作戦成功って、考える人だけのおかげじゃないよな。 ー潮田大翔ー
俺は昨日の現場にいた。
あのときから1日しか経っていないのに、俺の覚悟は昨日までの生半可なものとは違う。
俺は決めたんだ。人々を守るために戦うと。
「キュルキュルキュルキュルキュル……」
錆びた鉄が擦れるような、鈍い音がこっちに近づいてくる。
「もう来たのか……よしっ!!」
俺は軽く準備体操をし、深呼吸を一回してから、チェンジャーを腰に装着。ノゲムキー、スカロプスラッコキーを挿入、回した。
「get rid!!」
『change Getrider Union Scallopsracco』
「ディメンションワールド」と呼ばれるノゲムが収容されている世界と、この世界とを繋ぐ“扉”が開き、あのラッコノゲムが現れ、細胞分裂。俺の紺のアンダースーツにアーマーが装着された。
俺の体は「ゲットリッダー」へと変わった。名前はまだない。
俺が変身完了したのとほぼ同タイミングで、施設の柵からノゲムが出てきた。3体のギアノゲムの歯形が組み合わさり、連動し合っている。予想通り3体のノゲムが合体していた。「ギアノゲム第2形態」だ。
「キュルキュルキュルッ!!」
ノゲムがこちらへ迫ってきた。しかし、俺は抵抗しない。それが俺の役目だ。
「キュル……ガァァァ!!」
突如バイクに乗ったゲットリッダーがノゲムに体当たりを食らわす。
ノゲムは吹き飛び、火花を散らせながら地面に転がる。
『weapon 転送 Swordfishuhorn』
ノゲムを吹き飛ばした紫のゲットリッダー、ロウルフは武器を召還し、ノゲムに向かって攻撃を開始した。
転がっていたノゲムは再び浮遊し、ロウルフに襲いかかる。
「おい! “ノゲムを逃がしたバカ”!! 早くやれ!」
「俺は潮田大翔ですっ!!」
俺は大声で反論しながら、スキルキー「ランダムビーム」を取り出し、チェンジャーに挿して回した。
『attack skill 発動 random beam』
すると紫の液体が指先から少し出始めるのが見えた。
「毒のビームだ~ これじゃない!」
俺はビームを、近くの建物のアスファルトでできた壁に向けて出す。やがてビームが途切れると、俺はもう一度キーを回した。
『attack skill 発動 random beam』
次は水がでた。これでもない。もう一度壁に出し続けた。
「おい!! まだか! お前はくじ運もないのか!」
そう言いながらもロウルフは華麗に攻撃を避けながら、ノゲムと戦う。
『attack skill 発動 random beam』
毒がでた。
『attack skill 発動 random beam』
冷却ビームがでた。
『attack skill 発動 random beam』
また水がでた。もう懲り懲りだ。
「早くしろ! もうそろそろお前の活動時間に限界が来るぞ!!」
そうだ。こんなにキーを使ってれば、エネルギー消費も早い。
俺はもう一度キーを回した。
『attack skill 発動 random beam』
その瞬間、手に微量ながらも痺れる痛みを感じた。
「大空さん! きました!!」
その合図が聞こえたのか、ロウルフは攻撃をよけ続けていたが一転、スキルキーをチェンジャーに挿して回した。
『attack skill 発動 discharge』
ロウルフは手をかざし、大量の水流をノゲムに当てた。ノゲムは水でびしょびしょになった。
『attack skill 発動 grass tie』
地面の雑草が伸びるとノゲムに絡み付き、ノゲムの体は地に縛りつけられる。
「今だっ!」
「はい!!」
俺は手をかざし、ノゲムに電撃の光線を当てた。
このギアノゲムの細胞は金属でできている。その上全身は水浸しだ。そんなノゲムには電気の攻撃が最有力だった。
ノゲムは怯む。細かく痙攣し、もはや草を引きちぎる元気もない。
「とどめだ」
ロウルフは最後のキーをチェンジャーに挿して回した。
『final! High wabe horn brake!』
ロウルフの足元から突如小さな波が見えた。その波は次第に大きくなり、ロウルフを高く高く上げた。
ロウルフはその波から地面に向かって跳ぶ。高い位置から身を任せ、そのまま武器である巨大な針を、ノゲムめがけて突き刺した。
「グァルァルァルァァァ!!」
ノゲムは太い声を上げながら激しく爆発した。
周囲には金属の細かい破片が飛び散る。
「は……お、終わったぁ……」
俺は安心するとともに、変身を解除して、地面に座りこんだ。もうこれ以上体は動きそうにないぐらいに緊張した。
「よく成功させたな……まあ、せいぜい残りの日数逃げ出さぬよう頑張るんだな……」
同じく変身解除した大空さんは俺の肩を優しく叩いてくれた。
おそらく、100%のやさしさでかけた言葉ではないだろう。それでも、大空さんの言葉は俺の心には何かグッとくるものを与えてくれた。
「おい潮田大翔! よくもまあ作戦を成功させたなぁ! だが、これはお前だけの手柄ではなぁい……この作戦は俺とお前とで考えた作戦だからな! これは俺の手柄でもあるッ!!」
いきなりあの“鬱陶しいやつ”がおれのもとにきた。
ほかのみんなと教官もずっと遠くで見てたらしく、多田に次いでわらわらと俺のもとへ来てくれた。
なんか少し恥ずかしくて、この場から逃げたい気持ちが出てくる。でも、今は作戦を成功させただけで他はどうでもいい。何も言う気力がない。
「はぁぁー良かったぁっ!」
予想外のトラブルを越え、ホッとしてはいるが、それでもまだ合宿は続く。
今日をいれてあと6日間。この辛い合宿を突破し、絶対にゲットリッダーになってみせる。




