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ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第5話 [前だけ見て進むのも難しいよね。]
39/76

強行 ー大空心助ー

「ちょっと! 困ります! せめてお名前とご用件を!」


「そんな暇はない。隼瀬とかいう男の研究室は6階だな」


 俺は「↑」のボタンを押し、エレベーターを待つ。


 潮田大翔から話を聞いた次の日の今日、俺はこの帝頂辺天(ていちょうへんてん)大学に来ている。隼瀬を問い詰めるためだ。


「止めなさい!! 警察呼びますよ!」


 そして現在、女性の職員2人が俺の両腕に、警備員2人が俺の両足にしがみつき、強行突破を試みる俺の邪魔をしてくる。


「呼びたいなら呼べばいい。どうせなら、ノゲムが出現する可能性がある、という内容でよろしく頼む」


「何を言っているっ!! ふざけるな!」


 ドアが開いた。俺は歩き、エレベーター内に入る。ついでに邪魔者もそのまま入る。


ピンポーン


 数秒経ち、6階に着いた。


 エレベーターを出て、隼瀬の研究室の前まで歩き、ドアに手をかける。しかし、鍵がかかっていた。

 その一方、邪魔者は懲りずにまだ俺にしがみついている。


「おい、鍵はどこだ」


「ふざけるな!! これ以上好きにはさせない!」


「お前じゃ埒が明かない。おいお前、鍵はどこだ」


 俺は、右腕にしがみつく女性職員に聞いた。


「知りません! これ以上なにをやっても無意味なので、ご用件を言ってください!」


「鍵を探す暇はないか……なら……壊す」


 俺は重い右腕を動かしながら懐からチェンジャーを取り出し、腰に装着する。


「へ!? ゲ、ゲットリッダー!?」


 左足にいる警備員が言った。


「傷つきたくないなら離れろ。最悪死ぬぞ」


 邪魔者たちが驚き、一斉に俺から離れる。


get(ゲット) rid(リッド)


change(チェンジ) Getrider(ゲットリッダー) Rorufe(ロウルフ) Union(ユニオン) Shootomanaihina(シュートメナイアヒナ)

weapon(ウェポン) 転送 Swordfishhorn(ソードフィッシュホーン)


ガン ガン ガン ガン ガン ガン


 俺は右腕に転送された武器で、6発ほどドアに刺突した。


メキメキィ……


 穴を起点としてドアを破り、室内に突入する。


「お前が隼瀬慎也か」


 無音で、気持ち悪いぐらい清潔な部屋。そこにはなにやら多くの機械がある中、白衣を着た男がただ俺だけをじっと見ていた。


「まさかあなたが来るとは……何度も邪魔をしたつもりでしたが、もう少し執拗にやるべきでした……」


 隼瀬は俺から目を逸らすと、ゆっくりと歩く。目線は大きな棚のような形の装置にあった。


「お前は何人殺した? どれぐらいの人を傷つけた? どのように……何故……こんなことをした?」


「黙ってくれませんか? これから死ぬ人間に私が教えることは何もない。あなた如きに私の希望は理解できない……」


 隼瀬は1つのキーを持ち、装置に挿す。


「俺は死なない。ノゲムが全滅するまで、死ぬわけにはいかない」


「この研究はいつか有益な未来へと繋がる。あなたのような頭の回らない人間には分からないでしょう」


「分からないな、分かるわけがない。幾人かの人が望まずして死んだ結果得た未来など価値のないものだ。お前の描いている未来とやらがどんなに大層なものかは知らないが、もっと利口な人間であれば、誰一人犠牲にならない、より効率的な方法を考えることぐらいできるはずだ」


 俺の言葉を聞き、隼瀬は笑みを浮かべる。


「植物、動物がもつ毒は、それを食べた人間がいなきゃ発見できなかった。医薬品の開発には人の命が犠牲となる場合がある。この世は誰かの犠牲で成り立っている。その犠牲でよりよい未来を作れるのなら、数少ない命が消えるのも、それは必要悪だと言えるでしょう」


