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ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第6話 [動物は大切にしないとな。]
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早く事件を解決しないと。 ー潮田大翔ー

 あの事件のあと、俺は救急車で病院に運ばれた。軽傷だが、一応入院とのことだった。

 そして夜が明け、朝になった。俺はみんなと病室で、事件の整理をしていた。イージスから受けた、脇腹の大きな痣が痛む。

 「シャドーバレット」。あの技、ただのアタックスキルなのに、スーツを通してもかなりのダメージを感じる。やっぱりイージスのアタックスタイル、あの形態での攻撃力は凄まじい。その攻撃力に加えてディフェンススタイルでの防御力。あんなの反則じゃないか。どうやってもあいつには勝てない気がする。


「大翔の話を整理すると、やっぱりその『イージス』ってのが、この放火事件の犯人ってこと?」


「確かにそれで筋は通る。だがゲットリッダーであるそいつが事件を起こす動機はなんだ?」


 麗華の推理に田上さんが応えた。


「もしくは実行犯がいて、イージスがそいつを庇っているとか……」


 金房さんが眉間に皺を寄せ、考え込む。

 しかし、俺はどうにも引っ掛かっていた。


「でもイージスは、あのときのゲットリッダー、えっと……バッドでしたっけ、あいつを狙ってたんですよ」


 「ゲットリッダーバッド」。あのとき、ノゲムとの戦闘に割って入り、俺に攻撃を加えたゲットリッダーだ。イージスは俺に目をくれず、あいつだけを狙っているように見えた。


「それはあれじゃない? ノゲムを倒そうとするゲットリッダーを排除したかった、とか?」


 麗華が言う。


「いずれにしても、今はそのイージスについて調べる方向ですかね?」


 中野さんは何かメモをとりながら話をまとめた。


 このチームは上手く機能している。テンポよく話が進むし、無駄がない。充分すぎるぐらい連携がとられている。

 それに比べてバッド……あいつ、ゲットリッダーの癖に他のゲットリッダーと協力しようとせず、あろうことか協力しなくちゃいけないはずの俺を攻撃した。あいつもどうにかしないと、この放火事件を解決できない気がする。


「今ネットでイージスについて調べているんですけどー、確かな情報は出てきませんね……」


 旬がスマホを見ながら言う。


「そうだねー。こんなにも謎に包まれているやつの尻尾を掴むのはかなりの時間がかかるかもしれない。それに、真実を知ったところで、イージスを抑えられるのかという話になってくる。潮田くんの話によると、彼はとても強いらしいし……」


「そうですね。公式の情報によると、デビューからまだ2年も経っていないのにランクは、上から2番目の “プラチナ”。ネットでは、実力はかなりのものであるという情報もありますし、そんなイージスが犯人だと分かったところで、抵抗されれば最悪死人が出るかもしれません……」


 旬が恐ろしいことを口にする。死人が出るなんて最悪な事態、あってはならない。


「でもさ、公にイージスが犯人だと分かれば、多人数のゲットリッダーで抑えることはできるんじゃない?」


 麗華が提案する。

 確かにそうだ。この世にゲットリッダーなんてごまんといる。


「どうでしょうか……大翔くんによるとイージスは正陰コーポレーションとの繋がりが強い。正陰コーポレーションは政府公認の会社で権力がかなり強いので、事件の真相が闇に葬られる可能性があるかもしれません。それに、形式上ゲットリッダーはその正陰コーポレーションに雇われている身なので、果たして協力してくれるゲットリッダーがいるかどうか……」


「協力してくれるゲットリッダーなんて案外多いよ? ロウルフの大空(おおぞら)さんとか、ティラノの竜也(たつや)とか。あの2人なら正陰コーポレーションからの圧力にも屈しないだろうし、実力も……まあ俺もその二人を深いところまで知ってるわけじゃないけど、イージスに抵抗できるぐらいはあると思う。あの2人がいれば……」


