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ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第5話 [前だけ見て進むのも難しいよね。]
42/76

調査結果の報告 ー金房佑樹ー

『この度、世田輪(せたがわ)区内の公園にて起こりました連続誘拐事件、並びに帝頂辺天大学キャンパス内で起こりましたノゲム大量発生事件に、弊社が管理していたキーが使用されたことにつきまして……』


 テレビでは昨日行われた、正陰コーポレーション社長、陽園真道(ひぞのまさみち)による謝罪会見が、ニュースで流れている。

 今のところ表層的な内容しか語っておらず、他に何か隠しているものがあるのではないかと、私は疑っている。


 あのノゲム大量発生から2日。一大学教授の起こした悲惨な事件で、32人の死者が出ていたことや大学の施設管理状況、正陰コーポレーションのキー管理など、いくつもの問題が明らかとなった。

 事件の犯人は隼瀬慎也という男だった。潮田くんによると、隼瀬は追い詰められた挙げ句、大量のノゲムを召喚し、その結果怪我を負ったという。隼瀬は未だ警察の取り調べを受けられる状態ではなく、自白はまだないが、警察の捜査により事件の真相は明らかになりつつある。全てが明るみに出るのも時間の問題であろう。


 私の事務所、向かい合う二つのソファ。私の前には、潮田大翔くん、安城麗華くんがいた。

 潮田くんは、私から見て左側、彼から見て右側にあるテレビの画面を数秒見ると、顔を私に向けた。


「それで、横常さんのご両親は……」


「ああ。礼人さんがゲットリッダーであったということもあり、ある程度の覚悟はしていたらしいが…… なにせご遺体も残ってない状況だからね、ご両親はとても……うん、見ていられない状態だったよ……」


 私は昨日、今回の調査結果を横常礼人さんのご両親に話した。

 依頼内容は「礼人さんの行方を探すこと」だった。結果は「ノゲムにされてしまい、既に亡くなっていた」という、不甲斐ないものとなった。当然、報酬は遠慮させていただいた。たかが探偵である私だが、“行方不明者を無事にご両親の元へ届ける”ことが、人の幸せのために働く者としての使命だと思っていた。それができなかった以上、対価は受け取れない。


「そうですか……すみません、その場にいれなくて……」


 潮田くんは下を向くと、落ち込んだように言った。


「いや、いいんだ。君がー……礼人さんが変化したヒューマンノゲムを倒したということは、公に明かされていない。そもそもその情報は、イージスという怪しい者から得たのだろう? 隼瀬の自白はまだないのだから、君が倒したノゲムが、必ずしも礼人さんが変貌したモノだったとは限らない」


「それでも、俺はご両親に……」


「やめなさい。これ以上君が何をしてもご両親は納得しないさ。冷たい言い方かもしれないが、これから誰が何をしようが、32人もの命が亡くなった事実に変わりはないんだ」


「はい……」


「それよりも君は……他のゲットリッダーと協力しながらも、大量のノゲムによる被害を最小限に食い止めたじゃないか。今は、失った人の数よりも、救った人の数を大事にした方がいい……」


 潮田くんが泣きそうな目で、私を見る。

 横にいる安城くんは心配そうに彼を見ている。


「もちろん過去の事件を忘れないことは大切だ。しかし過去にとらわれすぎて、これから起こる事件を見過ごすのでは意味がないだろう?」


「……はい……分かりました。二度とこんなことが起こらないように、これからもゲットリッダーとして頑張っていきます……」


 私が話してからしばらくの間があり、彼の目が、強く輝くような目に変わったような気がした。

 そんな表情を見て、ひとまず安心することができた。


「よし! そうと決まったら、これからも私達と協力して、この日本を! いや、この世界を守っていこうじゃないか! な!」


「はい! ……ん? 今、私“達”って……」


 潮田くんが私の言葉にひっかかったとき、事務所の奥から2人の足音が聞こえ、ドアが開いた。

 団子ヘアが特徴的な可愛らしい少女、灰東愛生(はいとうまき)くんと、灰色のパーカーを着ている、私服姿の炭岡旬くんが部屋に入ってくる。


「あ、おはようございます」

「おはようございます」


 2人の姿を見て、潮田くん、安城くんが目を丸くする。


「え……ど……な、なんでここにいるの?」


 潮田くんが戸惑いながら2人に問う。

 そうか、まだ彼らには言っていなかった。


「あぁ~ここ、2階は人が住めるようになっていてね、炭岡くんが()()()()()助手になりたいと言うし、愛生ちゃんも怪我が完全に治ってないと言うんでね、ここに居候させることにしたんだよ。ちなみに、前から私もここに住んでいる」


 事情は説明したが、目の前の大学生アベックの驚きはまだ収まっていないようだ。


「いや、中学生とはいえ、一緒に住むのって……」


 安城くんが躊躇いながらも言うが、この中学生アベックにはなんのことやらといった感じだ。


「ん……? あ! あぁ~大丈夫! そこら辺は私が責任をもって管理するさ! なぁに、この私さえも19で()()したんだ。そのくらいまでは阻止させてもらうよ! ハッハッハッハッハッ!!」


 高笑いをする私を見て、大学生アベックは苦笑いし、中学生アベックは相変わらずキョトンとしている。


 私は優秀な助手を得ることができた。これで今後の探偵活動は軌道に乗ることだろう。ゲットリッダーである潮田くんが協力者なら、我が事務所の信頼は高まり、依頼も増えること間違いなしだ。そうすればいつか、この土地のローンも返せるかもしれない! ローンを返したら、今度は愛知や大阪など、二つ目、三つ目と事務所を置いていき、事業を拡大していこう! 

 うん! なんだか全てが上手くいくような気がしてきた!


 優秀な助手と協力者を得たことで、私は期待に胸を膨らませた。

 外からはチュンチュンと鳥の鳴く声がする。私を応援してくれているかのように、その声はしばらくの間続いた。

 これにて第5話完結!

 次回、ペット連続焼死事件発生! 犯人はイージス!? ご期待ください!

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