 なるほど、この男は屁理屈が得意なようだ。だが俺は、そんなものを真に受けるような人間ではない。

 会話しても無駄だ。さっさと終わらせよう。


「なら俺にとっての必要悪はお前だ。俺がここでお前を殺し、悲しみの連鎖を断つ」


 隼瀬の顔からは笑みが消え、眉がつり上がり、鬼のような形相に変わった。


「だからァ……殺されるのはお前だとォ……言っているだろォ!!」 


 隼瀬が大きな装置のスイッチを押す。


シュゥゥゥン…… バタンッ


「クワァァァァァ!!」


 突然ドアが現れ、開き、両翼3メートルはある鷲型のノゲムが出現した。おそらく第二形態だ。


「私の手で……未来を邪魔する壁を……壊すッ!」


 ノゲムが周囲を飛ぶ。


「くッ……!」


 風が強く吹き、室内にある書類がバラバラと舞う。


「クワァァァァ!」


 ノゲムは隼瀬の元へ向かう。


 ノゲムが隼瀬の身に当たろうとしたその瞬間、ゲットリッダーのアーマー生成と同様、ノゲムは急速に細胞分裂し、隼瀬の体に吸収された。


「グゥゥゥ……」


 俺の目の前には鷲の()()がいた。顔は白、胴体は黒の羽毛で覆われていて、黄色い嘴は鋭く尖っている。腕は大きな羽のような形状をしていて、足には大きな鉤爪がある。それは、ノゲムの姿と人の姿を併せ持つ化け物だった。


「クワァァァァ!!」


 ノゲムは、鷲のような甲高い声を上げながら翼を広げ、迫ってくる。


ガシィッ


「クッ!」


 ノゲムの鉤爪が俺のアーマーを引っかけ、俺を持ち上げる。

 俺は抵抗するも、こいつの力は強く、離れることはできない。


「ハッハッハッ! 私は私の体に最も合致するノゲムを厳選したぁ! お前が殺してきた、並のヒューマンノゲムとは違う!」


 ノゲムは室内を飛び回った。俺の視界がグルグルと回る。


パリィィィン……


 ノゲムがガラスを割り、俺は外に連れ出された。

 ノゲムは翼を操作して体を右往左往に動く。


ドガン! ドガン!


「うぐッ……!」


 大学構内の建物、数々の外壁に俺の体がぶつかる。


「ッ……」


 飛行中のせいでブレながらも、俺はキーを挿した。


attack(アタック) skill(スキル) 発動 grass(グラス) tie(タイ)


 俺は地面に向けて手を伸ばした。たちまち付近の雑草がツタのように伸び、それがノゲムの足に絡み、動きを止める。


「ハァッ!」


 俺は隙をつき、ノゲムの拘束から抜け出した。20メートルはあるだろうか。俺はかなりの高さから落ち、着地した。


バサバサッ!


 ノゲムは足に絡み付く鞭を力づくで引きちぎると、すぐにこちらへ向かって急降下してくる。


「ッ……!」


 ノゲムが目の前に来た。俺はノゲムの体を突こうとしたが、ノゲムが寸前で方向を変え、針は空を切った。


「クワァ!」


 ノゲムは旋回し、またこちらに向かってくる。


「ハァッ!」


 俺は再度針を突き出したが、ノゲムはまたもそれを避ける。


「クソッ……」


 これでは時間の無駄だ。アタックスキルを発動しようにもこいつのスピードでは避けられるだけ。悔しいが、俺の装備では相性が悪い。


ヒュンッ

 

 そう思った瞬間、依然として空を飛んでいるノゲムに何かが飛び付いた。


「グラァァァァァ!」


 予測できない動きと、荒々しい声色。ゲットリッダー・ティラノだ。ティラノはノゲムの体に乗りながら、首周辺を「レックスファング」、左手にはめている牙の武器で、ひたすら“噛み”続けている。


