加減 ー大空心助ー
遠くの騒がしい声を背に、俺はバイクに乗って施設を出ようとする。
「おーい! 大空ー!」
後ろから多幾が話しかけてきた。
「今日はもう帰るのか?」
「ああ。やることも大してないしな」
俺は多幾の顔を見ずに、バイクにまたがる。
「そうか……」
俺はそのままエンジンをかける。
「ありがとな大空」
「礼を言われるほどのことをした覚えはない」
まだ会話が続くのかと少し呆れながらも、俺は多幾の方へ振り向いた。
「あんな作戦をやらずとも、お前ならギアノゲムの第2形態ぐらいすぐに処理できただろ? なんでわざわざ……」
「さあな。そんなこと気にしてる暇があるなら……あいつらのバカさ加減を少しでも直せ」
俺は多幾の後ろにいる、二人のバカを顎で指した。
多幾は黙って後ろを見、少し黙る。
「……もう話がないなら帰るぞ」
「ん? あぁ、うん。引き止めて悪かったな。じゃっ」
多幾は右手を挙げ、掌をこちらへ向けた。俺はそのジェスチャーに何も応えなかった。前を向き、アクセルを回してそのまま施設を出た。
今日のような、こんな充実した感情は久しぶりであった。
あいつらはこの先どんな人生を送るだろうか、どんなゲットリッダーになれるだろうか。
どちらにせよ、あいつらにはあいつらの選択肢、この先歩んでいく未来がある。間違えても、“あの子たち”のようになってはいけない。俺はもう二度と、誰かの未来を消したくはない。
俺は、ほんの少しだけ舞い上がった気持ちを、いつも自分の胸にある辛く痛い信念で抑えこんだ。




