取り返しのつかないミスってこういうことを言うんだな。 ー潮田大翔ー
俺たちは地下の避難所にいた。施設内の職員らや一般人もそこにいる。
「おい状況はどうなってる! まだ倒せないでいるのか! 援軍は来ないのか!」
教官が女性の職員に聞いた。職員は緊急事態に戸惑ってるのか、早口になりながらもそれに答える。
「それが、ギアノゲムの大群が増えているようで……倒すにはかなり時間がかかるかと……」
「そうか……」
教官は少し眉間に皺を寄せ、何か考えごとをしているのか、目を閉じはじめた。
やがてその目はシャキッと開き、教官は俺の顔をまっすぐに見た。
「よし! 潮田大翔!! お前が行け!」
え? いまなんて……
俺はただただ驚き、教官をただ見ることしかできない。
「ほら! お前のチェンジャーだ! これを使ってロウルフのサポートをしろ!」
教官は、合宿の間預けられていた俺のチェンジャーを前に掲げた。
俺は少し迷った。しかし、今ここでびびっていれば、これから先ゲットリッダーとしてとてもやっていけないような気がした。
「は、はい! 行ってきます!」
俺は戸惑いながらもチェンジャーを受け取り、現場に向かって走った。
ここまで来た道を引き返し、全速力で走る。
やがてロウルフとノゲムの姿が見える。
ロウルフは数十体いるギアノゲムと戦っていた。
ギアノゲムは宙を浮きながらロウルフに攻撃している。
「大空さん!! 俺も手伝います!!」
「なにぃ!?」
「get rid!!」
『change Unin Scallopsracco』
俺は気合いを入れて変身した。こないだよりも発音よく言えた。なんとなく上手くいくような気がする。
「よぉぉし! やってやるぞ!」
『weapon 転送 Hotablade』
俺は変身し、ホタブレードを手にした。まずは目の前にいた1体のノゲムに斬りつける。しかし……
カキィィィン……
「えぇ!? 斬れない!?」
斬擊も虚しく、ノゲムには傷一つつけられない。
「おい! 余計なことをするな見習い! 邪魔だ! 誰の指示で来た!」
何度もノゲムを斬りつけながらも、俺は質問に答えた。
「多幾教官に指示されました!!」
ロウルフさんは何も言わなかった。
うわ、怒ってるよ……そうだよな、俺が来たってことは、自分が信頼されてないって思うのも無理はないよな……
それでも今、なんとしても、少しでも、戦いに貢献しなくちゃ……
俺はスキルキー、ランダムビームを選んだ。広範囲で攻撃するならこれが的確だと思った。
『attack skill 発動 random beam』
「おい! 余計なことをするなと言ったはずだ!! 今すぐ攻撃を中止しろっ!」
「俺でも! ノゲムを倒すことはできます!」
俺は手をかざし、ビームを出した。ランダムビームは火、水、雷、氷、毒属性のうちランダムの属性のビームが射てる技だ。
ビシャァ……
「キ、キキィ……!」
結果は……水だった。水の攻撃で相手が怯むのか、少し不安だが、どうやら少し効いているようだ。
この攻撃が成功だったんだ!
そう思った瞬間、水流を受けて怯んだはずのノゲムはさらに早く動き始めた。
「え!? ど、どういうこと!?」
「貴様! 余計なことをするな!!」
いや、確かにダメージは与えたはずだ。しかしノゲムの動きは格段に早くなった。
俺は焦ってノゲムに斬りかかる。しかしそれは躱され、剣は風を切ってしまう。
戸惑っていたのも束の間、ノゲムたちは俺たちに体当たりをしてきた。
「ぐはぁぁ!」
俺に当たった3匹のノゲムはすぐに施設外へと逃げていった。
俺は全身に強い衝撃を受けるとともに、心にひどい自責の念を感じる。
「ハァッ!!」
「ギィィ!」 「キィア!」 「キィゥ……」
ロウルフさんの方は、迫りくるノゲムを次々とよけ、刺突攻撃で一匹一匹着実に倒していった。
やがて現場にはノゲムの死体だけが残されていった。
ロウルフは変身を解除した。俺も変身を解除する。
「最悪だ……俺のせいで、3匹のノゲムを……」
「おいお前! なにをしてくれてる! わざわざ『マディストリーム』であいつらの視覚を鈍くさせたというのに……! お前の緩い水流のおかげで! 綺麗に洗い流されたじゃねぇか!」
大空さんが俺の胸ぐらを掴み、怒鳴った。
「ノゲムを一度逃がすという行いがどういった悲劇を生むのか、習わないと分からないのか!!」
大空さんは俺を突き飛ばした。
最悪だ。俺はなんてことをしてしまったんだ。教官に頼られて、調子にのってしまった。完全に自惚れていた。
俺は下を向き、地面に座りこんでいた。
まもなくして十数人の足音が聞こえてきた。
「おーーーい潮田ー! もう倒したのかー?」
教官が俺に聞く。
「ふざけるな! お前の教え子はなんなんだ!! ノゲムを興奮させたり、逃がしたり! こんな奴らをゲットリッダーにさせる気か!!」
大空さんは教官にそう怒鳴り、バイクに乗って去ってしまった。
辺りはノゲムの死体とともに、重く暗い空気が流れた。
教官が俺に近寄り、話しかけてくれる。
「潮田、すまない、これは俺の責任だ。今日はもう休んでいい。明日から万全な状態で特訓するぞ。」
「……はい」
俺は小さい声で返事をした。
「教官、俺はどうすれば……」
多田が小さい声が聞こえてくる。
「お、お前は……ギアノゲムの生態についてレポートを提出しろ。それまで訓練はなしだ。いいな?」
「え……あ、は、はい……」




