表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第10話 [動物を飼い慣らすって道徳的にどうなんだろうな。]
73/76

僕の協力者 ー炭岡旬ー

「二階堂が知ってるのはこれだけらしい」


「なるへっそぉ……」


 LEDの白明かりがまぶしく辺りを照らす研究室。僕はさっき得た情報を余すことなく、目の前の男に話していた。白髪混じりで、何日もシャワーを浴びていないような髪の毛をかきむしりながら、ディスプレイの前でキーボードを叩くこの初老は小高根賀利博士。ここ、WANON東京本部の部長であり、ノゲム研究室の所長でもある。


「彼がそれ以上何か隠していた様子は?」


「うーん……見た感じなかったよ? あの写真の拡散がとっても怖いみたいだし、それが出回らないためにはなんでも話すと思う」


「そうか……今更になるけどー、ちょっとばかしやりすぎじゃない?」


 博士は御年55歳。少し親父臭いところもありつつ、その軽い口調はとても年齢に合っているとはいえない。


「いいじゃん。悪いことをしたのは事実なんだから」


「いやぁ……しかしねぇー……」


「前から言ってるでしょ? 僕たちの目的のため、真実を解明し、新しい兵器を完成させる。そのためには少しの犠牲も厭わない。先の計画と比べれば、こんな脅しぐらいかわいいもんでしょ?」


 博士は作業の手を止め、まっすぐに僕を見つめた。


(しゅん) 坊、くどいようだけどもう一度確認する。

 どうしてもこの計画じゃないとだめなのか? こんなことしなくとも、他に方法があるんじゃ……」


「もう遅い。ここまで来たからには後戻りはできない。それに他の方法ってなに? 言ってみてよ」


 博士は苦い顔をし、また髪をかきむしる。白く小さな粉が白衣に落ちる。

 カサカサと髪をかく音だけが広い研究室に響き、沈黙の時間が流れた。


「そんなことよりもさ、あの装置はいつできそう?」


「ん? あぁー……それがー、設計図は出来上がってるんだけどねぇ……」


 博士はディスプレイをこちらに向ける。


「これからこいつを使うってことでしょう? そうなるともちろん世間にも知られるわけで、会社にどう理由をつけて製造しようかと思ってさ……」


「なるほどね。確かに、この装置を使っても“ブラッドリンカー”を探す時間は多少かかるし、黙って製造してもすぐ邪魔される……そこらへんは考える必要があるか」


コンコンコン……


「小高根さん? 入りますよー」


 僕たちが悩んでいると、突然ノックの音が鳴り、確認の声とともにドアが開いた。咄嗟のことに驚き、僕が隠れる時間はなかった。


 博士は開いていた設計図のタブを急いで閉じた。僕はその間、ここにいる言い訳を考える。


「や、やや、や、やぁ、七花ちゃん、今日はどんな……って、そちらの方は?」


 舞原七花のあとに続き、潮田大翔が現れた。


 なぜこんなところに潮田大翔が?

 僕は一層戸惑いつつも脳をフル回転し、どうにか辻褄の合う嘘を考える。


「え!? なんでこんなところにいんの!?」


 同じく向こうも僕に驚いている。


「大翔くんこそなんでここにいるんですか!? 事務所にいるんじゃ……」


「あ、あぁ、なんか色々あってさ。彼女……舞原七花ちゃんにここの案内をしてもらってて」


「お知り合いですか?」


 舞原七花が不思議そうに潮田を見る。


「そ。なんていうかー……俺たちの協力者……ていうか、まあそんな感じ」


「へぇ~……あ、はじめまして。舞原七花と申します。ゲットリッダーをやっておりまして、ここWANONの一員です。見習いですけど」


 舞原七花。彼女は僕のことを知らないが、僕は彼女のことを知っている。世界中のゲットリッダー、特にこの地域のゲットリッダーについては、戦闘データや変身者の経歴、性格も全て、僕の頭の中にある。まあ例外はあるけども。


