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ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第6話 [動物は大切にしないとな。]
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もうめちゃくちゃだ。 ー潮田大翔ー

「いやぁー大変ですね、暑いなかでの聴き込みは」


 旬が苦しそうな声で呟く。


 事務所で事件について話したあと、俺たち6人は2人1組になって行動していた。麗華と田上さん、金房さんと中野さん、俺と旬、といったような組み合わせだ。この組み合わせは金房さんが考えたものだ。どんな意図があるかはよく分からないが、金房さんのことだ、おそらく何か相性というか、バランスというか、そういうのがあるのだろう。

 だがそれはそれとして、麗華は大丈夫なのだろうか。色々気難しいっぽい田上さんと上手くやっていけているだろうか……


 そんなことを考えながらも、さっき自分の頭の中にあった疑問を思い出した。


「そういえば、愛生ちゃんは今日いないの?」


 事務所にいたときからの疑問だった。旬と愛生ちゃん、金房さんはあの探偵事務所に住んでいる。もともとあそこに住んでいる彼女がいないなんて、なんか用事があるのかなと思った。


「あぁ、えっとー……愛生の親が火事で亡くなったっていうのは、知ってますよね?」


「ん? あー、うん、もちろん」


「それを気にかけて金房さんが、『友達と遊びにでも行ったらどうだ』、なんて勧めたんです。幸い足も治りかけで、自分でも外を自由に歩きたかったらしく、進んで遊びに行きましたよ。たぶん今頃、クラスの友達と楽しく買い物だったり、カラオケだったりなんなりしてます」


 愛生ちゃんのあの明るい性格を見ているからか、すっかり忘れてしまっていた。

 そうか、この放火事件の話を聞く過程で、両親が亡くなった火事を思い出しちゃうなんてことがあれば、洒落にならないからな。


 俺は、優しく笑う旬を見て少し罪悪感を感じた。


「あ、そうだよね……ごめんな、なんかつまんない質問して」


「いやいやそんな! 謝らないでくださいよ。僕たち、一緒に捜査する仲間でしょ?」


 旬が手を左右に振りながら、にっこりと笑顔で話す。


 本当に旬と愛生ちゃんは、お互いを大切にしてるんだろうな。旬たちがノゲムに怯えることのない、幸せに生きていける世の中になるといいなと、俺は思った。

 大袈裟かもしれないが、あの隼瀬の事件が起こってから、俺は漠然とそう思うようになってきた。ノゲムがいなければ、隼瀬は悪事を働くこともなく、隼瀬が悪事を働かなければ、愛生ちゃんがケガをすることもなく、横常(よこづね)さんたちが死んでしまうこともなかった。


「さぁ! どんどん聴き込みしていきましょう! あ、あの人とかどうですかね?」


 旬は自らを鼓舞するように大きな声を出し、聴き込みをしに目の前の子連れの女性に向かって走り出した。

 

 旬の後ろ姿が輝いて見える。純粋で元気な姿を見て、なんだが俺の心も晴れていく気がする。




「キャーーーーッ!!!」


 俺が旬のあとを追おうとしたとき、突然後ろから悲鳴が聞こえた。

 旬もその声の方へと振り向く。


「ハァハァハァ…… 誰かぁーー! 誰かぁ……」


 小太りの中年女性が全力でこっちへ走りながら助けを求めている。


「おばさん! どうしたんですか!?」


「ハァ、ハァ……私の……ハァハァ……キョロちゃんが……ノゲムに……」


 息を荒くしながら、精一杯説明しようとしている。

 少ない文字数に一瞬戸惑ったものの、何が起こったのかすぐに想像ができた。「キョロちゃん」というのはきっとこのおばさんのペットなのだろう。上下黒の半袖短パンに、空のビニール袋と水の入ったペットボトルを持っているところから、犬の散歩中にノゲムに襲われたのだろうことが分かる。


「旬! この人を安全な場所に!」


「はいっ!」


「おばさん、その……キョロちゃんはどこに?」


 おばさんは後ろを向き、まっすぐ指を差した。


 俺はおばさんを旬に預け、彼女の指差す方向へと走り出した。




 ペットが被害にあったとするなら、それは今俺たちが捜査している放火事件によるものの可能性が高い。

 その想像どおり、進んでいくとだんだん焦げ臭い匂いがしてきた。


「ガァァァァ……」


 匂いのする方へさらに走っていくと、高架下のトンネルへ辿り着いた。そこには燃えている何かがそこにあり、そばにはノゲムがいた。

 体は溶岩のようにドロドロしていて物体の形を保っておらず、足のようなものも見えない。

 だが、視界にはそんなノゲムの姿よりも驚くべきものがあった。


「……」


 ゲットリッダー・イージスだ。トンネルの奥で立ったまま何もせず、ただノゲムを見ているだけだ。


「おい! イージス! これお前がやったのか!!」


 叫ぶが、イージスは返事もせず、肩をすくめ両手を上げ、おどけてみせる。


 くそ……あいつに何を言っても埒が明かない。

 とりあえずこのノゲムを倒さないと……


change(チェンジ) Getrider(ゲットリッダー) Norma(ノーマ) Union(ユニオン) Scallopsracco(スカロプスラッコ)