ガラガラッ

「勝手に話を進めるな」


 突然病室のドアが開き、大空さんが姿を現した。

 俺は驚いた拍子に、変に体を動かしてしまった。脇腹の痣と背中の傷口がビリビリと痛む。


「え、お、大空さん、な、なんで!?」


「ふざけるな!! おまえにいわれたくないんだよっ!!」


 聞き慣れた子どもの声がする。大空さんの威圧に驚いていたが、見ると竜也もいる。背が小さくて見えなかった。


「昨日のニュースを見てな、逃げたというノゲムを駆逐するために『そのノゲムを逃がした愚か者』の名前を調べたんだ。それがよりにもよってお前だと言うから、話を聞こうと、山勘でこの病院に来てみたらお前らがいた。その途中でなぜかこのチビも付いてきた」


「チビっていうな!」


 竜也が鬼の形相で大空さんを睨み、大空さんはうざったそうにする。

 

 「愚か者」か……なんか言ったらかえって怒られそうなので、とりあえずそのことには言及しないでおこう。


「え、あのー、潮田くん? この人たちは、そのー……」


 中野さんが恐る恐る質問した。

 そうだった、刑事さんたちにはおろか、まだ金房さんや旬にもちゃんと話していなかったか。


「えっと、この方が俺がさっき言ったベテランゲットリッダーの大空心助(おおぞらしんすけ)さんで、こいつが幼稚園児ゲットリッダーの赤西竜也(あかにしたつや)です」


「ようちえんじってゆうな!!」


「本当のことだろ」


 俺と竜也が言い合いをしていると、田上さんがお馴染みの険しい顔でこっちを見る。


「おい小僧、こんな小さいガキに戦わせる気か?」


「ガキっていうな!」


「あ、そうですよね……でもこれにはちゃんとした配慮をしていて……」


「うわぁぁぁ!!」


 一生懸命言い訳をしていると、突然旬が声を出した。珍しく慌てている様子だ。


「た、たたた大変です! SNSにこんなカキコミがっ!」


 旬は自らのスマホを俺たちに見せる。俺たちは揃って画面を見た。


『今日8月30日、岩本中学校3年2組の教室にて生徒1人を焼き殺す』


 スマホにはSNSの投稿が写っている。白く淡白な画面に不似合いな、恐ろしく物騒なカキコミが目立つ。


「この3年2組って、僕のクラスなんです!」


 なんだって? つまりこの犯人って……


「これって……もしかして放火事件の犯人が?」


 中野さんが呟く。


「おい、まだギリギリ夏休みなんじゃねぇのかよ?」


 田上さんが旬に聞く。


「うちの学校、夏休みに補講があって……あ、でも、強制ではないんですけど……」


「とりあえず岩本中学校に行こう! 潮田くんは着替えてからでいいから急いで来てくれ!」


「はい!」




 金房さんの合図でみんなは慌ただしく病室を出た。




 俺は患者衣から着替え、担当の看護師さんに事情を説明したあと、すぐさま後を追った。


 投稿の内容からして、犯人は次のターゲットに人間を選んでいる。もちろんそのアカウントの持ち主が、今回の放火事件の犯人だという保障はない。しかし、それでも死人が出る可能性は消えない。もちろんイタズラである可能性もあるが、とりあえず行ってみないと。何かあってからでは遅い。

 それにしても、この犯行予告が放火事件の犯人によるものだとして、今まで動物ばかり狙っていたのに、なぜいきなり人にターゲットに移したのだろうか。やっぱり放火事件とは関係ないのか?

 いや、今はそんなことを考えている暇はない。早くしないと、また苦しむ人が出てくるかもしれない。隼瀬の被害にあった人たち、その遺族。もう二度とそういった人たちを出すわけにはいかない。


 俺は脇腹の痣、背中に走る傷口、数々の痛みに耐えながら全力で走った。

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