「初めまして。探偵事務所サンビレッジにて探偵助手をしております、炭岡(すみおか)(しゅん)と申します」


 僕は名刺を彼女に渡した。そして潮田大翔に向き直る。


「ゲットリッダーについて、こちらの小高根博士に色々うかがってたんです。今度大翔くんが戦うときには少しでもサポートができるようにって。黙っててすみません」


 僕は礼儀正しく頭を下げた。


「なるほどそういうことね。なんかー、色々ありがとな!」


「いえいえ、やりたいことを勝手にやってるだけなので」


「いやぁ、彼は勉強熱心でねぇ! 色々教えていたらランチ時を逃しちゃったよぉー、なんてねっ! あは、あはははは……」


 相変わらず博士は嘘が下手だ。


「えっと……この方が小高根さん?」


 潮田大翔が舞原七花に問いかけるが、彼女が答える前に博士が口を開く。


「オホン! 私は、小高根賀利と申します。一応ここの所長であります。ええ」


 博士はわざと紳士っぽく振る舞い、おどけて見せる。


「ほら、面白い方でしょう?」


「あはは……そ、そうだね……」


 潮田大翔は苦笑いしている。少し引いているようだ。


「それで? 七花ちゃん、今日はどういったご用件なのかな?」


「はい。こちらの大翔さんに小高根さんのご紹介を、と。

 大翔さん、こちらの小高根さんはゲットリッドチェンジャーの設計者であり、スキルキーの開発者でもある、物凄い人なんです!」


「え、まじで!?」


 潮田は目を丸くし、ひどく驚いている。


「それだけじゃないよ~? 僕は日本のゲットリッダースーツや武器の設計の最高責任者なんだ!」


 博士は胸を張り、顎を突きだし、得意気な顔をする。


「えぇ!? すごいですねー! ……でも、最高責任者って、具体的に何をしているんですか?」


「各所から来るゲットリッダー関連の設計図を、安全性や能力などの観点から精査し、必要なら修正を加える仕事だよ! つまり全国のゲットリッダーの能力を、すべて僕が決めているといっても過言じゃない!!」


 博士は体を仰け反り、天高く指を指した。

 言ってることは正しい。しかし、そんな偉大な功績と腑抜けた見かけには差がありすぎて、どうしても話の信憑性にはかけてしまう。


「へ、へぇ~……す、すぅごいっすね……」


 潮田大翔は再び博士との距離をとる。

 おかしな挙動をする博士に引いているようだが、無理もない。普通の人間なら、この変人とは距離を置くものだ。事実、この広い研究室で博士以外の人は見かけないし、そもそも博士に、「舞原七花」という僕以外の知り合いがいたことですら、僕は今初めて知った。


「え、ということは俺の、「ゲットリッダー・ノーマ」の持つあの変なデザインの「ホタブレード」だったり、名前が親父ギャグみたいな「ホ盾」も、博士が目を通してるってことですか?」


「そうだよ~、設計者は全国各地にいるからね、中にはユニークな発想を持つ人間もいる!」


 「ホ盾」の設計をしたのはアンタだろうが、というツッコミが頭に浮かぶが、今は飲み込んでおく。


「ほらぁ! 小高根博士、すごい方でしょう!?」


「ムフフフフフ……」


 博士が気持ち悪く笑う一方で、潮田大翔はどこか納得のいかない表情をしている。自分の使う武器がふざけた名前、ふざけた見た目であることにまだ未練があるようだ。可哀想に。




『ピー、ピー、ピー、ピー……』


 突然、無機質な音がなるとともに、僕のポケットにあるスマホもひそかに震える。


「おい、またノゲムかよ……」


 潮田大翔は露骨に嫌な顔をする。

 舞原七花の顔も、さっきまでのおっとりした表情から、キリッとした表情に変わる。


「行きましょう! 恐らく竜也くんも一緒に来てくれます!」


 潮田大翔は大きくうなずいた。


「突然失礼しておいてすみません! またあとでゆっくりお話しましょう! ありがとうございました!」


「ありがとうございました!」


「うん! 大丈夫だよ! お二人共頑張ってねっ!」


「頑張ってください!」




 二人はうなずくと、走って研究室を出た。

 またも室内は静まり返る。


「旬坊、どうする?」


「うん、一応行ってくる」


 僕は肩掛けの鞄を取り出し、中からバイクの鍵を出す。


「なるべく無駄な変身は避けなよ? じゃないと……」


「分かってるって」


 僕はヘルメットを持ち、研究室を出た。


 まったく、こうも立て続けに戦わきゃいけないのなら、そろそろあの計画も、前倒しで考えなきゃいけないのかもしれない。

 潮田大翔らに再び遭遇しないように注意しながら、僕は現場へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