ケガするのなんて何度目だよ。 ー潮田大翔ー
「どうすればいいんだよぉーーー!」
俺はカニムシノゲムによるハサミ攻撃をかわし続けていた。ハサミが空を切って地を打ち、その度に地面のアスファルトが大きくへこんでいく。
「潮田さーん! 頑張ってくださーい!!」
ゲットリッダー・撫子は加勢することもなく、物陰に隠れてただひたすら声援を上げるだけだ。
俺は依然として次々と繰り出される攻撃をかわしつつ、脳をフル回転して考えた。
これといった対策ではないが、とりあえずやれることはやってみよう。
『weapon 転送 Hotablade』
俺はホタブレードを召喚した。
「おらぁ!」
俺は右手にもつ剣をカニムシノゲムの体に叩きつけた。
カキィィィン……
まるで鋼鉄のような体は、血どころか傷口一つとしてつかず、剣は跳ね返された。
「ハァァァァァァ……!」
ノゲムは左右のハサミをぶつけ合い、威嚇のようにこちらを睨む。最初に見た、どこか情けない姿が嘘のように生き生きとしている。
こうなったらファイナルスキルを使うしかない。舞原さんは生きた状態にしろと言うが、もうここまで来たら一か八かでやるしかない。
俺は建物の陰で隠れる撫子を見る。仮面の奥でどんな表情をしているかは分からないが、どこかおどおどした様子であり、そしてやはり一向に加勢しようとしない。
俺はシェルシザーストライクのキーを取り出し、チェンジャーに挿した。
『final! Shellscissorstrike』
俺はホタブレードを目の前にいるノゲムの腹部に突き刺す。
「ハァッッッ!!」
さっきと同様、上手く貫通することはできないが、柄のホタテは開き、巨大になると、そのままカニムシノゲムを挟む。
よし、これでいい。
「ハッ!!」
カニムシノゲムは予想外の攻撃に怯み、後退りする。
「ちょっと大翔さんっ! なにやってるんですか!!」
物陰から撫子が叫ぶ。
「このままじゃ埒が明かない! 俺はこいつを倒します!」
俺は助走の距離をとり、ノゲムに向かって全速力で走った。
地面から足を離し、低空でのキックの姿勢に入る。物理法則というものに反した動きではあるが、不思議と体が浮くような感覚がして、安定したキックの姿勢がとれる。
「うぉぉぉぉりゃぁぁぁ!!」
『attack skill 発動 Meteor shower』
「何っ!?」
このままキックを繰り出そうとした矢先、突然周りに無数の隕石が降ってきたかと思うと、俺の体に強烈な痛みが走る。3、4個のとてつもない固い石が当たり、俺はビタンと地面に打ち付けられた。
「ガルルァァァ!!」
俺は、見事なまでに仰向けで大の字になる。聞き覚えのある唸り声とともに、小さな焦げ茶色の物体が俺の上を通過する。
この物体がなんなのか、一瞬で分かった。
竜也、ゲットリッダー・ティラノだ。
俺は重い体を動かし、ティラノが通過した先を見る。すると、皮膚が爛れているノゲムが見えた。どうやら俺と同じく、ミーティアシャワーの攻撃を受けたようだ。
俺は目の前の“クソガキ”に苛立ちを覚えた。
「おい竜也!! いきなりなにすんだよ!」
「ガルルァァ! ガルルァァ!」
聞こえてないのか聞こうとしてないのか、ティラノは腕にはめたレックスファングで、カニムシノゲムに何度も攻撃を繰り返している。
「ハァッ! ハァッ……!」
ノゲムも応戦するが、ティラノの素早い動きがそれを上回り、ノゲムの体にはたちまち傷が増えていく。
「ハッ…… ハァ……!」
さっき俺を襲ったときの威勢もなくなり、その強固なはずの体は既にボロボロに傷ついてる。
「大翔さん! 彼を止めてください! このままだと“あの子”が死んでしまいます!」
またもや俺に注文をする撫子。
「この体じゃ……! 無理だって……」
本当だ。ファイナルスキルの状態にあった俺は、まさか空から隕石のシャワーが降ってくるとは思えず、攻撃をもろに食らってしまった。あいつのおかげで俺の体もボロボロである。
「仕方ないですね……」
撫子はキーをドライバーに挿すと、2回連続で回した。
『attack skill 発動 poison』
『attack skill 発動 poison』
撫子は物陰から一歩前に出る。彼女は両手に小さい毒を出現させ、ティラノとカニムシノゲムそれぞれにめがけて投げつけた。
「ハァァァ……ッッ! ハァッ……!」
「うがぁぁぁ! うがぁぁ!」
毒を食らったノゲム、ティラノは揃って苦しみだした。
「ちょ、ちょっとっ……やりすぎですよ!」
「大丈夫です。解毒もできるので」
そういう問題ではない。ノゲムはともかく、6才児に毒を浴びせるなんて、いくらなんでもやりすぎだ。
撫子はゆっくり二体のもとへ歩み寄る。
「あんたッ……どういうつもりで……」
俺は何もできず、妙に落ち着いた様子のゲットリッダーの姿をじっと見ていることしかできない。
ピーポーピーポーピーポー……
どこからかサイレンが聞こえてくる。やがてその音はかなりの大きさになる。
「ちょうど来た! もう大丈夫ですからね」
グレーの大型車がノゲムに側に止まった。どうやらサイレンはこの車から鳴っているようだ。車体に大きく「WANON」と書かれている。
ダダッ……
ドアが開き、白衣を来た3人の男女が出てくる。撫子はノゲムを持ち上げると、それを3人に引き渡した。ノゲムはそのままトラックへ乗せられる。
撫子はまたティラノの方へ向き、スキルを発動した。
『attack skill 発動 detox』
撫子は右手から光の粒子のようなものを出し、その粒子はティラノの体へと染み込むように吸収されていった。
さっきまでもがいていたティラノもパタッと死んでしまったように体をぐったりとさせた。撫子はティラノの元へしゃがみこむと、チェンジャーに刺さっているキーを外し変身を解除させ、同時に自らの変身も解除する。
俺は激しい痛みに耐えながらも、舞原さんのもとへと、重い足を引きずりながら歩く。
「ちょっとあんた……! やりすぎ……で……」
バタンッ……
痛みに耐えきれず、俺の体は再び地に伏した。
「まぁ!! すごいケガ! 早く手当てしないと!」
舞原さんは倒れた俺を起き上がらせ、体を支える。
「そんなことより……! あんたには……」
「とりあえずメディカルへ行きましょう。話はそれからです」
俺と竜也は職員らに抱えられながら、車に乗せられた。
事務所の留守番中に抜け出した上、この状況になり、本来なら金房さんに連絡をしなければいけないのだろう。しかし、体の痛みがひどく、今は連絡なんてとてもできる状態ではなかった。




