なるべく音を立てないように移動し、私たちは石造りの家の中へ入り、木製の机の下に入り込みJKは入り口の壁に張り付いて角待ちショットガンの構え。


 足音が近づいて来て、室内に入ってきた一人をJKがゼロ距離ヘッドショットをお見舞いし後から入ってきた一人も同じく、即殺。


 更に入ってきた敵は、アサルトライフルを斉射しながら侵入してきたので、机の下から四つん這いの姿勢で狙いを定めサブマシンガンをお見舞いし、私が撃破した。


 「これで4人撃破、あと3人」

 「フラウの援護助かるー、私のショットガンの装填数少ないのを上手くカバーしてくれるの神ー!」


 カランコロンと可愛い音を立てて、足元に転がった小さい長方形の物体に、私は血の気が引いてすぐさま机を横倒しにして身体を丸めた。

 直後、耳をつんざく轟音。


 「きゃーーーー!」


 舞い上がる粉塵に視界を遮られつつ、私はグリップに力を籠める。


 「JK、無事!?」

 「大丈夫、そっちは?」

 「机を盾にしてこっちもなんとか」

 「ナーイス」


 粉塵が収まる前に、私たちはグレネードを投げ込まれたのとは逆の崩れて出来た隙間から、警戒しながら脱出する。


 そこで、待ち構えていたのは最初に話しかけてきた禿頭の男だった。

 男は無言で、サブマシンガンを手にこちらに発砲、数発食らうも致命傷には至らず石壁を盾に様子を伺う。


 「さすがはPKJKだ。だが、さすがに多勢に無勢ってやつじゃないか?」

 「私のあだ名がつくようになったきっかけの話、知ってる?」

 「いや、俺が始めた頃には、すでにPKJKと呼ばれるプレイヤーが居るって感じだったな」

 「まあ、そうだよね。だからそんな余裕ぶっていられるわけだ」

 「何?」


 反対側に退避していた、JKはメニューを操作し出す。


 「フラウ、ごめん。ちょっとだけガチでやる」

 「え?う、うん」

 

 私はこの会話を聞きつけ、駆け寄ってくる仲間たちに応戦するので精一杯だったので上の空だった。


 「よし、やりますか」


 反対側から聞こえてきたJKの声は、弾んでいた。


  再び投げられたグレネードの爆発、吹き飛ばされた私の体力は残り僅かで、医療キットを使おうと手を伸ばした瞬間、敵の一人が銃口を突きつけ見下ろしていた。


 「これで、おわ――」


 破裂音と共に胴に穴が開き、赤い粒子を撒き散らし何が起きたか分からず粒子になって転送される敵。


 「な、んだよ。そ……れ」


 粉塵の向こうでもう一人禿頭の男とは別の声が、驚愕の声を漏らしているのが聞こえてきた。


 「は、はは!そうか、まだ仲間と戦った時は遊びだったのか!面白い!」


 笑いを堪えきれず楽しそうに声を弾ませ、サブマシンガンで応戦する禿頭の男の声が聞こえ始めた。


 「今も遊びのつもりだよ?」

 「その動きで?冗談だろ」


 銃声が鳴り響き、風に流されてようやく視界が晴れて来る。


 「JK!……終わったの……?」

 「うん!終わったよ」


 銃を仕舞ったJKは私に駆け寄ってきた。


 「グレネードによく対応できたねフラウ」

 「あー、アクション映画でよくあるシーンだったから身体が勝手に」

 「あー確かに。よくあるよね、ああいう場面」

 「うん、だから……かな。はは」

 


 私は今の戦闘で倒して手に入った経験値で、レベルが上がりステータスを割り振れることを知らせる視界の端でお知らせ表示が出ていた。

 私が倒したのはたったの二人、残りはJKが殲滅してしまっている状況に自分の無力さ不甲斐なさを見せつけられ、惨めなハイエナ野郎の気分になっていた。


 

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