 俺はノーマに変身した。


「はぁぁ!」


 俺はホタブレードを召喚し、ノゲムを斬りつけた。一瞬ノゲムの体が裂けたように見えるが、裂かれた体は下から上へ、ヌルッと合わさり、元の体へと戻ってしまう。


「なに!?」


 そうか、こいつの体はマグマ状だ。体を斬ってもまたくっつくだけで、意味がない。


「マァガァァァ!」


 ノゲムが全身から炎を吹き出す。


「くッ!」


ボォン!


 俺は咄嗟にホ盾を召喚し、炎を防ぎ、ノゲムとの距離を置く。


 盾を見ると、防御面のあちこちがドロドロに溶けていた。

 これほど高温度の炎、どうすれば……


 奥にいるイージスは依然として突っ立ったまま、こちらに加勢することもない。


ザンッ


 ノゲムとの距離を保ちながら戦法を考えていると、突然鋭利な刃物で斬られるような激痛が俺の背中に走った。


「ウァァ!」


 俺が苦しみ、膝を付くのと同時に、何かがノゲムに斬りかかるのが見えた。


 黒いボディに青のアーマー、黒のマントを付けた、ゲットリッダーがそこにいた。


「おい! お前何すんだよ!」


 俺は叫ぶが、そいつはノゲムと戦っている。


「おらァァァ! こんなザコ殺してやる!!」


 ゲットリッダーが強気なことを言いながら、持っている2つのダガーで戦うが、俺のときと同じく、ノゲムは攻撃をすり抜ける。


「無闇に戦ってもダメだ! 俺が水の技を出すから、そこをどけ!」


attack(アタック) skill(スキル) 発動 Shadow(シャドー) bullet(バレット)


「ウァァァ!」


 俺は立ち上がり、戦闘に入ろうとした。しかし俺の身に、イージスが発生させた闇の球体が当たった。俺は吹き飛ばされた。


「くっ……!」


 倒れながらも前を見ると、イージスはノゲムどころか、もう一人のゲットリッダーに向かって大剣を振るう。


「ッ!」


 ゲットリッダーは急所を免れたのか、マントだけが破かれ、すぐにイージスと距離をとる。


「マガァァァ!」


 ノゲムは二人のゲットリッダーを見ると、ドロドロな体を揺らしながら、ノソノソとその場から逃げていく。

 イージスはそんなノゲムに目を向くことなく、目の前にいるもう一人のゲットリッダーをじっと見ていた。


 なんなんだこれは……今こんなときにゲットリッダー同士が争ってる場合じゃないだろ……新たな被害者が出るかもしれないのに、イージスはなぜノゲムを逃がすようなことをするんだ……


「おいてめェ……今俺に攻撃したよなぁ? もしかして俺に喧嘩売ってんのかぁ? えぇ?」


「今から僕はアンタに危害を加える。ただし、今大人しくすれば、命だけは助けてあげるよ?」


「んだとォ……? ハァンッ、返り討ちn……」


ウゥゥゥー……


 遠くから消防車のサイレンが聞こえ始めた。

 マントのゲットリッダーはその音を聞いた瞬間、天高く飛び、俺の視界から消える。

 イージスはその先を目で追い、そいつを追おうするが、俺はなんとか身を起こし、イージスの腰にしがみつく。


「おいッ! お前何してんだよッ! なんでノゲムを倒そうとしないんだよッ! もしかしてお前がノゲムを使って事件を起こしてるのか!? なんのためだ! 目的はなんっ……ぐァッ!」


 イージスが俺の肩を持ち上げ、俺のみぞおちにイージスの膝蹴りが入る。


「ハァッ……ァ……!」


 俺は呼吸が上手くできず、ただただ地面を見続けることしかできない。


 タンタンと、ここを遠のいていくイージスの軽い足音が高架下に響く。


「大翔っ!!」

「潮田くん!」


 まもなくして、麗華と金房さんの声が聞こえてきた。


「クソッ! 燃えてるぞ……!」


 田上さんと中野さんも来た。麗華と金房さんが俺の身体を起こしてくれ、現場から少し離れたところまで連れてくれた。







 やがて消防車も到着し、消火活動が行われた。火が燃え広がることはなかったものの、おばさんの飼い犬は焼け焦げ、既に死んでしまっていた。

 変わり果てた飼い犬を見るおばさんの姿は、とても見ていられなかった。

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