醜悪人間 ー若美佑月ー
コンコンコン……
「失礼します」
私はドアをノックし、社長室に入った。
社長は椅子に座りながら、私が今この世でもっとも嫌いな人間、“イージス”とお話をなさっていた。
「社長、只今戻りました」
私はイージスに目を向けず、社長だけをまっすぐに見た。
「おお、若美くん、わざわざご苦労だったね。そうそう、たった今彼が来てくれてね。先程の探偵について話をしていたんだ。せっかくだから君もお話したらどうだい?」
「いいえ、お言葉ですが、私はこのようなものを認めておりません。それに社長、彼はあなたを利用しようとしています。彼との手は引いた方がよいかと」
私はイージスの方を手のひらで指しながら、その一方でやはり彼の顔は見ず、社長へ訴えた。
「そのとおり! 僕は、こいつとあんたを利用してお金を稼いでるだけ。ただそれはー、この“社長さん”も同じでしょ?」
イージスは片方の眉を上げ、不気味な表情を浮かべる。
「社長に向かってこいつって……!」
「まあまあまあ、2人とも、そう喧嘩しないでくれよ。我が子どもたちの喧嘩は見ていられないんだ」
「はい、失礼いたしました」
私は頭を下げる。
「いやいや~ あんたの子どもになんてなった覚えないんだけど?」
イージスが社長のイスに軽々しく手を置く。
「いい加減にしなさい!!」
私が彼の手を掴み、取り押さえようとするも、彼はするりとかわし、距離をとった。
「ちょっと2人ともやめてくれよ、誰か来たらどうするんだぁ?」
社長は依然として椅子に座りながらも笑みをこぼして言う。
「失礼いたしました」
私は再度社長に頭を下げた。
ピーピー……
そのとき、突然イージスの持つ端末が鳴った。
「はあ~……また『ヒューマンノゲム』かぁ~ あ、しかもノーマが戦ってる」
「お、いい機会だ! イージス君、直ちに現場へ向かい、どうにかして彼の事件に対する調査意欲を消してくれないか?」
社長が椅子から身を乗り出し、イージスに言う。
「あんたに言われなくても行くよ。どのみちノーマにこのノゲムは倒せない」
イージスが無礼にもため口をきく。
彼は出口に向かい、退室の挨拶もせずに社長室を出た。
「社長、彼は危険人物です。早急に追放すべきです」
私は社長の方を向き、静かに忠告する。
「まあまあまあ、少し放っておこうじゃないか。私はこれからの展開が楽しみなんだ」
社長は高らかに笑った。
私は浅く頭を下げながらも、平静を保つよう努める。ふつふつと込み上げてくるイージスへの怒りを抑え続けながら。




