混乱 ー大空心助ー
岩本中学校の職員室。教職員らは保護者や報道陣への電話対応に追われている。別に学校側がこの事件を公表したわけではない。おそらくこの学校の生徒がSNSかなんかに情報を漏らしたのだろう。
この光景は初めて見るものではない。が、やはり見慣れたものでもない。
『今もなお、生徒の事情聴取が行われているとのことですが、未だ新たな情報はありません。一部では、現在逃走中の隼瀬慎也容疑者が起こしたものであるという話はありますが真偽は確かではありません。犯人が隼瀬容疑者であるとするなら、やはりこの学校の中にいるということなのでしょうか……』
報道では、「生徒がノゲムに襲われ、全身火傷の重症を負い、犯人は未だ不明」ということになっている。校門の外には取材陣が殺到しており、テレビではどの局もこの学校の中継を放送している。
殺到する取材陣を補導している警備員の様子が、職員室からも見える。
『ノゲム出現に備えてでしょうか。ゲットリッダー・ロウルフこと、大空心助さんが職員室にて待機している様子が伺えます』
職員室にあるテレビからは女性アナウンサーが実況をしている様子が流れている。正直耳障りだ。
「おい! いつまでオレをかくしてるっ!」
誰かのデスクにしゃがみこんで身を隠している小僧、赤西竜也がさっきからしつこく話しかけてくる。
「ずっとだ。未成年のゲットリッダーの身分を明かすわけにはいかない。ノゲムが出現するまで待機だ」
「みせいねん? みぶん? たいき? どういういみだ!」
「静かに待ってろってことだ」
「うぅぅぅ……!」
赤西竜也は今にも暴れだしそうな顔をして、強く拳を握りしめている。
まったく……なんで潮田大翔はこいつを野放しにしているのか。あのときは見過ごしたが、今改めて思うと、やはり子どもにゲットリッダーをやらせるなんて危険過ぎる。
しかし俺がここでゲットリッダーを辞めろと言ったところで、こいつが素直に聞くとも思えない。
プルルルルルルル....
余計なことを考えていると、俺のスマートフォンが鳴った。潮田大翔からだ。
「俺だ」
『あ、もしもし……あの、犯人が分かったらしいんで、たつやも連れてこっちに来てくれますか?』
「……あぁ、分かった。今行く」
俺は電話を切った。
「おい小僧、行くぞ」
「よっs……うがぁっ! いって……」
赤西竜也は戦えることの嬉しさのあまり、デスクの天板の裏に頭をぶつけた。
「バカか、行くぞ……」
俺は、頭を抑えて泣くガキを引っ張りながら教室へと向かった。
『ご覧ください! たったいま、職員室の内部で何か動きがあったようです! 今、大空心助さんとみられる人物が職員室を出た様子が、こちらからでも確認できます。』
職員室を出てからもしばらくテレビの音声が聴こえてくる。俺はそんな報道に何の感情も湧くことはない。
早く終わらせよう。
俺にはそんな考えしか頭になかった。




