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ゲットリッダーズ  作者: 早尾アスカ
第5話 [前だけ見て進むのも難しいよね。]
36/76

ノゲムと人間の融合についてとその研究録 ー隼瀬慎也ー

 この研究は絶対に成功させなくてはいけない。

 人類の更なる発展のために。


 私はノゲムの可能性に目をつけている。

 世間はノゲムを害獣として恐れている。そして国は、「ゲットリッダー」とやらの、野蛮な文化を植え付けた。人々は現在、ノゲムというあらゆる可能性を秘めた生物を駆除することだけを考えているのだ。


 私は、そんな単純な思考に納得がいかない。

 人間は愚かだ。こんなにも人間を越える力を持つ、素晴らしい生物はいない。

 現在、ノゲムを制御する設備はないが、私の研究が成功すれば、将来、介護や建築、災害時の救助など、さまざまな分野において、ノゲムが活躍するであろう。


 私はノゲムのサンプルを数十体入手することができた。それを使い、ノゲムの細胞、遺伝子の構造を研究した。そしてその結果、私はノゲムと人間が融合できることを知ったのだ。そのとき、私はなんとも言えない高揚感を味わったのを覚えている。

 例えば、世界中に収容されている、生きている価値のない犯罪者たちをノゲムと融合させ、労働の指示下におくことができれば、私の望む社会を作ることができると考えた。

 しかし、ノゲムと人間が融合してから、必ずしも人間の脳が優先されるということの確信はなかった。


 そこで私は、実際に試してみることにした。


 藤木文雄(ふじきふみお)といったか、まずは彼を使用した。

 彼は私の研究室の学生だった。実験中、私の話をろくに聞かずに、単純な質問ばかりしてくる。

 そればかりではなく、彼は実験のない日も、私の研究室に来ては、どうでもいい世間話をしてくる。やれ友人がどうとか、好きな人がどうとか、私になんら関係のない話をしてくる。

 鬱陶しかった。私の頭の中に殺意が沸いていたのだ。


 やがて彼は身の上話をしてきた。親は事故で早くに亡くし、親戚に引き取られたがろくな生活も送れなかったと。彼は半ば泣きながら語った。

 しかしその話だけは面白かった。笑える話だった。プライベートの時間でもたまに思いだしては笑ってしまうほどだ。

 彼は親を亡くしたばかりに人の気持ちも考えられない、愚かな人間に育ってしまったのだ。実に愉快な話だ。片腹が痛くなる。


 これは良い。彼を実験に使ってやろう。今まで誰の希望にもなれなかった人間が、私の、人類の希望の一部になれるのだから、とても光栄なことであろう。

 私はそう思った。


 彼を実験室に呼び出し、睡眠薬で眠らせ、私の作った装置のカプセルに入れてノゲムと融合させた。

 実験は意外にも成功した。それどころか、彼の人間性、記憶を全て失くし、人の指示を理解できる知能、二足歩行の体、従来よりも大きな力を持った、完璧な生命体へと進化したのだ。私はこれを「ヒューマンノゲム」と命名した。


 私はそのヒューマンノゲムに人間を襲わせ、更なる人間のサンプルを集めることにした。

 その場所には“詩日都公園”を選んだ。この辺では珍しく人気(ひとけ)のない公園であり、サンプルの収集には絶好の場所であった。


 こうして私は人間を拐い、様々なノゲムと融合させ、研究を進めていた。


 だが、うまくいくことばかりではなかった。ノゲムのサンプルを集めていると、次第に公園にゲットリッダーが出現するようになり、私の生成したヒューマンノゲムを駆除するようになったのだ。

 それだけではない。やがて時間が経つと、最初に生成したものを初め、ヒューマンノゲムが全て、まるで溶けるように、黒く粘性のある液体に変化してしまうようになった。

 私は、この現象を人間のノゲムとの融合率の低さによるものであると考えた。

 そこで私はゲットリッダーに目をつけた。

 ゲットリッダーになるにはある程度のノゲムとの融合率が必要であり、その変身者をノゲムとの融合に使えば、問題が解決すると推測した。


 2030年7月3日午後11時、私はゲットリッダー変身者のサンプルを入手することができた。

 ゲットリッダーなら誰でもよかったが、偶然にも、私の勤務する大学の学生が釣れた。彼はとても弱かった。

 

 サンプルの入手までは上手くいった。しかし、融合させた瞬間、そのヒューマンノゲムは暴走し、研究室から脱け出してしまった。

 そしてそのヒューマンノゲムは後に、あるゲットリッダーが駆除をした。


 それから、私のサンプル収集を邪魔するゲットリッダーが増えた。

 私は公園でのサンプル収集を諦め、学生を実験に使用するようになった。少し荒っぽい方法であったが、そう簡単には表への情報の流出はされないだろうという確信があった。

 そして、そのヒューマンノゲムを特定のゲットリッダーに仕向けることにした。

 まずはゲットリッダー・ロウルフという男を狙った。彼は最も多くのヒューマンノゲムを駆除した男だった。だが彼にはあまり効果がなかった。仕向けたヒューマンノゲムは次々と倒され、結局失敗に終わってしまった。


 さらに数日後、ある男が私の計画を探っているとの情報が入った。

 その男は潮田大翔(しおたひろと)。前述の、暴走したヒューマンノゲムを駆除したゲットリッダーだ。


 私は憤りを覚えた。人類の希望となる研究を何故邪魔されなければいけないのか。どうしてゲットリッダーごときに……と。

 私は彼に2体のヒューマンノゲムを時間差で仕向けた。

 ゲットリッダーにはベルトの使用制限がある。これを使えば、それほど弱くない彼でも確実に殺せるだろう。

 この方法が成功すれば、さらにロウルフにも有効な方法であるということが証明される。彼を倒すにはこの方法が成功してからでも良い。


 やっとだ。やっとこれで、私の邪魔をするものは消える。私の研究を通常通り進めることができる。

 なんとしても、成功させなければいけない。人類の未来にかけて、私の実力を見せなければいけない。そのためなら多少の犠牲は不可欠である。


 誰にも、私の研究を邪魔されるわけにはいかないのだ。

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