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何気ない一日

不定期連載になると思いますがもしよかった読んでいただけると嬉しいです。

 ゲーム業界に革命が起きた。それはVR技術の進化によりあたかも自分がゲームの世界に入り込んだかのような没入感が味わえる圧倒的なグラフィックを誇るヘルメットのような形をしたフルダイブ型VRゲーム機『VRダイバー』の普及である。

 それに合わせて数多のゲームメーカーが様々なタイトルを発売し沢山のプレイヤーがそれぞれのゲームの世界に飛び込んでいった。

 そんな中発売されてから数か月が経った、とあるゲームが日本で大ヒットを飛ばしていたのであった。

その名も『ナイトメア ハンティング オンライン』

 プレイヤーはナイトメアと呼称されるモンスターを殺しレベルを上げ落とした素材で武器や防具を強化していくという物だ。だが、このゲームはそれだけではなくプレイヤーキルしても経験値が入る仕組みが採用されている、しかもモンスターを倒すよりも経験値が幾らか多く入るように設定されており、初心者でも上手くすれば高レベルプレイヤーを倒して一気にレベル上げが可能だったりする。

 それがゲームプレイに緊張感を与えており、そのスリルがたまらないと沢山のプレイヤーがこぞって高レベルプレイヤーに遭遇し撃破出来る事を夢見つつ返り討ちにあって、意気消沈して地道なレベル上げや、素材集めをするためフィールドを駆け回ったり見事に撃破し経験値を手に入れて、比較的早いペースでレベルアップしたりと、今日も様々な場所で悲喜こもごもなのがこのゲームの特徴だ。勿論バランス調整は成されているため極端なプレイヤーキルは発生していないし、プレイ人口も一定以上に保ち続けているところが増加の一途を辿っていた。


 空は雲がまばらに浮かぶ夕暮れ時、目の前に広がる寂れた商店街。 シャッターは落とされテナント募集と書かれた年季の入った破れかけの張り紙が月日を感じさせる。そんな建物がいくつも並ぶそこを我が物顔で歩く一体の獣がいた。


「お、いたいた。大した経験値にならないけど物陰から狙った場所に撃つ練習にはいいかな」


 物陰からその獣を観察しぼやく少女、背は平均的な160前後で前髪は切りそろえられていて全体的にショート、服は市街戦向けの迷彩柄のシャツとズボンに身を包んでいる。そして手には不釣り合いに武骨なデザインのハンドガンが握られていた。外見がいくらか幼く見える少女が所持していい代物ではないが今彼女が居るのはVRの世界なので誰にも咎める事は出来ない。


「あいつ倒したらログアウトしよっと」

 少女はそう言い、物陰から身体を少しだけ出して銃口を獣へ向ける。

「脳天ブチ抜けるかどうかってとこだけど、まあこの銃なら削りきれるっしょ」


 少女は集中して数発銃弾を獣に向かって発砲。弾丸は寸分違わず獣の脳天へ吸い込まれるように着弾し血と内臓物を連想させる赤黒い粒子をまき散らし絶命した。


「お、レア個体だったんだ。経験値ちょっとだけ多かったな……けどレベルは上がらずか……まあいいや。 お風呂入って寝よっと」


 自分の三倍はあろうかという巨体の獣をたった数発の銃弾で倒した事になんら感想も持たず少女はその場から光の粒子となって姿を消した。


 その様子を電柱の上から眺めるもう一人の美少女がいた。さきほどの小柄な少女と違いこちらは170前後の高身長なモデル体型。髪は腰まで届く黒髪。顔立ちは凛々しく意思の強さを感じさせる釣り目気味の瞳が印象的で見る者の殆どが記憶に残すであろう美少女だった。服装は怪物が闊歩する暗い市街地に不釣り合いなただの制服姿だった。電柱に突っ立っている上に風が適度に吹いているのでスカートが翻って下着が角度によっては下から丸見えになるのも気にせずその美少女は一点を見つめながら笑みを浮かべていた。


「ふふ……あの銃であの距離を……やるじゃん。 そのうち戦ってみたいな」


 美少女は風で靡く髪を鬱陶しそうに手で押さえつけながら先ほどの少女の居た商店街の通路を眺めて薄ら笑いを浮かべて嬉しそうに微笑んだ。

 と、そこへ3人の男たちがそれぞれ銃や剣を手に商店街の建物の屋根を伝って少女にゆっくりと近づいてきていた。


「へへ、あんた最近話題のPKJKぺけじぇいだろ?」


 男たちの一人、帽子を被った男が銃で少女に狙いを定めながら問いかける。


「だとしたら?」

 

 さっきまで少女の居た辺りを見つめていた時の笑みは消え、どうでもいいような調子で目だけを男に向ける少女。


「あんたにかけられた賞金俺らのもんにしようとおもってなぁ。それと経験値も相当貰えるだろうしな……。3人がかりじゃ辛いだろ? 降参するなら全部は取らねえでおくぜ?」


 男はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべて提案をしてくるが少女は意に介さず深いため息を吐くと目だけを向けたままで口を開く。


「こんな風にいちいち声かけたりしないで遠距離でズドンとやってりゃ良かったのにね……」

「あ?何言って――」


 少女が小さく呟くのを聞き返そうとした男と残りの二人の足元で爆発が生じ赤黒いエフェクトをまき散らし男たちは跡形も無く消え去った。


「私狙いで近づいてるのはとっくに分かってたから仕掛けておいたんだよねえ……周囲警戒を怠らずにいたら気づけるくらいの適当さで仕掛けたんだけど、この程度も見抜けないんじゃ私を狙うのなんてやめといた方が良いと思うよ?」


 自分が吹き飛ばして跡形も無くなった屋根に向かって誰も聞いてはいない忠告をする少女。


「ちぇ……3人もヤッたのに経験値これだけぇ?どんだけしょっぱいのよ。ああもういいや今日は私も寝ちゃおっと。待っててね次は私が仕留めてあげるから」


 少女は再び笑顔で少女がいた商店街の通路を見ながら少年と同じ光の粒子となって姿を消した。


 



 これは自分が本当に楽しいと思えるゲームとの付き合い方を見つけていく少女たちの物語。

もしよかったら評価、感想なんぞしていただけると嬉しいです。

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