もう逃げたくなるな。 ー潮田大翔ー
「ぐぁぁぁぁぁ!!」
俺はガードレールに叩きつけられた。
白い体毛のノゲムは依然として落ち着いた様子でいる。
「くそっ…… 必ず……お前を倒す!!」
俺は殴りかかった。が、ノゲムの角からいくつもの火球が射出され、俺の体にぶつかる。
「うぁあぁあぁぁぁ!」
俺はその場に倒れた。
『1minute 1minute 1minute 1minute……』
制限時間が残り1分であることを伝えるアラームが、チェンジャーから鳴り響く。
さすがにヤバい。このままだと、制限時間を待たずとも体が崩壊する……
「ファララララララッ!!」
ノゲムは奇怪な音を出しながら、倒れている俺をひたすらに蹴り続ける。
俺はどこまでも、どこまでも転がされた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……ぐぁっ!」
俺は残っている体を動かしてやっと、かろうじてノゲムを蹴りを避けた。
でもこれ以上は無理だ。アーマーの破片がボロボロこぼれ始め、体中は火傷や打撲で痛い。立つこともできないぐらいだ。
「ファララ! ファララ!」
ノゲムがゆっくりとこちらに向かってくる。気のせいか、笑っているようにも聞こえる。
「ファラララララララララァァァ!!」
ノゲムが一番大きな火球を発生させる。火球は俺の視界の全てを覆った。
もう終わりだ。俺はここで死ぬんだ……
俺は火球の明かりに目を細めた。
その瞬間、何者かが俺と火球の間に立ち塞がった。
最大の火球が“立ち塞がった者”に当たる。当たった瞬間の熱風が俺を吹き飛ばした。辺り一帯に壮大な爆音が響く。
俺は数メートル先へと転がった。制限時間がきたのか、いつのまにか俺の変身は解除されていた。
なんとか力を振り絞り、前を見ると、やはりゲットリッダーだろう。火球を受けた何者かがノゲムと戦っている。
信じられない。あんな大きな火球、無傷の状態でもかなりのダメージを負うはずだ。下手したら命も危うい。
それでも、目の前のゲットリッダーはピンピンしている。なんなら余裕さえ感じる。
「ファラララ! ファラララ!」
「お? どうしたどうした~、アンタの力はそんなもんかなぁ~?」
ノゲムは同じように火球を繰り出すが、ゲットリッダーは持っている大きな盾で軽々と弾き飛ばす。
辺りに火球が飛び散り、大量の煙が舞う。
『attack skill 発動 Iron attack』
ゲットリッダーはスキルを発動し、鉄の塊となった盾をノゲムに当てた。
ノゲムは遠くへ弾き飛ぶ。
「よ~し……じゃあそろそろ終わりにしよっかな~」
ゲットリッダーはチェンジャーにキーを挿した。
『attack skill 発動 Style change』
その瞬間、ゲットリッダーの顔周りに位置する破片が中心に統合、単眼の仮面に変化した。胴体にある鎧は腕と足に分散され、持っている大きな盾も、巨大な剣へと変形する。
「あんたの地獄、ここにきーめた!!」
ゲットリッダーは下に指を指し、声を弾ませ、スキップしながらゆっくりとノゲムに近づく。
「ファラララァァァ!! ファラララァァァァァァァァァ……!」
ゲットリッダーは大きな剣でノゲムを一突きする。攻撃を受けたノゲムはすぐに膨れ上がり、爆発した。
なんてパワーだ。スキルキーで技を繰り出すのではなく、ただの剣の一突きでトドメをさすなんて……
驚きも束の間、俺の目には更なる驚愕の光景が写った。
爆炎の中、姿を表したゲットリッダーは、“人間”を、“人”を引きずりながら、こちらへ歩いてくる。
「ちょうどいいやー、そこのあんた。公園の失踪事件について調べてるんだよねぇ? 僕がいいこと教えてあげるよ~」
ゲットリッダーは変身を解除した。黒いパーカーのフードを被り、白く不気味な仮面をつけている。
“仮面の人間”は、未だ倒れたままの俺の目の前まで来て、ひきづっている人間を放り投げた。
「この人、さっきのノゲム」
加工しているような無機質な声が平然と言う。
「はぁ……? 何言ってんだよ……この人が……ノゲムだって……?」
俺の心に、怒りが込み上がってくるのが分かる。
「またまたぁ~、頭の悪いあんたでも、このことぐらい予想できてんじゃないのー?」
「どういうことだよ! この人は何なんだよ! あの妙なノゲムは……何なんだよっ……!」
俺の頬に、何か冷たいものが流れてくるのが分かる。
「だからぁ~……こいつも、あんたが朝倒したノゲムも、数日前他のゲットリッダーと協力して倒したノゲムも、初めて倒したノゲムも、ヒトの特徴を持った二足歩行のノゲムはぜーーーんぶ……人がノゲムと融合した怪物だってこぉ~とっ!」
仮面の人間は平然と、能天気に答える。
「ふざけるな!! 嘘をつくな!! そんなことあるはずが……グハァッ!」
仮面の人間の足が、俺の顔面を当たる。
「うるっさいなぁ~ちょっとは静かに話してよー 唾が飛ぶじゃん……」
仮面の人間はハンカチで自分の足元を拭く。
「この人はー、帝頂辺天大学生命科の武内智史」
仮面の人間は武内智史という男の写真を出した。
「そして、あんたが朝殺したのが同じ生命科の近藤和夫、その前に殺したのが生命科大学院生の清水由紀子」
仮面の人間は、被害者の写真を次々と俺の目の前にばらまく。
「そんであんたが最初に殺したのが……同大学、同学科所属の“横常礼人”」
横常礼人の写真が、ひらひらと、ゆっくりと落ちていく。
まさか……あのノゲムが…… 俺が最初に倒した……いや、殺したノゲムが……
仮面の人間は俺の周りをゆっくり歩き、悠長に話す。
地面には、死体のそばに3枚の写真。
涙がただひたすらに流れ、当分は止まりそうになかった。
これにて、第4話終了です。
次回、第5話。大翔はどうなってしまうのか、ご期待ください。




