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ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第6話 [動物は大切にしないとな。]
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早く行動しないとな。 ー潮田大翔ー

「と、いうわけだ。そうと決まったらみんなでこの事件を解決しようじゃないか! なぁ!」


 金房さんが俺の肩を強く叩く。とても痛い。


 8月ももうすぐ終わりそうな今日、昼の1時。お腹も空き始めるような時間だが、俺と麗華(れいか)は金房さんの探偵事務所に呼び出され、ペット連続焼死事件の調査に協力するよう言われていた。そこには(しゅん)もいるが、今のところ愛生(まき)ちゃんは見当たらない。

 

 金房さんによると、この事件はペットのみを狙った放火事件のようで、いずれも家族がいなくなったところを狙われているらしい。既に4件、同じような事件が続いているが、いずれもこれといった容疑者が見つからず、かといって事故であるという痕跡も見当たらず、燃え広がり方が異常に早い様子からも、ノゲムの仕業だと思われる事件だというのだが……


「ちょっと待ってください金房さん。もちろん事件を解決したいのは山々ですけど、刑事さんがいるのなら俺たちは不要じゃないですか?」


 金房さんの後ろには年配の人と若い人、2人の刑事さんが立っている。

 年配の刑事さんの顔は怖くて、俺は目を合わせることができないし、若い刑事さんは挨拶以降一言も喋っていない。


「ノーノーノー。残念ながら田上たち捜査一課は捜査から外されてしまっている。もうこの2人は表立っての捜査ができない」


「おい金房、確かに俺は探偵の力も必要だとは言った。たださっきからこいつらを見てると、まるで緊張感が感じとれない。こんな若いやつらが本当に役に立つのか?」


 腕を組んでいる田上さんが低い声で話す。


「フフフ……田上は何も分かっていないな? 大翔くんはゲットリッダーだよ? ノゲムに関しては専門家だ。それに他のみんなも優秀だよ、ねぇ?」


「はい! 一生懸命やらせていただきます!」


 旬が威勢よく言う。


「私も大翔がやるならやります。マネージャーなんで」


 麗華も言う。

 もう俺もやらないといけない空気になってしまった。期待も少し大きすぎる気がする。部活も勉強もそうだが、今までの俺の人生で、こういう「期待されている状況」の中で上手くいった試しがない。普通に自信がない。そもそもこういう仕事は俺なんかよりも他の人の方ができるのではないか? 大空さんとかがいれば一発で解決できそうな気がする。そっちの方が、この町のためにもなると思うが……


「も、もちろん俺もやりたいです!」


 俺は本音と真逆のことを言った。


「ほらぁ、ノゲムの専門家もこう言ってるし。人は多いに越したことはないだろう?」


 金房さんが説得するが、田上さんは依然として険しい表情のまま、俺に近づく。


「こんな弱っちいやつがゲットリッダーなのか? ほんとにこいつが化け物倒せんのかよ。あァン?」


 田上さんがなめまわすように俺を見る。恐くて、冷や汗が止まらない。


「でも、その火事がノゲムの仕業だとして、その犯人はどんな理由でペットだけを殺してるのでしょうか……」


「あぁ? それが分かんねぇから捜査するんだろうが……」


 田上さんの矛先が旬に向く。

 旬には悪いが、少しホッとした。


「あっ……そうですよね。すみません……」


「おう……」


 旬がひどく驚くこともなく、潔く謝った。田上さんはそんな旬の様子が意外なものに感じたのか、少し戸惑っているように見える。

 なんというか、やっぱり旬はどこか中学生らしくない。もちろん良い意味で、だ。こんな恐い人にも臆さない度胸をもっている。まだ15歳なのに、人との接し方が上手い。単純に憧れる。


「あっ! そういえば自分、ここに来る途中に聞き込みしてたんですけどね……その、気になる情報があってー……」


 突然中野さんが話しだし、胸ポケットからメモ帳を取り出す。


「火事が起こった時間、現場付近で黒いフードをかぶった怪しい人物を見たという人がいまして。なにやら白い仮面を被っているという証言もありまして……」


「えっ……」


 黒いフードに白い仮面。俺には身に覚えがあった。


「ん? 潮田くんどうしたのかね?」


「あいや、イージスです。あいつ、黒いパーカーを着ていて、そのフードをかぶって、白くて不気味な仮面を付けているんです」


 イージス。このまえ、隼瀬(はやせ)の起こした事件の真相を知っていたやつだ。結局あれからというもの、あいつが事件を知っていた理由を聞いてはいなかった。てっきり俺は、イージスの目的が俺たちと同じ、ノゲムを倒すことであると思っていたが、今回の事件に関わっているとするともしかして……


「おい、なんだそのイージスってヤツは?」


 田上さんがさっきと同じように恐い顔をして聞いてくるが、今度は怯えている場合ではない。


「そいつはゲットリッダーで、このまえの失踪事件の真相を知っていたんです」


「彼が潮田くんに真相を教えたことで、事件の解決へと進んだんだ」


 金房さんが俺の話のフォローをしてくれる。


「俺はイージスが、ノゲムの使役装置についての何かしらを知っているんじゃないかって思うんです。だとしたら、今回の事件にもイージスが関係しているのかもしれない。それにこれは人から聞いた話なんですけど、イージスは正陰(しょういん)コーポレーションともなにやら怪しい関係にあるらしくて……もしかして刑事さんたちが捜査から降ろされたのかも……」


 田上さんの顔がより険しくなった。恐らく、イージスに対しての嫌悪感だろう。


「今までの話を総合すると、今後はイージスという人物を参考人として捜査していくのが良いのかな?」


「あぁ……そうだな。その方針でいこう」


 金房さんが捜査方針を提案し、田上さん、中野さんも頷く。


 俺は金房さんの優秀さを改めて実感した。

 最初に、金房さんが元刑事だと知ったときは、なんだか驚いた。失礼かもしれないけど、金房さんのあのひょうきんさからは警察官のような面影は感じとれなかったからだ。でも、こうして現役の刑事さんと連携している様子を見ると、こんな金房さんも優秀な刑事だったんだなと実感できる。


「よし! では手分けして調査しよう! 田上と中野は、自分たちが刑事であるということをあまり言わずに捜査するんだ」


 あたかも今すぐやるかのような言い方に驚く。


「え、今やるんですか?」


「ああ、そうだが?」


「なんか予定あるの?」


 麗華が突っ込むように言った。


「いや、予定はないけど……あまりにも急すぎたから……」


「小僧、そんな悠長なことは言ってられねぇぞ。もしかしたら、今この瞬間にも5件目が起きているかもしれねぇんだ。捜査に『早すぎる』はねぇんだよ」


 田上さんは俺に説教するように言った。

 確かに、田上さんの言う通りだ。死んでいるのが人じゃないとしても、大切なペットの命が奪われ、悲しんでいる人が現にいるんだ。そんな人をこれ以上出さないためにも、早く犯人を見つけないといけない。

 それに今は犬猫の被害だけだが、そのうち人にも危害が加えられるかもしれない。そうなったら洒落にならない。最悪の事態を避けるためにも、俺がゲットリッダーとしてやるべきことを果たすしかない。


「分かりました……じゃあ行きましょう!」


「うん!」




 こうして俺たち6人は、ペット連続焼死事件について手分けして調査を始めることとなった。

 早くこの事件を解決させて、これ以上悲しむ人が出ないようにしないといけない。そして、今度こそイージスの正体を突き止めなければ。

 そう俺は決意し、調査に向かった。


 その決意が、いとも簡単に打ち砕かれるとも知らずに……

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