「クワァァァ!!」


 やがてノゲムはもがき苦しみ、地面に向かって降下してきた。


 俺はノゲムの落下地点を予測し、そこに向かって走った。


「ハッ!」


 ソードフィッシュホーンがノゲムの体を擦った。


「クワァッ!」


ザンッザザザッー……


 攻撃は命中し、ノゲムは地面に擦れながら地面を転がった。


タッ……


 ノゲムが落下する瞬間、離れたのだろう。気がつくと、俺の右にはティラノがいた。


「さすがだな。アイツよりは使える……が、子どもに助けてもらうほどこっちも柔じゃない」


「うるせぇ! こいつはおれのえものだっ! だからおれだけでやる!!」


 腰までしかない背丈の子どもは、稚拙な言葉を使いながらも威勢よく言い返してくる。


「そういうわけにはいかない。あいつがどう考えようが俺はお前が戦場にいることを好まん」

 

「うるさい! おまえがきめるな! バカ! クソ! ゴミ!」


 だめだ。言葉が通じない。

 どうしたものかと考えていると、前から怒りの声が聞こえてきた。


「ふざけるな……! 私が……お前らにィ……」


 ノゲムの体からはパラパラと土埃が落ち、一緒に羽も舞っていた。


「こうなったらッ……!」


 ノゲムの右手には、いつの間にか四角い鉄の塊があった。


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ……


 融合装置の小型版だろうか、ノゲムはその装置にキーを挿し、何度も何度も回した。


「おい、何をしてるッ! やめろ!」


「ハッハッハッ……私の研究は進んでいる……装置の小型化には成功している……野生のノゲムに簡単な指示を出すことも可能だァ……」


バタバタバタバタバタン……!


 何もない空間から無数のドアが開き、鷲型ノゲムの第一形態が数十匹と出現した。

 ノゲムの大群は何度も見たことがある。しかし、今俺の前にいるのはそれとはまた違う気色の悪さがあった。一体一体が全て俺とティラノをじっと見ながら、一律に、勢いよく俺たちへ向かってくる。


「ッ!」

「っ!」


 俺たちは身構えた。


バチバチィッ!!

 

 が、その瞬間、ヒューマンノゲムが持つ装置は火花を上げた。装置はガタガタと音を立てながら、小刻みに振動している。


「なっ……なんだっ……! 何が起こっているっ!? 私の装置は完璧なはずだ……!」

 

 ノゲムは自信に満ち溢れた声から一転、焦りながら声を震わせ、慌てた様子で装置を見回している。


「「「グルッグルグル……」」」


 数十匹のノゲムの体は一斉に痙攣をしだし、一律だったノゲムの動きはたちまちバラバラになる。


「「「クェェェェェ!!!」」」


 ノゲムは散らばり、バラバラの方向へ飛んでいく。


「くッ!」

「グゥ……!」


 数匹のノゲムが俺たちに襲いかかる。


「ハァッ!」

「グラァ!」


 俺たちは、迫り来るノゲムに立ち向かう。


「ウワァー!」

「キャァーッ……!」


 騒がしい羽の音とノゲムの鳴き声の中、微かに人の叫びが聞こえた。俺は声のする方を向く。


「た、助けてぇっ!」


 左の方向にある建物の物陰、数人の男女がノゲムに襲われていた。既に血を流している者もいる。


「クソッ……!」


 俺はその方向へ足を踏み出そうとするも、目の前には次々とノゲムが現れ、救出に行けそうもない。


「クワクワッ!」

「クワワワッ!」


 俺の視界の右端には、ノゲム同士で攻撃し合っている光景も見える。


「なんだこの地獄絵図はッ!」

 

 横にいるティラノの方を見る。こいつも山のようにいるノゲムに苦労している。


「このままだとッ……! あの時の二の舞だ……」


 俺はあの悲劇を思い出しながらも、無我夢中にノゲムを殺し続けた。

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