ゲットリッダー ー安城麗華ー
「ちょっと!! 速いよー!!」
突如としてノゲムを倒した“何か”を追う大翔。私も続いてあとを追いながら、前に向かって叫んだ。スーツとヒールのせいで、とても疲れる。
すると急に大翔が止まった。
「ちょっと! 急に止まっ……」
「しぃー!!」
大翔は前を見たまま、私の口の前で人差し指を出した。
大翔が向いてる方を見るとそこには、さっきのノゲムを一瞬のうちに殺してしまった焦げ茶色の何かがいた。
大翔は優しいから、あのノゲムの対処に困っていたが、私は「そんなに戸惑わなくてもいいのに」と思っていた。しかしあんな迷いもなく殺すのも、それはそれで恐ろしい光景ではあった。
その何かは昇降口の階段に座り、腰にあった装置に手を触れる。
私はやっと気づいた。この何かは「ゲットリッダー」だった。
ゲットリッダーは装置からキーを引き抜き、変身を解除した。
「え……まさか、あの子……」
「おいおい、マジかよ……」
私たちは驚きのあまり、声が出てしまった。
そこには、白い半袖の体育着に、赤い半ズボンを着ている小さな男の子がいた。さっき砂場で一人遊んでいた男の子、たつやくんだった。
「おい!! だれだ!!」
私たちの声に気づいたたつやくんは、幼くて高い声を発した。
「いや、文句を言いたいのはこっちだよ! なんできみが、ゲットリッダーなんかやってるんだよ!」
大翔が、少し叱るように言いながら、たつやくんのもとへ歩み寄った。
私も大翔の後に続く。
「そうだよ! なんで……」
「うるせぇっ! だまってろ! おまえらにはかんけいないだろ!」
たつやくんがまた同じように叫んだ。
「いいから。ちょっとそのチェンジャー渡して?」
大翔はたつやくんからチェンジャ-を取ろうとする。
「ふざけんなっ!! いやだ!!」
たつやくんはチェンジャ-を渡しまいと抵抗する。
私は驚きすぎて、何もすることができなかった。
なんでたつやくんが? まだ幼稚園児なのになんでゲットリッダーになれるの? どうやって装置を……?
頭に次々と現れる疑問を、私は処理しきれないでいた。
大翔とたつやくん、2人がチェンジャ-を引っぱり合っていると、私たちが出てきた隙間から、声が聞こえてきた。
その声を聞き、大翔の力が弱まった瞬間、たつやくんはチェンジャ-を取り返し、いつの間にか肩にかけていた通園バックにそれを入れた。今思えば、砂場で遊んでいるときも、そばには黄色い通園バッグが置いてあった気がする。
「ちょっとどうしたんですか~~? ……ってたつやくん!! なんでこんなところにいるのっ!?」
ふれあい会でお世話になっていた、たつやくんのクラスの先生、渡辺先生が、たつやくんの姿を見て驚いた。
「ちょっと、なんで……」
「あ……あの、あのぉ~……そ、そのぉ~……」
大翔が挙動不審になりながら、必死に応えようとしている。
私が代わりに説明しなきゃ。でも、今の出来事をどう説明する? 幼稚園児がゲットリッダーだなんて信じてくれる? そもそも、たつやくんは正体を隠しながらゲットリッダーをやっているわけだし、このまま正直に言っても、問題の根本的な解決にならないかもしれない。
「いや……あの……あれです! さっきのゲットリッダーを追ってたら、たつやくんがここにいて……ゲットリッダーは! ……あっちにいっちゃったんですけど……」
私は必死に言い訳をし、嘘をついた。このままではたつやくんのためにならないと思ったからだ。
「あ……あら、そう?」
言い訳を聞きながらも、なんとか納得したのか、渡辺先生はたつやくんの方を向く。
「たつやくん、みんなのところ行こっか。ね?」
渡辺先生はそう言うと、たつやくんの手をとってまた遊び場へと歩みを進める。
私たちも渡辺先生の後に続きながら、たつやくんのことについて小声で話し合った。
「おい麗華……どうすんだよ……!」
「分かんないよ……! 分かんないけど……なんでたつやくんがゲットリッダーをやっているのかがそもそも分からないんだから、やみくもに先生たちに言っても何にもならないから……」
「いや……でも……」
「とりあえず! 私たちで可能な限り、たつやくんについて調べよ? まずはそれから」
「う……うん、わかった」
大翔は怪訝な顔をしながらも、ひとまず私の提案には乗ってくれる。
とりあえず、私が渡辺先生たちに話を聞くことから始めようということで、話は一旦まとまった。




