僕の一歩 ー炭岡旬ー
「なるほど。これがあなたの知っている情報の全てですか?」
「はいそうですよ……話したんで写真返してください」
二階堂剣人は投げやりな態度をとり、僕の返事を待たずして、テーブルの上の写真を取った。彼は写真を一瞥すると、僕を睨み付ける。
「しかしあなた、末恐ろしい少年ですね。ただの中学生が探偵の真似事をしているだけかと思っておりましたが、まさか私をゆするとは……」
「いえいえ。それほどでも……」
「褒めてませんが?」
二階堂は残り少ないコーヒーを一滴も残さず口に運び、カップを置くと、鞄を持ち、伝票を取る。
「代金は私が払います。ですので、話はこれっきりで」
当たり前だ。僕が脅していることを抜きにしても、僕は15歳で向こうは30歳、歳が倍違う。それに僕は100%アップルジュース一杯しか飲んでいない。それに比べてこいつはコーヒーを6杯。脅しを含めても10万はもらいたいところだけどー……まあいいか。
「分かりました。ではお元気で。“ご家族とも”、お幸せに」
二階堂は一瞬ギョッとした目でこちらを見るが、すぐに目を反らしそそくさとレジへ向かっていった。スタスタと歩く足の様子から、ここから早く出たいという強い思いを感じる。
二階堂は店を出てすぐさまタクシーを拾った。すぐにタクシーは走り出し、やがてその姿は見えなくなる。
しかし、二階堂剣人。エリートと聞いて少し警戒していたが、本人はかなり思慮が浅い人間のようだ。写真一枚取ったぐらいで証拠が消えると思っているのだろうが、しっかり保険としてデータを残しているに決まっている。
今日、彼が情報を全て言うという根拠はどこにもない。仮に、彼がまだ何か隠していると分かったときには、またこの写真で釣るか、もしくはもっと違ったもので脅す。
ただ、彼の様子や性格を考えるに、今聞いた情報は本当に彼が知っている情報全てなのだろう。おかげで、“僕が赤西守竜を殺した理由”の解明にほんの少し近づいた気がする。
今日手に入れた情報は早速あの人に共有しなければ。
僕は席を立つと、そのまま店を出て「WANON東京本部」へとバイクを走らせた。




